
この記事の結論
- 素数ものさしは、京都大学生活協同組合(京大生協)で売られている、素数の所にしか目盛りがないものさしです。不便益システム研究所が2012年の京都大学サマーデザインスクールで担当したクラスのアイデアを商品にしたものです
- 6cmは「11の目盛りから5の目盛りまで」のように、2つの素数のひき算で測ります。使うたびに素数とひき算を考えるので、遊びながら数の感覚がきたえられます

京大の素数ものさしとは?(京大生協のグッズ)
素数ものさしは、目盛りが素数(2, 3, 5, 7, 11, 13, 17 …)の所にしかない竹のものさしです。京大生協の商品説明では「素数にしか目盛のないものさし」と紹介されています。
生まれたのは、京都大学の「サマーデザインスクール2012」です。不便益システム研究所がクラスの一つを担当し、そこで受講した人たちから出たアイデアが商品になりました。今も京大生協のオリジナルグッズとして扱われています(在庫や値段は京大生協のページで確かめてください)。
上の辺はセンチの目盛りで、2・3・5・7・11・13・17の7か所に数字があります。下の辺はミリの目盛りで、2mm・3mm・5mm … 179mmと、素数のミリの所にだけ目盛りがあります。こちらには数字が書かれていません。ふつうのものさしなら一瞬で引ける6cmの線も、素数ものさしでは「どの目盛りを使うか」を考えないと引けません。
素数そのものの意味は、数学用語辞典の「素数とは?」で、例題つきでくわしく説明しています。
2013年の記事:素数ものさしを手に入れるまで
ここからは、2013年4月30日に書いた元の記事です。
京都大学生協で買える「素数ものさし」が大人気らしい。(当時は人気がありすぎて、なかなか買えませんでした)
高校の数学教師をやっている先輩から、京大の「素数ものさし」を送ってほしいという依頼がきました。素数ものさしを買いに生協まで行ってみましたが、大人気のため売り切れ中。次回の入荷予定日を聞いて再び足を運びましたが、すでに売り切れ。何度か京大生協に足を運んで、なんとか手に入れることができました。
この「素数ものさし」は、不便益システム研究所と京都大学サマーデザインスクール2012の企画から生まれた「ものさし」で、目盛りは素数のみという、たいへん不便なものさしです。(長さは18cm)上側の目盛りは「センチ」を、下側の目盛りは「ミリ」を表します。
目盛りが素数、すなわち「2, 3, 5, 7, 11, 13, 17」。6cmの直線を引くにも一筋縄ではいかないシロモノです。
この「素数ものさし」は実に不便ですが、使い続けることによって数学的センスが向上することは間違いないでしょう。数学好きの心をくすぐる「ものさし」です。

うかるくん
目盛りが少ないほど、頭をたくさん使うんですね!ふつうのものさしより、ずっと考えることが多そう。
素数ものさしの使い方|6cmの線の引き方
素数ものさしで素数でない長さを測るコツは、2つの目盛りの「差」を使うことです。たとえば6cmなら、11cmの目盛りと5cmの目盛りの間が 11−5=6cm です。13−7 や 17−11 でも6cmになります。
cmの目盛りで測れる長さ
ものさしの左はし(0)も目盛りの一つと考えると、cmの目盛りは0・2・3・5・7・11・13・17の8か所です。この中から2つ選んでひき算すると、1〜17cmのうち16cm以外はすべて1回で測れます。16cmは「13cm+3cm」のように2回に分けて線をつなげるか、ミリの目盛り(163mm−3mm=160mm)を使えば引けます。
ふだん使いで役立つ測り方
| 測りたい長さ | 使う目盛り | ほかの方法 |
|---|---|---|
| 1cm | 3−2 | — |
| 4cm | 7−3 | 11−7、17−13 |
| 6cm | 11−5 | 13−7、17−11 |
| 8cm | 11−3 | 13−5 |
| 10cm | 13−3 | 17−7 |
| 12cm | 17−5 | — |
| 15cm | 17−2 | — |
このように、同じ長さにいくつもの測り方があるのが面白いところです。どの組み合わせがあるかを探すことは、そのまま「素数の表を頭の中で引く」練習になります。
素数ものさしの問題「24以下の自然数はすべて隠れている」の答え
素数ものさしには、次の写真の説明カードがついていました。「1=3−2」「2=2」「4=7−3」「6=11−5」……とならび、「24以下の自然数は全て『素数ものさし』のどこかに隠れている(不便益予想)」と書かれています。

2013年の元の記事では、これを「24以下の自然数をすべて見つけてみよう」と紹介し、「素数ものさしを使って24以下のすべての自然数を表せることを証明せよ、なんて問題が中学入試で出るかもしれません」と書きました。
答え:ミリの目盛りで考えると、1〜24はすべて測れる
計算で確かめると、ミリの目盛り(0と、2〜179の素数)なら、1mm〜24mmはすべて「素数−素数」か「素数そのもの」で表せます。cmの目盛りだけだと、ものさしの長さが17cmまでなので18〜24は作れず、16も作れません。説明カードの「24以下」は、ミリの目盛りで考えるとぴったり成り立ちます。
| 長さ | 表し方 | 長さ | 表し方 | 長さ | 表し方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 3−2 | 9 | 11−2 | 17 | 17 |
| 2 | 2 | 10 | 13−3 | 18 | 23−5 |
| 3 | 3 | 11 | 11 | 19 | 19 |
| 4 | 7−3 | 12 | 17−5 | 20 | 23−3 |
| 5 | 5 | 13 | 13 | 21 | 23−2 |
| 6 | 11−5 | 14 | 17−3 | 22 | 29−7 |
| 7 | 7 | 15 | 17−2 | 23 | 23 |
| 8 | 11−3 | 16 | 19−3 | 24 | 29−5 |
25はなぜ測れない?(奇数と偶数で考える)
では、25はどうでしょう。ここで使うのが偶数・奇数の考え方です。2以外の素数はすべて奇数で、「奇数−奇数」は必ず偶数になります。だから奇数の長さを作るには、片方の目盛りが0か2でなければなりません。
25mmなら、①0から測るには25が素数、②2から測るには27が素数である必要があります。でも 25=5×5、27=3×9 で、どちらも素数ではありません。だから25は素数ものさしのどこにも隠れていないのです。「24以下」という区切りには、ちゃんと理由がありました。
この「場合を分けて、全部ダメだと示す」考え方は、大学入試の整数問題でそのまま使います。偶数・奇数の基本は「偶数・奇数とは?」で確かめられます。整数の問題の練習には「2025年大学入試予想問題【整数問題】」もどうぞ。
サクラちゃん
偶数の長さなら、いつでも素数のひき算で作れるんですか?
合格先生
いい質問です。「どんな偶数も2つの素数の差で表せるか」は、まだ証明されていない未解決の予想なんです。小さい数で確かめると成り立つのに、すべての偶数で正しいかはだれにも分かっていません。素数ものさしは、そんな数学の深い問題の入口でもあるんですよ。
素数とは?1が素数でない理由と見つけ方
元の記事では「素数とは、1とその数自身以外に約数をもたない自然数の中で、1を除くもの」と書きました。言いかえると、約数がちょうど2個(1と自分)の自然数が素数です。1は約数が1個しかないので素数ではありません。1を素数に入れると、次の「素因数分解はただ1通り」というきまりがくずれてしまうからです。
エラトステネスのふるい
素数を見つける昔からの方法がエラトステネスのふるいです。1を消し、2を残して2の倍数を消す、3を残して3の倍数を消す……とくり返すと、素数だけが残ります。50までなら7の倍数まで消せば十分です(11×11=121は50より大きいため)。素数ものさしのミリの目盛り(2〜179mm)には、41個の素数がならんでいます。
素因数分解と約数
素数は「数の原子」のようなものです。1より大きい自然数は、素数のかけ算でただ1通りに表せます(素因数分解)。やり方(すだれ算)は数学用語辞典の「素因数分解とは?」、約数の個数の公式は公式辞典の「素因数分解と約数の個数」「約数の個数・総和の公式と倍数の見分け方」にまとめています。約数と倍数の言葉の意味は「約数と倍数とは?」、共通の素因数がない関係は「互いに素とは?」で確かめましょう。
2027は素数|入試で使われやすい「年の数」
入試では、その年の西暦を使った整数問題がよく話題になります。2027年は、西暦そのものが素数の年です。
2027が素数かどうかは、√2027 は約45.0で、43の次の素数47より小さいので、2・3・5・7・11・13 … 43 の14個の素数で割り切れないことを確かめれば分かります。実際にどれでも割り切れないので、2027は素数です。このように「√n までの素数で割ってみる」のが、素数かどうかを調べる基本です。年の数と入試の関係は「2024年入試問題予想・2024年入試で狙われそうな数字」や「2025年入試で出題されそうな問題」も読んでみてください。
素数の性質をさらに深めたい人は、公式辞典の「フェルマーの小定理」「オイラー関数とオイラーの定理」へ。大学入試の発展問題で、素数で割った余りを考えるときの強力な道具です。有名な「フェルマーの最終定理」の話も合わせてどうぞ。
京大 数学 素数の問題(出題された年度)
素数ものさしを生んだ京都大学(京大)の入試でも、素数はくり返し出題されています。合格大作戦の出題分析の分類で、「素数」を扱った問題が出た年度を並べると次のとおりです。
- 文系:2017年度(範囲内の素数の個数)、2018年度(式の値が素数になる条件)、2021年度(素数 p と3の倍数)、2026年度(素数 p をふくむ1次不定方程式)
- 理系:2006年度(n と n²+2 がともに素数になる条件)、2018年度(式の値が素数となる条件)、2019年度(f(n)・f(n+1) がともに素数になる条件)
どの問題も、「素数は約数が2個しかない」「2以外の素数は奇数」「3で割った余りで分ける」といった、素数ものさしの25の話と同じ考え方が土台です。問題の中身は「京大 文系数学の出題分析」「京大 理系数学の出題分析」で年度ごとに確かめられます。京大の入試で数学がどれだけ大事かは「京大受験は数学が重要!学部別の配点比率」(学部別の配点は「京大の学部別の配点」)、勉強の進め方は「京大 数学 勉強法」「京大数学2次試験対策&高2の数学勉強法」、本番での解き方は「京大受験数学の極意(理系)」にまとめています。

合格先生
京大の整数問題は「素数の性質+場合分け」が王道。素数ものさしで「25は測れない」と説明できたら、もう入試の考え方の入口に立っています!
不便益とは?不便だから数学のセンスが育つ
素数ものさしを作った不便益システム研究所は、「不便益」(不便だからこそ得られる益)を研究するグループです。代表の川上浩司さんたちは、便利なものをわざと不便にしてみることで、新しい楽しさや気づきを探してきました。昔の不便な生活に戻ろう、という考えではありません。
ふつうのものさしは速くて正確ですが、目盛りを読むだけなので頭はほとんど使いません。素数ものさしは不便なぶん、「どの2つの目盛りか」を毎回考えます。その小さな工夫の積み重ねが、素数・ひき算・偶数奇数の感覚を育てます。元の記事で「使い続けることで数学的センスが向上する」と書いたのは、このことです。
うかるくん
勉強も、楽な方法ばかり選んでいたらダメってことですか?
合格先生
全部を不便にする必要はありません。でも、答えを見る前に「自分で組み合わせを探す」時間は、数学の力がいちばん伸びる時間です。京大の問題も、すぐに解き方が見えないのがふつう。考えるのを楽しめる人が強いですよ。
遊びながら頭を使う京大の話は、ほかにもあります。「ルービックキューブで京大合格!?」、京大の学園祭の「ベンゼン環の形のパンケーキ」、数のきまりを見つける「地頭を鍛える算数の問題」「IQテスト(4+2=14)の答えと解き方」もどうぞ。素数は英語で prime number です(「数学用語を英語で言うと?」)。受験生へのちょっとしたプレゼントを探している人は「受験合格グッズまとめ」も参考にしてください。
まとめ:素数ものさしは「考える」ものさし
- 素数ものさしは、素数の所にしか目盛りがない京大生協のものさし。2012年の京都大学サマーデザインスクールで生まれた
- 上はcm(2〜17の素数に数字)、下はmm(2〜179の素数に数字なしの目盛り)
- 6cmは 11−5 のように、2つの目盛りの差で測る。cmの目盛りなら1〜17のうち16以外は1回で測れる
- ミリで考えると1〜24はすべて測れる。25は「25も27も素数でない」ので測れない
- 素数・偶数奇数・場合分けは、京大の整数問題の土台そのもの
数学の公式は「算数・数学公式辞典」、用語は「数学用語辞典」、分野ごとの一覧は「数学まとめ」から探せます。わからないことは「受験の質問・相談」へ。京大を目指す受験生どうしの情報交換は、受験掲示板「100点BBS」の京都大学の掲示板でどうぞ。
よくある質問
素数ものさしとは何ですか?
素数の所にしか目盛りがないものさしです。京大生協で扱われており、2012年の京都大学サマーデザインスクールで不便益システム研究所が担当したクラスのアイデアから生まれました。
素数ものさしで6cmはどうやって測りますか?
11cmの目盛りと5cmの目盛りの間を使います(11−5=6)。13−7、17−11でも6cmになります。
素数ものさしで測れない長さはありますか?
cmの目盛りだけで1回に測る場合、1〜17cmのうち16cmだけは測れません。ミリの目盛りでは、1〜24mmはすべて測れますが、25mmは測れません。
なぜ25は素数ものさしで測れないのですか?
2以外の素数は奇数で、奇数どうしの差は偶数です。奇数の25を作るには0か2から測るしかなく、25も27も素数ではないためです。
1はなぜ素数ではないのですか?
素数は約数がちょうど2個の自然数で、1は約数が1個だからです。1を素数にすると、素因数分解がただ1通りに決まらなくなります。
あわせて読みたい
- 素数とは?意味・見つけ方・1が素数でない理由(数学用語辞典)
- 素因数分解と約数の個数の解き方と公式(算数・数学公式辞典)
- 京大 理系数学の出題分析(1999〜2026年度)
- 京大 文系数学の出題分析(1999〜2026年度)
- 2025年大学入試予想問題【整数問題】
- ルービックキューブで京大合格!?
出典・参考
- 京大生協 オリジナルグッズオンラインストア「素数ものさし」商品ページ(「素数にしか目盛のないものさし」、2012京都大学サマーデザインスクールで不便益システム研究所が担当したクラスのアイデアを商品化)
- 同志社中学校「数学クイズ」教材ページ(素数ものさしのcm側・mm側の目盛りの説明)
- 日刊工業新聞 ニュースイッチ「不便益」に関する記事(不便益システム研究所・川上浩司さん)
- 写真:合格大作戦(2013年4月撮影)
- 測れる長さ・2027が素数であることは、合格大作戦で計算して確認
- 京大で素数を扱った年度:合格大作戦「京大 文系数学の出題分析」「京大 理系数学の出題分析」の分類
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦











