世界史用語集 › 第3章 古代ローマ
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護民官ごみんかん
重要度 ★★★★★ (★は合格大作戦の目安)
ひとことで言うと
護民官とは、共和政ローマで平民を守るために置かれた役人です。前494年ごろ(伝承)の聖山事件をきっかけにでき、貴族の役人の決定を止める拒否権と、身体の不可侵を持ち、平民会を開いて決議を行いました。
| 読み方 | ごみんかん |
|---|---|
| 英語 | tribune of the plebs(ラテン語 tribunus plebis) |
| 時代 | 前494年ごろ〜(共和政ローマ、のち帝政にも) |
| 地域 | ローマ |
| 章 | 第3章 古代ローマ |
| 日本語 | 護民官 |
| はじまり | 前494年ごろ・聖山事件(伝承) |
| 特別な力 | 拒否権・身体の不可侵 |
| いっしょに覚える | 平民会・身分闘争・ホルテンシウス法・グラックス兄弟 |
このページのポイント
- 護民官=平民を守る役人。前494年ごろ聖山事件をきっかけにでき、平民だけがなれて、平民会で選ばれた。
- 力は拒否権と身体の不可侵。軍を率いるコンスルとは役目がちがう。
- ホルテンシウス法で平民会の決議が国法になり、グラックス兄弟は護民官として改革を進めた。
護民官をやさしく言うと
護民官は、共和政ローマで平民を守るために置かれた役人です。前494年(伝承)に始まり、貴族の役人が平民に不利なことをしようとすると、「待った」をかけて止める力(拒否権)を持ちました。護民官の体にさわってはいけない、という特別な保護(身体の不可侵)もありました。
- 護民官:平民の中から、平民が選ぶ。はじめは少人数で、のちに10人になった。任期は1年。
- 拒否権:役人の命令や、元老院の決定にも反対して止められる。
- 平民会:平民だけの集まり。護民官が開いて、議長を務めた。
護民官は、パトリキとプレブスの身分闘争で、平民が最初に勝ち取った大きな成果です。貴族の力が強かった時代に、平民の味方になる役人がいるのは、大きな意味がありました。
エンリケくん
貴族の役人にも「待った」と言えるなんて、強いですね!
ロダン先生
そうなんだ。ただし、止められるのは「平民に不利なこと」を中心とした場面だったと説明されるよ。護民官は、攻めるより守る役人だったんだね。
エンリケくん
平民のボディーガードみたいですね!
護民官のくわしい流れ(できた理由・しくみ・変化)
① 原因と聖山事件(前494年)
共和政の初め、貴族が政治を独占し、貧しい平民は借金で奴隷になる人もいました。前494年ごろ、戦争が続く中で、平民たちは「このままでは戦えない」と、共和政ローマの町を出て、聖山という丘にたてこもった、と伝えられます(聖山事件)。ローマの戦力の中心である平民がいなくなると、国は守れません。貴族は困って、話し合いで平民を守る役人をつくることを認めた、という話です。
ただし、聖山事件は、くわしく書かれた記録が後の時代のものです。護民官がいつ、どのようにして生まれたかは、歴史家の間でも説がわかれています。教科書では、「前494年ごろ、聖山事件をきっかけに護民官ができた」と整理されます。
② 護民官のしくみ
護民官は、次のような特色を持っていました。
- 平民だけがなれる:貴族は護民官になれませんでした。
- 平民会で選ぶ:護民官は、平民だけの集まり(平民会)で選ばれました。
- 人数と任期:はじめは少人数、のちに10人ほどに増えました。任期は1年です。
- 拒否権:役人の決定や元老院の決議に反対して、止められました。
- 身体の不可侵:護民官を傷つけることは、神に対する罪とされました。
護民官は、軍を指揮する権限(インペリウム)は持っていませんでした。その点で、コンスルと元老院とは、仕事の中身がまったくちがう役職です。
③ 平民会の力が増える
平民会の決議は、はじめは平民にしか効きませんでした。しかし、ホルテンシウス法(前287年)で、平民会の決議が貴族もふくめた国全体の法になります。すると、護民官は、法案を出して国の法をつくれる立場になりました。護民官は、元老院に対抗する政治家の力を持つようになったのです。
④ 変化:改革者の役職になり、帝政へ
前2世紀になると、貧富の差が広がった問題を解決するために、護民官になって改革を進める政治家が出ました。前133年のティベリウス=グラックスと、前123年のガイウス=グラックスの兄弟です(グラックス兄弟の土地改革)。ティベリウスは、土地をもたない市民に土地を分けようとして、元老院の保守的な議員たちと対立しました。2人とも、改革の途中で命を落としました。
のちに、アウグストゥスは、護民官の権限(護民官職権)を自分の力の一部に取り入れた、とされます。護民官の身体の不可侵や拒否権が、そのまま使えたからです。平民の守り役の力は、帝政の中にも受けつがれました。

ロダン先生
護民官は「平民を守る」「拒否権」「平民会」の3点セット。そして、グラックス兄弟が護民官だったことも、セットで覚えておこう。
護民官を整理する
図1の「力」、図2の「できた理由」、図3の「時代の変化」、図4の「コンスルとのちがい」が、護民官を考える4つの見方です。
整理:護民官のポイント
できた:前494年・聖山事件(伝承)。だれが:平民が平民会で選ぶ。平民だけがなれる。力:拒否権・身体の不可侵・平民会の議長。変化:ホルテンシウス法(前287)で平民会の決議が国法に → グラックス兄弟が護民官として改革 → アウグストゥスが護民官職権を取り入れる。
ローマの役職は、多くが「1年交代」でした。年のよび方については、ローマ数字の使い方と一覧のページも見てください。
護民官と関係する人物・用語
| 用語 | 護民官との関係 |
|---|---|
| パトリキとプレブス | 身分闘争。護民官は平民が得た最初の成果 |
| 十二表法 | 護民官ができたあとの成果。慣習法を成文化 |
| ホルテンシウス法 | 平民会の決議が国法に。護民官の力が増える |
| コンスルと元老院 | 護民官が拒否権で止められる相手 |
| グラックス兄弟 | 護民官として土地改革を試みた |
| アウグストゥス | 護民官の権限を取り入れた |
| 共和政ローマ | 護民官が置かれた時代 |
サクラちゃん
護民官になれなかったのは、貴族だけですか?
ロダン先生
そうなんだ。貴族(パトリキ)は護民官になれなかった。だから、もし貴族の人が護民官になりたいときは、平民の家に養子に入る方法をとった人もいたと伝わるよ。
護民官でまちがえやすい点
まちがえやすい点
- 護民官とコンスルを同じにする:護民官は「平民を守る」。コンスルは「軍を率い、国を運営する」。
- 護民官は貴族がなると思う:護民官になれたのは、平民だけ。
- 護民官に軍の指揮権があったと思う:持っていない。力の中心は拒否権と不可侵。
- 聖山事件を、確かな史実と思う:前494年の聖山事件は、後の時代の記録で伝わる話(伝承)。
- 護民官と平民会を同じにする:護民官は役人、平民会は平民だけの集まり。護民官が平民会を開く。
- グラックス兄弟を、執政官と思う:2人は護民官として改革を進めた。
入試ではこう出る
- 共通テスト:護民官の役割(平民を守る・拒否権)、設置のきっかけ(聖山事件)、身分闘争の法の順番が、文の正誤や並べかえで問われます。
- 国公立の2次・論述:「身分闘争の結果、平民の地位がどう変わったか」で、護民官・十二表法・ホルテンシウス法をつなげて説明させる問題が考えられます。グラックス兄弟が護民官だったことも、内乱の1世紀の論述で使います。
- 私大:護民官・拒否権・平民会などの語句の穴うめ。護民官としてのグラックス兄弟を答えさせる問題。
勉強の進め方は世界史の勉強法【基礎編】(教科書・一問一答・用語集の使い方)を見てください。
ロダン先生の「これ知ってる?」
これ知ってる? 「護民官」は日本語の訳語
ラテン語では tribunus plebis(トリブヌス・プレビス)、「平民の(部族の)代表」という意味なんだ。英語の tribune(護民官、演壇)や tribunal(裁判所)は、ここから来ているよ。「護民官」と訳したのは、守る役目を表した日本語だね。
これ知ってる? 「拒否権」は今の国際連合にも
「待った」と言って止める拒否権は、今の国際連合の安全保障理事会の常任理事国も持っているね。ローマの護民官の拒否権は、ラテン語で「ウェト(veto)」、つまり「私は禁止する」と言ったんだ。英語の veto(拒否権)は、これが元だよ。
これ知ってる? 護民官は平民の味方、でも…
護民官が、必ず平民の味方とは限らなかったんだ。護民官を経験した人は、のちに元老院議員になれたので、貴族に取りこまれる護民官もいたとされるよ。だから、ティベリウスのように、本気で改革しようとした護民官は、大きな反対にあったんだね。

ロダン先生
「待った!」と言えるのが護民官。ラテン語の veto(禁止する)は、今も英語の拒否権として生きているよ。
練習問題
やさしい
- 共和政ローマで、平民を守るために置かれ、役人の決定に反対できた役人を何というか。
答えと解説を見る
答え:護民官
前494年ごろ、聖山事件をきっかけにできたとされます。 - 平民が町を出て丘にたてこもったと伝えられる事件を何というか。
答えと解説を見る
答え:聖山事件
これをきっかけに護民官が置かれたと伝えられます。
ふつう
- 護民官が持っていた2つの大きな特別な力を答えよ。
答えと解説を見る
答え:拒否権、身体の不可侵
役人の決定に反対して止められること、護民官の体にふれてはいけないことです。 - 護民官としてローマで土地改革を試みた兄弟はだれか。
答えと解説を見る
答え:グラックス兄弟(ティベリウスとガイウス)
むずかしい
- 正しいか誤りか答えよ。「護民官は貴族がなれる役職で、軍の指揮権を持っていた。」
答えと解説を見る
答え:誤り
護民官になれたのは平民だけで、軍を指揮する権限(インペリウム)は持っていませんでした。 - 護民官がコンスルとちがう点を、役目と特別な力にふれて60字ほどで説明せよ。
答えと解説を見る
答えの例:コンスルは軍を率いて国を運営するが、護民官は平民を守るための役人で、役人の決定に反対する拒否権や、身体の不可侵という特別な力を持った。(68字)
「平民を守る役」と「拒否権」が入れば合格です。
「古代ローマ」の章の用語
- 共和政ローマ(世界史) ★★★★★高校受験
- パトリキとプレブス(世界史) ★★★★★
- コンスルと元老院(世界史) ★★★★★
- 十二表法(世界史) ★★★★★
- リキニウス・セクスティウス法(世界史) ★★★★★
- ホルテンシウス法(世界史) ★★★★★
- ポエニ戦争(世界史) ★★★★★
- ハンニバル(世界史) ★★★★★
- ラティフンディア(世界史) ★★★★★
- グラックス兄弟(世界史) ★★★★★
- スパルタクスの反乱(世界史) ★★★★★
- 三頭政治(世界史) ★★★★★
- カエサル(世界史) ★★★★★
- アウグストゥス(世界史) ★★★★★高校受験
- ローマの平和(世界史) ★★★★★
- 五賢帝(世界史) ★★★★★
- カラカラ帝とアントニヌス勅令(世界史) ★★★★★
- 軍人皇帝時代(世界史) ★★★★★
- ディオクレティアヌス帝(世界史) ★★★★★
- コンスタンティヌス帝(世界史) ★★★★★
- ミラノ勅令(世界史) ★★★★★
- ニケーア公会議(世界史) ★★★★★
- テオドシウス帝(世界史) ★★★★★高校受験
- コロナトゥス(世界史) ★★★★★
この章の流れは古代ローマの年表(国と王朝の帯図・同じころの日本つき)で、年の順に確かめられます。
← 前の語:コンスルと元老院(世界史) | 次の語:十二表法(世界史) →
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α・β・θ・Σ…古代ギリシャの文字
よくある質問
護民官とは何ですか?
護民官とは、共和政ローマで平民を守るために置かれた役人です。貴族の役人の決定に反対して止める拒否権と、身体にふれてはいけないという不可侵の権利を持ちました。
護民官はいつ、どうしてできましたか?
前494年ごろ、聖山事件をきっかけにできたと伝えられます。平民が町を出て丘にたてこもったため、貴族が平民を守る役人を置くことを認めた、という話です。ただし伝承で、くわしくは分かっていません。
護民官の役割は何でしたか?
平民を守ることです。貴族の役人が平民に不利なことをしようとしたとき、拒否権で止めました。また、平民会を開いて議長を務め、決議を行いました。
護民官とコンスルのちがいは何ですか?
護民官は平民が選ぶ「平民を守る」役人で、拒否権を持ちます。コンスルは市民全体が選ぶ国のリーダーで、軍を率いて国を運営します。護民官は軍の指揮権を持ちません。
護民官になれたのは、どんな人ですか?
平民だけです。貴族(パトリキ)は護民官になれませんでした。選ぶのも、平民だけの集まりである平民会でした。
拒否権とは何ですか?
役人の命令や元老院の決定などに反対して、止める権利です。護民官はこの力で、平民が不利になるのを防ぎました。英語の veto(拒否権)は、ラテン語の「私は禁止する」が元です。
護民官とグラックス兄弟は、どんな関係がありますか?
ティベリウスとガイウスのグラックス兄弟は、護民官として土地改革を進めようとしました。しかし、元老院の保守的な議員たちと対立し、2人とも改革の途中で命を落としました。
護民官は帝政になってどうなりましたか?
役職の形は残りました。アウグストゥスは、護民官の権限(護民官職権)を自分の力の一部に取り入れたとされ、護民官の拒否権や不可侵が、帝政の中でも使われました。
護民官は英語で何といいますか?
tribune(of the plebs)です。ラテン語は tribunus plebis で、英語の tribunal(裁判所)や tribune(演壇)の元にもなりました。
護民官は入試でどう出ますか?
共通テストでは、護民官の役割・拒否権・聖山事件、身分闘争の法の順番が問われます。論述では、身分闘争の結果や、グラックス兄弟の改革の説明で使います。
あわせて読みたい
出典・参考
- 高校「世界史探究」の教科書の一般的な記述
- リウィウス『ローマ建国史』(聖山事件などの伝承)
最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦


