世界史用語集 › 第2章 古代ギリシャとヘレニズム
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重装歩兵じゅうそうほへい
重要度 ★★★★★ (★は合格大作戦の目安)
ひとことで言うと
重装歩兵とは、武具を自分のお金でそろえて戦う、古代ギリシャのポリスの市民兵です。盾をならべたファランクス(密集隊形)で戦い、戦いの主役になった平民が政治への発言力を強めて、民主政への道が開かれました。
| 読み方 | じゅうそうほへい |
|---|---|
| 英語 | hoplite(ホプリテス)/phalanx(ファランクス) |
| 時代 | 前8〜前7世紀ごろ〜前4世紀(ポリスの時代) |
| 地域 | ギリシャ |
| 章 | 第2章 古代ギリシャとヘレニズム |
| 読み方 | 重装歩兵(じゅうそうほへい)/ホプリテス |
| 戦い方 | 密集隊形(ファランクス) |
| 武具 | 青銅のかぶと・胸当て・すね当て、円盾(ホプロン)、槍 |
| いっしょに覚える | 無産市民・サラミスの海戦・マラトンの戦い・スパルタ |
このページのポイント
- 重装歩兵は、武具を自費でそろえる市民兵。貴族の騎兵に代わって、平民が戦いの主役になった。
- 盾をならべたファランクス(密集隊形)で戦う。団結が命で、スパルタでは全市民が重装歩兵だった。
- 平民の発言力が強まり、僭主政治・民主政の背景になった。武具を買えない無産市民は、軍船の漕ぎ手として活躍した。
重装歩兵をやさしく言うと
重装歩兵は、重い青銅の武具で身をかため、槍と盾で戦う、ポリスの市民兵です。ギリシャ語で「ホプリテス」といいます。名前の「ホプロン」は大きな丸い盾のことです。
いちばん大事なのは、武具を自分のお金でそろえるという点です。国が兵士に武器をあたえるのではなく、市民が自分の武具を持って戦場へ出ました。だから、武具をそろえられる平民(農民や職人など)が、戦いの主役になったのです。
この重装歩兵がまとまって戦う方法を、ファランクス(密集隊形)といいます。盾を横にならべて何列にも重なり、槍をつき出して敵に向かって前進します。
エンリケくん
重装歩兵って、ふつうの兵隊さんと何がちがうんですか?
ロダン先生
一番のちがいは、武具を自分で買うことなんだ。だから、お金をもった市民が戦士になる。そして、戦場で国を守る人たちは、「政治にも口を出したい」と考えるようになった。ここが歴史を動かしたんだよ。
エンリケくん
兵士の戦い方が、国の政治を変えたんですね!
重装歩兵のくわしい流れ(登場 → 政治を変える → 変化)
① 貴族の騎兵から、平民の重装歩兵へ
ポリスができたばかりのころ、戦いの主役は、馬に乗った貴族でした。貴族だけが馬と武具を持てたからです。ところが前8世紀から前7世紀にかけて、青銅の武具を比較的安く手に入れられるようになり、農民など平民も自分で武具をそろえて、重装歩兵として戦えるようになりました。
密集隊形の重装歩兵は、貴族の騎兵よりも、ギリシャのような山がちな土地では強かったと考えられています。こうして戦いの主役は、貴族から平民へと移っていきました。
② ファランクスの戦い方
ファランクスの特徴は、次のとおりです。
- 盾を左腕で持ち、となりの人の体の一部も守る。だから、全員がきちんとならぶことが大事。
- いちばん前の列が槍で突き、倒れたら次の列の人が前に出る。
- 平らな土地での、正面からのぶつかりあいが得意。
- 隊形がくずれると、一気に負ける。
この戦い方は、1人の英雄が活躍するというより、全員が同じ呼吸で動くことが大切です。このため、市民どうしの「団結」と「平等」の意識を育てた、と説明されることがあります。
③ 平民の発言力が強まる
自分のお金で武具をそろえ、命がけで国を守る平民は、「それなら政治にも参加させよ」と主張するようになりました。貴族だけが政治を行う体制に不満が高まり、各地のポリスで政治の変化が起きます。
- 一部のポリスでは、平民の支持をえた僭主(非合法に権力をにぎった支配者)が現れた(ペイシストラトスの僭主政治など)。
- アテネでは、ソロンの改革で財産に応じた権利が決まり、重装歩兵にあたる中産の農民が政治に参加する道が開かれた。
- クレイステネスの改革で、さらに市民全体の政治参加が広がり、のちのアテネの民主政につながった。
④ スパルタ:全市民が重装歩兵
スパルタでは、市民は子どものころから軍事訓練を受け、一生を重装歩兵として過ごしました。農業はヘイロータイ(隷属農民)にまかせ、市民は戦いに専念しました。スパルタの重装歩兵は、ギリシャ最強といわれました。
⑤ ペルシア戦争での活躍
前5世紀のペルシア戦争では、ギリシャの重装歩兵がペルシア軍に対して活躍しました。
- マラトンの戦い(前490年):アテネの重装歩兵が、上陸したペルシア軍をやぶった。
- テルモピレーの戦い(前480年):スパルタ王レオニダスらが、せまい道でペルシアの大軍をおさえた。
- プラタイアの戦い(前479年):ギリシャの重装歩兵の連合軍が、ペルシア軍を陸でやぶった。
ただし、アテネではサラミスの海戦(前480年)で、軍船をこぐ無産市民(武具を買えない貧しい市民)が大きく活躍しました。この経験から、無産市民の発言力が強まり、民主政がいっそう進んだ、と説明されます(サラミスの海戦)。
⑥ 重装歩兵の時代の終わり(前4世紀)
- 前371年、レウクトラの戦いで、テーベの将軍エパメイノンダスが「斜線陣」という新しい戦法で、スパルタの重装歩兵を破りました。
- 北のマケドニアでは、フィリッポス2世とアレクサンドロスが、長い槍(サリッサ)の歩兵と強力な騎兵を組み合わせて戦い、前338年のカイロネイアの戦いでアテネ・テーベの連合軍に勝ちました。
この後、ポリスの市民兵に代わって、お金で雇う傭兵や、王の軍隊が中心になっていきます。
年表・図で見る重装歩兵

ロダン先生
重装歩兵が活躍したのは、前7世紀から前4世紀まで。ポリスの時代とほぼ重なっているんだ。
整理:重装歩兵のポイント4つ
- 武具は自費で買う。だから中産以上の市民が戦士。
- ファランクス(密集隊形)で戦う。団結が命。
- 平民の発言力が強まり、僭主政治・民主政の背景になる。
- 武具を買えない無産市民は、軍船の漕ぎ手(海軍)として活躍する。
重装歩兵と関係する人物・用語
| 用語 | 関係 |
|---|---|
| ポリス(都市国家) | 市民が戦士になる市民兵の国 |
| スパルタ | 全市民が重装歩兵。軍国主義 |
| ソロンの改革 | 財産で等級分け。重装歩兵にあたる階級が政治に参加 |
| クレイステネスの改革 | 市民全体の政治参加が広がった |
| ペルシア戦争 | 重装歩兵の活躍の舞台 |
| サラミスの海戦 | 無産市民の艦隊が活躍 |
| アレクサンドロス大王 | マケドニアのファランクスを発展させた |
古代ギリシャの戦いは、ヘロドトスの『歴史』にくわしく書かれています。また、アテネの人々が重装歩兵だったことは、アテネの民主政を考えるうえでも重要です。
サクラちゃん
武具を買えない人は、戦争に行かなくてよかったんですか?
ロダン先生
いい質問だね。アテネでは、そういう人たち(テーテス)は重装歩兵にはならなかった。でも、軍船の漕ぎ手として大きな役割をはたしたんだ。サラミスの海戦のあと、この人たちも政治での発言力を強めていったよ。
重装歩兵でまちがえやすい点
まちがえやすい点
- 重装歩兵を職業軍人と思う:ふだんは農民や職人などの市民。戦争のときに出ていく市民兵(スパルタをのぞく)。
- 武具は国が配ったと思う:自分のお金でそろえた。
- 重装歩兵=貴族と思う:貴族の騎兵に代わって、平民が主役になった。
- ファランクスをマケドニアだけのものと思う:もとはギリシャのポリスの密集隊形。マケドニアはそれを長槍(サリッサ)で発展させた。
- 貧しい市民は戦争に関わらなかったと思う:武具の買えない無産市民は、軍船の漕ぎ手として活躍した。
- 重装歩兵の出現が、直接「民主政」を生んだと書く:平民の発言力を強めた要因のひとつ。ほかの要因もある。
重装歩兵は入試ではこう出る
- 共通テスト:重装歩兵の特徴(武具は自費、密集隊形)、平民の発言力が強まった理由、スパルタの軍国主義との結びつけ。
- 国公立の2次・論述:「ポリスで、重装歩兵の出現が政治に与えた影響を述べよ」という問題。武具を自費でそろえる → 平民が戦いの主役になる → 政治参加を求めるの流れを書く。
- 私大:「ファランクス」「無産市民」「マラトンの戦い」「レウクトラの戦い」などの語句問題。
- サラミスの海戦との関係:無産市民(海軍)の活躍が民主政を進めた、という流れ。
論述の練習は世界史の勉強法(私大・2次試験編)、共通テストの対策は世界史の勉強法その2【共通テスト対策】を見てください。
ロダン先生の「これ知ってる?」
これ知ってる? 「盾とともに帰れ、さもなくば盾の上に」
スパルタの母親が、戦場へ向かう息子に言ったことばとして伝えられているんだ(プルタルコス『モラリア』)。「盾を持って生きて帰るか、盾にのせられて死んで帰るか」という意味。重いホプロンを投げ捨てて逃げることは、最大の恥だった。盾が隣の仲間を守る道具だったからだよ。
これ知ってる? 重装歩兵の武具は、全部でとても重い
青銅のよろいや盾などを合わせると、かなり重くなるから、重装歩兵という名前になった。炎天下の戦場でこの武具を着たまま戦うのは、体力が必要だよ。石像のぼくにも、ちょっときびしそうだね。

ロダン先生
重装歩兵は「武具は自費・密集隊形・平民の発言力アップ」の3点セットで覚えよう。
練習問題
やさしい
- ギリシャのポリスで、武具を自分でそろえて戦った市民兵を何というか。
答えと解説を見る
答え:重装歩兵
ギリシャ語でホプリテスといいます。 - 重装歩兵が盾をならべて、何列にも重なって戦う密集隊形を何というか。
答えと解説を見る
答え:ファランクス
ふつう
- 重装歩兵が戦いの主役になったことで、平民にはどのような変化が起きたか。簡単に答えよ。
答えと解説を見る
答えの例:国を守る自覚が高まり、政治に参加させよという発言力が強まった。
- アテネで、武具を買えず、サラミスの海戦で軍船の漕ぎ手として活躍した市民を何というか。
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答え:無産市民
この活躍によって、民主政が進んだと考えられています。
むずかしい
- 正しいか誤りか答えよ。「重装歩兵の武具は、ポリスが市民に配った。」
答えと解説を見る
答え:誤り
市民が自分のお金で武具をそろえました。だから、ゆとりのある平民が戦士になれました。 - 重装歩兵の出現が、ポリスの政治に与えた影響を、「平民」ということばを使って60字ほどで説明せよ。
答えと解説を見る
答えの例:武具を自費でそろえた平民が戦いの主役となり、国を守る自覚から政治参加を求めたため、貴族だけの政治がゆらぎ、民主政への道が開かれた。(68字)
「自費で武具」「平民が戦いの主役」「政治参加を求める」が入れば合格です。
