ピックは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|ピックの定理・格子点と面積・シュワルツ・ピックの補題

ピックは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|ピックの定理・格子点と面積・シュワルツ・ピックの補題

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ピックGeorg Pick

ひとことで言うと

格子点を数えるだけで多角形の面積が出るピックの定理を見つけたオーストリアの数学者。プラハでアインシュタインを迎える後押しもした。

名前ゲオルク・ピック(Georg Alexander Pick)。ゲオルグ・アレクサンダー・ピックとも書く
生没年1859年8月10日〜1942年7月26日(82歳)
国オーストリア(ウィーン生まれ、プラハのドイツ大学で活躍)
分野幾何・複素関数論・線形代数
主な業績ピックの定理(1899年)、シュワルツ・ピックの補題、ネヴァンリンナ・ピックの補間問題
名前がつくものピックの定理・シュワルツ・ピックの補題・ピック行列・ネヴァンリンナ・ピックの補間
よばれ方プラハのドイツ大学教授

このページのポイント

  • 格子点を数えるだけで面積が出るピックの定理 S=i+b2−1S=i+\dfrac{b}{2}-1 を1899年に発表。中学受験の面積問題で便利
  • プラハのドイツ大学の教授で、アインシュタインを同僚に迎える後押しをした
  • 複素関数論ではシュワルツ・ピックの補題を残した。ナチスの迫害の時代に、1942年に82歳で亡くなった

ピックは何をした人?(業績をひとことで)

ゲオルク・ピック(1859〜1942年)は、オーストリアの数学者です(日本語版の百科事典では「ゲオルグ・アレクサンダー・ピック」とも書かれます)。方眼紙の格子点(こうしてん)を数えるだけで多角形の面積が出せるピックの定理(1899年)で、世界中の算数・数学の問題集に名前が出てくる人です。また、複素関数論ではシュワルツ・ピックの補題、ピックの補間問題などを研究しました。

ピックの定理は、中学受験の算数でも「点を数えて面積を求める」問題の便利な道具として知られています。方眼や点の図の面積問題で、辺の上の点を bb 個、内側の点を ii 個とすると、面積は i+b2−1i+\dfrac{b}{2}-1 で求められます(くわしくはピックの定理の公式と証明)。

うかるくん

うかるくん

面積って、底辺×高さ÷2みたいに計算するものだと思ってました。

合格先生

合格先生

ふつうはそうだね。でも、ななめの辺ばかりの多角形では、底辺も高さも出しにくい。そんなとき「点を数える」だけで面積が出るのがピックの定理なんだ。数えるだけだから、まちがえにくいよ。

ゲオルク・ピックの若いころの肖像写真
22歳ごろのゲオルク・ピック(1881年ごろ。ワイエルシュトラスのためのアルバムの写真)画像:作者不明(1881年ごろ)/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

ピックの生涯と年表

ウィーンで生まれ、数学の道へ

ピックは1859年8月10日、オーストリアの首都ウィーンで生まれました。ウィーン大学で学び、1880年4月16日、20歳の若さで博士号を受けています。指導したのは、数学者のレオ・ケーニヒスベルガーでした。

プラハのドイツ大学の教授に

博士号を得た1880年、ピックはプラハのドイツ大学で、物理学者エルンスト・マッハの助手になりました(マッハは、速さの単位「マッハ」で知られる人です)。1881年に大学で教える資格を得て、1888年に準教授、1892年には正教授になりました。1900〜01年には哲学部長もつとめています。

プラハで、ピックは大学の中心的な数学者になりました。研究の分野は幅広く、複素関数論・微分方程式・線形代数・幾何などの論文を書いています。1899年には、のちに有名になるピックの定理を『数論への幾何学的なこと(Geometrisches zur Zahlenlehre)』という論文の中で発表しました。

アインシュタインを呼びよせた人

1910年、プラハのドイツ大学は、若い物理学者アルベルト・アインシュタインを教授として迎える相談をしました。このとき、ピックは委員会の一員で、アインシュタインの採用をいちばん強く後押しした人だったと記録されています。アインシュタインは1911年から1912年にかけてプラハで理論物理学の教授をつとめ、ピックとは音楽という共通の趣味もあって、親しい友人になりました。ピックは、弦楽四重奏を演奏するのが好きだったと伝えられています。ピックがアインシュタインに、リッチとレヴィ=チヴィタの「曲がった空間の計算法」(テンソル解析)を紹介したという話も伝わっていますが、資料では確かめきれていません。

退職、そして戦争の時代

1927年に大学を退職した(名誉教授)ピックは、故郷のウィーンへもどりました。しかし1938年、ナチス・ドイツがオーストリアを併合(へいごう)すると、ピックはプラハにもどります。ところが翌1939年にはナチス・ドイツがプラハをも占領し、ユダヤ人への迫害がはげしくなりました。ピックはチェコの科学芸術アカデミーからも追い出されてしまいます。

1942年7月13日、ピックはテレージエンシュタット(現在のチェコにあった、ナチスの強制収容所のひとつ)へ送られ、それから約2週間後の7月26日、82歳で亡くなりました。ピックだけでなく、同じ時代にたくさんの学者や子どもたちが、戦争の中で命をうばわれました。数学者がどんな時代を生きたのか、ピックの生涯は静かに教えてくれます。

忘れられていたピックの定理

ピックの定理は、発表からしばらくの間、あまり注目されませんでした。この定理が有名になったのは、ポーランドの数学者シュタインハウスが1969年の本『数学スナップショット』で紹介してからです。ピックの死から約27年、定理の発表からは70年がたっていました。その後、ピックの定理は日本の算数・数学の問題でもよく使われるようになりました。

年できごと
1859年8月10日、オーストリアのウィーンで生まれる
1880年4月16日、ウィーン大学で博士号。プラハでマッハの助手になる
1881年大学で教える資格を得る(このころの写真がワイエルシュトラスのアルバムに残る)
1888年プラハのドイツ大学の準教授になる
1892年プラハのドイツ大学の正教授になる
1899年ピックの定理を発表
1900〜01年プラハのドイツ大学の哲学部長をつとめる
1910〜11年アインシュタインをプラハに迎える委員会で、採用に力をつくす
1915〜16年ごろシュワルツ・ピックの補題、ピックの補間問題を発表(複素関数論)
1927年大学を退職し、ウィーンにもどる
1938年ナチス・ドイツがオーストリアを併合。プラハにもどる
1942年7月13日、テレージエンシュタットに送られ、26日に亡くなる(82歳)
ピックの歩み1859ウィーンで生まれる1880ウィーン大学で博士号1888〜92プラハのドイツ大学の教授に1899ピックの定理を発表1911〜12アインシュタインが同僚に1927退職してウィーンへ19427月26日、82歳で亡くなる
ピックの歩み。ウィーン生まれ、プラハで教授、1899年にピックの定理を発表

ピックの主な業績をやさしく解説

業績1 ピックの定理(格子点で面積を求める)

格子点とは、方眼紙の線と線が交わる点(たても横も整数の座標の点)のことです。格子点を頂点にして辺が交わらないようにかいた多角形を格子多角形といいます。この多角形について、辺の上にある格子点(頂点もふくむ)の数を bb、内部にある格子点の数を ii とすると、面積 SS は次の式で求められます。

S=i+b2−1S=i+\frac{b}{2}-1

これがピックの定理です。たとえば図の五角形では、辺の上の点が12個、内部の点が7個なので、面積は 7+12÷2−1=127+12\div2-1=12 です。方眼の五角形は、ふつうに計算するとやっかいですが、点を数えるだけなら5分もかかりません。

ピックの定理:点を数えて面積を出す赤い点(辺の上)b=12青い点(中)i=7面積7+12÷2−1=12
格子多角形。辺の上の点(赤)12個、内部の点(青)7個。ピックの定理で面積は 7+12÷2−1=12

辺の上の点の数え方にもコツがあります。2つの格子点 (x1,y1)(x_1,y_1) と (x2,y2)(x_2,y_2) を結ぶ線分の上にある格子点の数(片方の端をのぞく)は、xx の差と yy の差の最大公約数の求め方に等しくなります。たとえば (0,0) と (4,2) を結ぶ線分では、差が 4 と 2 で最大公約数は 2。実際、途中の (2,1) と終わりの (4,2) の2点が見つかります。横や縦の線なら、差そのものが点の数です。ななめの辺では、数えまちがいやすいので、この方法で確かめましょう。

まず小さな図形で、式が合っていることを確かめましょう。1辺1の正方形は、内部の点が0個、辺の上の点が4個なので、0+4÷2−1=10+4\div2-1=1 で正しい面積です。直角三角形(底辺1・高さ1)は 0+3÷2−1=120+3\div2-1=\dfrac{1}{2} です。たて2・よこ3の長方形は、内部の点が2個、辺の上の点が10個なので、2+10÷2−1=62+10\div2-1=6 で、これも合っています。

まず小さな例で確かめる①②③① 正方形:i=0, b=4 → 0+2−1=1② 三角形:i=0, b=3 → 0+1.5−1=0.5③ 長方形:i=2, b=10 → 2+5−1=6(赤=辺の上、青=中の点)
基本の3つの例。正方形は面積1、直角三角形は1/2、長方形は6。どれもピックの定理で合う

なぜ、いつもこの式で面積が出るのでしょうか。大切な発想は次の3つです。

  • 足し算ができる:2つの格子多角形を辺でぴったりつなぐと、面積も、式の値も、足し算になる。
  • いちばん小さな三角形は面積1/2:辺の上と内部に、頂点以外の格子点がまったくない三角形は、面積が必ず 12\dfrac{1}{2} になる。
  • どんな格子多角形も、そのような小さな三角形に切れる:だから、小さな三角形の枚数を数えれば、面積が出る。
ピックの定理のなぜ(三角形に切る)中の点から辺の点へ線を引く → 小三角形 8枚どの小三角形も面積 1/2(点がほかに無いから)枚数 2×1+8−2=8 面積 8×1/2=4
内部の点から辺の上の点へ線を引くと、面積1/2の小さな三角形8枚に分かれる。枚数は 2i+b−2 で、面積はその半分

実は、小さな三角形の枚数は 2i+b−22i+b-2 枚と決まっていて、それぞれの面積が 12\dfrac{1}{2} なので、面積は 2i+b−22=i+b2−1\dfrac{2i+b-2}{2}=i+\dfrac{b}{2}-1 になります。この「枚数」を数える部分に、オイラーの多面体定理(頂点−辺+面)と同じ考え方が使われています。くわしい証明はピックの定理の証明と例題にまとめてあります。

業績2 ピックの定理は3次元でも成り立つ?

ピックの定理は平面の定理です。立体で同じことをしようとしても、そう簡単ではありません。1957年にイギリスの数学者リーヴ(Reeve)が、頂点が格子点で、辺・面・内部にほかの格子点がない四面体(リーヴの四面体)でも、体積がいくらでも大きくなることを示しました。つまり「点の数だけで体積が決まる」ことはないのです。

そこで1960年代に、フランスの数学者エルハルトは、図形を tt 倍に拡大したときの格子点の数が tt の多項式になることを発見しました(エルハルト多項式)。ピックの定理は、この大きな理論の「2次元の入り口」にあたります。ピックの考えは、100年以上たったいまも、離散幾何学・組合せ論・整数論の研究に生きています。

業績3 複素関数論:シュワルツ・ピックの補題

ピックのもう一つの大きな仕事は、複素関数論です。複素数平面の単位円板(原点を中心とする半径1の円の内側)から、同じ単位円板の中への、なめらかな関数 ff を考えます。ピックは1915年ごろ、「このような関数は、円板の中の2点の間の(双曲的な)距離を、決して広げない」ことを示しました。これは、コーシーやワイエルシュトラスの時代から続く関数論の流れをうけた結果で、シュワルツ・ピックの補題とよばれます。

シュワルツ・ピックの補題f単位円板f でうつした先2点の間の距離は、うつすと縮む(または同じ)
単位円板から単位円板への関数 f。うつすと2点の間の距離は縮む(または同じ)。これがシュワルツ・ピックの補題

またピックは、円板の上のいくつかの点に、決められた値をとる関数があるかを調べる補間問題も研究しました。のちにフィンランドのネヴァンリンナが同じ問題を解いたため、ネヴァンリンナ・ピックの補間問題とよばれています。ピックが使った行列(ピック行列)は、制御工学や信号処理の理論にまで使われています。

ピックは、プラハで学生の指導にも力を入れました。1917年に博士号を取ったローナー(レヴナー)は、のちにアメリカで活躍した数学者です。

ピックの名前がつく公式・定理・用語

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

ピックの定理で大切なのは、「辺の上の点」は半分、「中の点」はそのまま数えること。最後に「−1」を忘れないでね。式の形を、紙に書いて覚えておこう。

ピックの逸話と名言

70年たって有名になった定理

ピックの定理は、1899年に論文の中で発表されたあと、長いあいだほとんど注目されませんでした。1969年にポーランドのシュタインハウスが本で紹介してから、世界の数学教育にも広まりました。ピックが亡くなってから、すでに約27年たっていました。数学の発見には、発表したときにはまだ時代が追いついていないものがある、という例です。

アインシュタインの友人

ピックとアインシュタインは、プラハで音楽を通じても親しかったと記録されています。アインシュタインはバイオリン、ピックは四重奏の仲間として楽しんだと伝えられます。アインシュタインがのちに、プラハでの日々を思い出して友人の名を挙げた中にピックがいた、という話もありますが、くわしい言葉は確かめられていません。

ピックの言葉について

ピックについて、よく知られた名言は伝わっていません。そのかわり、「ピックの定理」が教えてくれる「数えることで、面積が分かる」という見方が、受験生へのいちばんの贈り物だといえます(これはこのページのまとめで、ピック本人の言葉ではありません)。

サクラちゃん

サクラちゃん

戦争の時代に亡くなったなんて、悲しいです……。

合格先生

合格先生

うん。数学者がどんな時代を生きていたかを知ることも大切だね。ピックのような学者の名前が、いまも定理として残っている。そして今、世界中の子どもたちが、ピックの名前がついた定理を使って面積を求めているんだ。

受験・勉強とピックのつながり

中学受験:点を数えて面積を求める

中学受験の算数では、方眼や「点が等間隔にならんだ図(点描)」の中の多角形の面積を求める問題がよく出ます。通常は、全体の長方形から余分な三角形を引く「囲んで引く」方法で解きます。ピックの定理を使うと、その手間が一気に減ります。

  • 手順1:多角形の辺の上の点(頂点をふくむ)を数えて bb とする。
  • 手順2:多角形の内側の点を数えて ii とする。
  • 手順3:面積 =i+b÷2−1=i+b\div2-1 を計算する。

点の間隔が1cmなら、そのまま平方センチメートルの面積になります。点の間隔が2cmのときは、面積を4倍にします。ただし、中学入試の解答では、ピックの定理をそのまま書くより、「囲んで引く」や「三角形に分ける」の手順を書いておくほうが、先生に伝わりやすい場合があります。定理は検算に使うと安心です。三角形・平行四辺形の面積の公式もあわせて確認しましょう。

例題 点が1cmおきにならんだ図で、3点 (0,0)、(4,1)、(1,3) を結んでできる三角形の面積を求めなさい。
辺の上の点は、(0,0)-(4,1) が gcd⁡(4,1)=1\gcd(4,1)=1、(4,1)-(1,3) が gcd⁡(3,2)=1\gcd(3,2)=1、(1,3)-(0,0) が gcd⁡(1,3)=1\gcd(1,3)=1 なので、頂点の3個だけで b=3b=3。内側の点は (1,1)、(2,1)、(3,1)、(1,2)、(2,2) の5個で i=5i=5。面積は 5+3÷2−1=5.55+3\div2-1=5.5(平方センチメートル)です。確かめると、囲む長方形 4×3=124\times3=12 から、まわりの3つの直角三角形(面積は 2、3、1.5)を引いて 12−6.5=5.512-6.5=5.5 となり、一致します。

高校受験:図形と整数の融合問題

高校受験でも、座標平面の三角形の面積と、格子点の個数を組みあわせた問題が出ます。たとえば、直線と軸で囲まれた三角形の内側にある格子点の数を、面積と辺の上の点の数から逆算する問題です。座標平面での三角形の面積の公式と合わせて使います。

大学受験:格子点の個数

大学入試では、「領域の内部にある格子点の個数を求めよ」という問題が、数列の意味と和の計算を使う形でよく出ます。この問題ではピックの定理そのものよりも、「x の値ごとに y の個数を数えて足す」方法が中心です。それでも、図形の面積と点の数の関係(領域の面積 ≒ 格子点の数)を知っておくと、見通しがよくなります。京都大学・東京大学などの整数と図形の融合問題は、京大理系数学の出題分析(整数問題の出方)も参考になります。

ピックの定理で失敗しやすいところ

  • 頂点も辺の上の点に入れる:頂点は必ず bb に数えます。数え忘れが最も多いまちがいです。
  • 最後の −1 を忘れない:i+b2i+\dfrac{b}{2} で止めてしまう人が多くいます。
  • 穴のある図形には使えない:内側に穴が hh 個あると、式は i+b2+h−1i+\dfrac{b}{2}+h-1 に変わります(bb には穴のまわりの点もふくめます)。
  • 辺が交わる図形には使えない:星形のように辺が交差する図形は、いくつかに分けて使います。
  • 頂点が格子点でない図形には使えない:点描の図でも、頂点が点からずれていれば別の方法で。

検算のしかたとしては、同じ図形を「囲んで引く」方法でも面積を求めて、答えが一致するかを見るのがおすすめです。2つの方法で同じ答えになれば、ほぼまちがいありません。

勉強法として:「数える」と「公式」を行き来する

ピックの定理は、「面積を計算する」という作業を「点を数える」という作業に置きかえました。算数・数学の勉強では、こうした見方の切りかえが大きな武器になります。ふつうの方法で解いたあと、別の方法でも確かめる習慣をつけると、検算と応用力が同時に身につきます。方眼の問題は、点の数え方さえ落ち着いてできれば、ほぼ確実に点がとれる問題です。数えるときは、数えた点にえんぴつで小さく印をつけると、数えもれや二重の数えまちがいが防げます。数学の勉強法は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでください。

ピックがその後の数学にあたえた影響

  • 離散幾何学・組合せ論:格子点を数える研究は、エルハルト多項式、格子多面体の理論に広がりました。
  • 整数論との橋わたし:「図形の中の整数点を数える」考え方は、ガウスの業績と生涯の円の格子点問題、ミンコフスキーの数の幾何学へつながり、整数論と幾何学を結びつけます。
  • 複素関数論:シュワルツ・ピックの補題は、リーマン面や双曲幾何、複素力学系の基本的な道具です。
  • 応用数学・工学:ネヴァンリンナ・ピックの補間は、フィルター設計や制御理論(ロバスト制御)で使われます。
  • パズル・ゲーム:ジオボード(釘を格子状に打った板に輪ゴムをかけて図形を作る教具)は、ピックの定理を体験するのにぴったりで、世界の算数の授業で使われています。
  • 数学教育:ピックの定理は、小学生から大学生まで同じ式で学べる、ふしぎで美しい例として、世界中の数学教室で紹介されています。

ピックに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 方眼の格子点を結んだ多角形で、辺の上の点が8個、内部の点が3個です。面積を求めなさい。
    答えと解説を見るピックの定理より 3+8÷2−1=63+8\div2-1=\mathbf{6}。
  2. たて2・よこ3の長方形(頂点は格子点)について、ピックの定理で面積を求めなさい。
    答えと解説を見る辺の上の点は、たて2+よこ3の2倍で b=2(2+3)=10b=2(2+3)=10、内部は (2−1)(3−1)=2(2-1)(3-1)=2。2+10÷2−1=62+10\div2-1=\mathbf{6}。(たて×よこ=6と一致)

ふつう

  1. 辺の上の点が8個の格子多角形で、内部の点が5個です。面積を求めなさい。
    答えと解説を見る5+8÷2−1=85+8\div2-1=\mathbf{8}。
  2. 面積が10.5で、辺の上の点が7個の格子多角形があります。内部の点は何個ですか。
    答えと解説を見るS=i+b2−1S=i+\dfrac{b}{2}-1 より i=S−b2+1=10.5−3.5+1=8i=S-\dfrac{b}{2}+1=10.5-3.5+1=\mathbf{8} 個。

むずかしい

  1. 3点 (0,0)、(6,0)、(2,4) を結んでできる三角形の内部にある格子点は何個ですか。
    答えと解説を見る面積は 6×4÷2=126\times4\div2=12。辺の上の点は、(0,0)-(6,0) が6、(6,0)-(2,4) が gcd⁡(4,4)=4\gcd(4,4)=4、(2,4)-(0,0) が gcd⁡(2,4)=2\gcd(2,4)=2 なので b=12b=12。i=S−b2+1=12−6+1=7i=S-\dfrac{b}{2}+1=12-6+1=\mathbf{7} 個。
  2. 1辺が10の正方形(頂点は格子点で辺は軸に平行)の内部にある格子点の数を、ピックの定理で求めなさい。
    答えと解説を見る面積 S=100S=100、辺の上の点は b=4×10=40b=4\times10=40。i=100−20+1=81i=100-20+1=\mathbf{81} 個。(9×9=819\times9=81 と一致します)

ピックと関係する数学者

ピックの定理は、方眼紙とえんぴつがあれば、だれでも自分で確かめられます。いろいろな形の多角形をかいて、点を数え、面積を「囲んで引く」方法と見くらべてみましょう。「あれ、いつも合う」と気づいたとき、数学者が百年以上前に感じたおどろきを、同じように味わえます。

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19世紀の数学者

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読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ピックは何をした人ですか?

ピックは、オーストリアの数学者で、プラハのドイツ大学の教授でした。方眼の格子点を数えて多角形の面積を求めるピックの定理(1899年)で知られます。複素関数論ではシュワルツ・ピックの補題やネヴァンリンナ・ピックの補間問題も研究しました。

ピックの定理とは何ですか?

頂点が格子点(たても横も整数の点)の多角形について、辺の上の格子点の数を b、内部の格子点の数を i とすると、面積が i+b÷2−1 になるという定理です。点を数えるだけで面積が出せます。

ピックの定理はどう使いますか?

まず辺の上の点を数えて b とし、次に内側の点を数えて i とします。そして面積 = i+b÷2−1 を計算します。点の間隔が1cmなら、そのまま平方センチメートルの面積になります。

ピックの定理は中学受験に出ますか?

方眼や点描の図形の面積問題で、ピックの定理が便利に使えます。ただし、学校の入試では「囲んで引く」や「三角形に分ける」解き方が基本なので、ピックの定理は検算や時間短縮に使うとよいでしょう。

ピックの定理はなぜ成り立つのですか?

内側や辺の上に頂点以外の格子点を持たない三角形は、面積が必ず 1/2 になります。どんな格子多角形も、そのような小さな三角形に分けられ、その枚数が 2i+b−2 枚と決まるため、面積は i+b/2−1 になります。

ピックはアインシュタインと関係がありますか?

1910年、プラハのドイツ大学がアインシュタインを教授に迎える相談をしたとき、ピックは委員の一人で、採用を強く後押ししたと記録されています。アインシュタインは1911年から1912年にかけてプラハで教え、ピックと親しい友人になりました。

ピックはどこで亡くなりましたか?

1942年、ナチス・ドイツによる迫害の中で、現在のチェコにあったテレージエンシュタットの収容所に送られ、7月26日に82歳で亡くなりました。ピックの死後、ピックの定理が広く知られるようになりました。

ピックの定理が有名になったのはいつですか?

ピックの定理は1899年に発表されましたが、長いあいだ注目されませんでした。1969年にポーランドのシュタインハウスが本で紹介したことで、世界中に知られるようになりました。

シュワルツ・ピックの補題とは何ですか?

単位円板から単位円板への正則関数(なめらかな複素関数)は、円板の中の2点の双曲的な距離を、広げることがないという定理です。複素関数論や双曲幾何で基本的な道具になっています。

ピックの定理は立体でも使えますか?

立体ではそのままの形では成り立ちません。1957年のリーヴの四面体の例が示すとおり、格子点の数だけでは体積が決まらないからです。立体の場合は、1960年代にエルハルトが発見したエルハルト多項式という理論で扱います。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Georg Alexander Pick」(セント・アンドルーズ大学)
  • G. Pick, “Geometrisches zur Zahlenlehre”(1899年)
  • H. Steinhaus, “Mathematical Snapshots”(1969年版)
  • 肖像:Das Fotoalbum für Weierstraß(1881年ごろ)より、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