「古代ギリシャとヘレニズム」の章の用語
- エーゲ文明(世界史) ★★★★★
- クレタ文明(世界史) ★★★★★
- ミケーネ文明(世界史) ★★★★★
- ポリス(世界史) ★★★★★高校受験
- アクロポリスとアゴラ(世界史) ★★★★★高校受験
- ヘレネスとバルバロイ(世界史) ★★★★★
- スパルタ(世界史) ★★★★★
- ソロンの改革(世界史) ★★★★★
- ペイシストラトス(世界史) ★★★★★
- クレイステネスの改革(世界史) ★★★★★
- 陶片追放(世界史) ★★★★★
- ペルシア戦争(世界史) ★★★★★
- サラミスの海戦(世界史) ★★★★★
- デロス同盟(世界史) ★★★★★
- ペリクレス(世界史) ★★★★★
- アテネの民主政(世界史) ★★★★★高校受験
- ペロポネソス戦争(世界史) ★★★★★
- アレクサンドロス大王(世界史) ★★★★★高校受験
- ヘレニズム(世界史) ★★★★★高校受験
- ホメロス(世界史) ★★★★★
- ヘロドトスとトゥキディデス(世界史) ★★★★★
- ソクラテス(世界史) ★★★★★
- プラトン(世界史) ★★★★★
- アリストテレス(世界史) ★★★★★
この章の流れは古代ギリシャとヘレニズムの年表(国と王朝の帯図・同じころの日本つき)で、年の順に確かめられます。
← 前の語:ヘレネスとバルバロイ(世界史) | 次の語:スパルタ(世界史) →
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よくある質問
重装歩兵とは何ですか?
重装歩兵とは、古代ギリシャのポリスで、青銅のかぶと・胸当て・すね当てと、円盾・槍を自分のお金でそろえて戦った市民兵です。ギリシャ語ではホプリテスといいます。
ファランクスとは何ですか?
ファランクスとは、重装歩兵が盾を横にならべ、何列にも重なって前進する密集隊形です。全員がきちんとならぶことが大切で、団結がくずれると負けました。
重装歩兵はなぜ重要なのですか?
重装歩兵の登場で、戦いの主役が貴族の騎兵から平民に移ったからです。国を守る平民は政治参加を求めるようになり、僭主政治や民主政など、ポリスの政治が変わる背景になりました。
重装歩兵の武具はだれが用意しましたか?
市民が自分のお金で用意しました。そのため、武具をそろえられるゆとりのある市民が重装歩兵になり、貧しい無産市民は重装歩兵になれませんでした。
無産市民とは何ですか?
武具を買えず、重装歩兵になれなかった貧しい市民です。アテネでは、サラミスの海戦で軍船の漕ぎ手として活躍し、そのため政治での発言力が強まり、民主政が進みました。
スパルタの重装歩兵は何がちがうのですか?
スパルタでは、市民が子どものころから軍事訓練を受け、一生を重装歩兵として過ごしました。農業はヘイロータイにまかせたので、市民は戦いに専念でき、ギリシャ最強といわれました。
重装歩兵の時代はいつ終わりましたか?
前4世紀に、テーベが斜線陣でスパルタを破り、北のマケドニアが長槍の歩兵と騎兵を組み合わせて、前338年のカイロネイアの戦いでギリシャの連合軍に勝って、ポリスの市民兵の時代は終わっていきました。
重装歩兵は英語で何といいますか?
hoplite(ホプリテス)といいます。密集隊形は phalanx(ファランクス)です。ホプロン(hoplon)は円盾のことです。
重装歩兵は入試でどう出ますか?
共通テストでは、武具が自費であることや密集隊形の特徴が問われます。国公立の論述では、重装歩兵の出現が平民の政治参加につながった流れを説明させる問題がよく出ます。
あわせて読みたい
出典・参考
- 高校「世界史探究」の教科書の一般的な記述
- ヘロドトス『歴史』(マラトン・テルモピレー・プラタイアの戦い)
- プルタルコス『モラリア』(スパルタの母のことばの伝承)
最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦


