J.K.ローリングのペンネーム「ロバート・ガルブレイス」とは|pseudonym・pen name・aliasの違い
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この記事の結論

  • ハリー・ポッターの作者 J.K.ローリング(J.K. Rowling)は、2013年4月に Robert Galbraith(ロバート・ガルブレイス)という男性名のペンネーム(pseudonym)で探偵小説『The Cuckoo’s Calling』(日本語の題『カッコウの呼び声』)を出し、同じ年の7月に正体が報じられました。その後もこの名前で探偵コーモラン・ストライクのシリーズを書き続けています
  • 「別の名前」を表す英語は、pseudonym(偽名・ペンネーム)、pen name(作家の筆名)、alias(別名・通称)、名前を出さないのは anonymous(匿名の)です。英語の長文では「A, better known as B」のような形で、本名とペンネームを見分けます
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お勧め本(2013年の元の記事の写真)

ハリー・ポッターシリーズ(Harry Potter)の著者、J.K. Rowling(J.K.ローリング)が「The Cuckoo’s Calling」という探偵小説を「Robert Galbraith(ロバート・ガルブレイス)」という男性の pseudonym(スードニム・ペンネーム)を使って書いていたことが発覚しました。

このことが発覚するまで「The Cuckoo’s Calling」は目立った売れ行きではありませんでしたが、発覚後は米国・英国のアマゾンでベストセラーになっています。日本ではまだ予約受付中です。

前回 pseudonym(スードニム)についての記事を書いたばかりです。今回のようなインパクトのあるニュースもありましたので、pseudonym の単語の意味も覚えられたのではないでしょうか。

⇒「最近よく見る英単語:pseudonym【英単語の意味】」

※ここまでが2013年7月の元の記事です(つづりのまちがいを直し、確かめられないランキングの順位の数字は外しました)。

2026年の書き直しでは、このニュースがどう起きたのか、その後のシリーズ、そして受験生にとって大事な「名前」にまつわる英単語(pseudonym・pen name・alias・anonymous など)と、英語の長文に出てくる作家のペンネームの例をまとめました。pseudonym という1語の意味・発音・語源は、元の記事でも紹介した「pseudonym の意味と発音」の記事にくわしく書いています。この記事は、その続きの「広げる編」として読んでください。

J.K.ローリング ロバート・ガルブレイスとは(2013年のニュース)

2013年、ペンネームがばれるまで 2013年4月 📕 探偵小説が 新人の名前で出る 2013年7月 📰 新聞が正体を 報じる 直後 📈 本人が認め 一気に売れる 2014年〜 📚 同じ名前で シリーズが続く
図1 2013年、ペンネームがばれるまでの流れ

何が起きたのか

2013年4月、イギリスで『The Cuckoo’s Calling』という探偵小説が出版されました。作者名は Robert Galbraith。出版社の紹介では、元軍人(イギリス軍の警察部門の私服捜査官)という経歴の新人作家とされていました。もちろん、この経歴も作られたものです。

評論家からの評判はよかったものの、無名の新人のデビュー作なので、大きなヒットにはなっていませんでした。ところが同じ年の7月、イギリスの新聞『サンデー・タイムズ』(The Sunday Times)が「作者は J.K.ローリングだ」と報じます。ローリングさんはすぐに声明を出して、自分が書いたことを認めました。

正体が明かされると、本の売れ行きは一気にのびました。「あのハリー・ポッターの作者の新作」となれば、読みたい人がいっぺんに増えるのは自然なことです。元の記事が書かれた2013年7月16日は、ちょうどこのニュースが世界中をかけめぐっていたころでした。

なぜばれたのか

報道によると、秘密がもれたきっかけは、ローリングさんの仕事を受けていた法律事務所でした。そこの弁護士が身内に話し、その知り合いがツイッター(今の X)で記者に伝えてしまったといわれています。のちに法律事務所はローリングさんに謝り、軍人を支援する慈善団体に寄付をしました。

「秘密は、思わぬところからもれる」。ペンネームの話は、こうした情報の守り方の話にもつながります。

なぜ別の名前で書いたのか

ローリングさんは2013年7月の声明で、もう少し長く秘密にしておきたかったこと、そして話題や期待にじゃまされずに本を出し、別の名前で率直な感想をもらえたのはうれしい経験だったという気持ちを伝えています(報道による要旨)。

ハリー・ポッターほど有名になると、新しい本を出すだけで「前より面白いか、つまらないか」と比べられてしまいます。名前を変えれば、作品そのものだけで評価してもらえる。これがペンネームの大きな力の1つです。

「ロバート・ガルブレイス」の名前の由来

報道によると、ローリングさんは「Robert」を、尊敬するアメリカの政治家ロバート・F・ケネディにちなんで選んだと話しています。「Galbraith」のほうは、子どものころに「エラ・ガルブレイス(Ella Galbraith)」という名前になりたいと思っていたことがあり、そこから取ったそうです。なぜその名字にひかれたのかは本人にも分からない、とも話しています。

コーモラン・ストライク シリーズ 一覧(Robert Galbraith の小説)

2013年の1作目のあとも、ローリングさんは Robert Galbraith の名前のまま、私立探偵コーモラン・ストライク(Cormoran Strike)と相棒のロビン・エラコット(Robin Ellacott)が事件を解くシリーズを書き続けています。正体がばれてもペンネームをやめなかったのは、「J.K.ローリングの本」と「ロバート・ガルブレイスの本」をはっきり分けておくためだと考えられます。

探偵コーモラン・ストライクのシリーズ(8作) 1 2013年 The Cuckoo's Calling 2 2014年 The Silkworm 3 2015年 Career of Evil 4 2018年 Lethal White 5 2020年 Troubled Blood 6 2022年 The Ink Black Heart 7 2023年 The Running Grave 8 2025年 The Hallmarked Man 作者名はどれも Robert Galbraith
図2 コーモラン・ストライクのシリーズ(2025年までに出た8作)
巻出版年原題
1作目2013年The Cuckoo's Calling
2作目2014年The Silkworm
3作目2015年Career of Evil
4作目2018年Lethal White
5作目2020年Troubled Blood
6作目2022年The Ink Black Heart
7作目2023年The Running Grave
8作目2025年The Hallmarked Man

1作目の日本語訳の題は『カッコウの呼び声』です。英語で読むなら 原書(The Cuckoo’s Calling)、日本語で読むなら 日本語訳(カッコウの呼び声) をさがしてみてください。シリーズは2017年からイギリスの BBC でドラマ「Strike」にもなっています。

大人向けの推理小説なので、事件の場面には重い内容もあります。英語の多読に使うなら、まずはドラマや日本語訳で筋をつかんでから原書を読む、という順番もおすすめです。海外ドラマで英語を学ぶ方法は「海外ドラマで英語の勉強法(FRIENDS)」でくわしく紹介しています。

J.K.ローリングの「J.K.」もペンネームの工夫

1人の作家、3つの名前 本名(real name) Joanne Rowling J.K. Rowling ⚡ ハリー・ポッター 子ども向け(1997年〜) Robert Galbraith 🔍 探偵ストライク 大人向け(2013年〜)
図3 1人の作家に3つの名前(本名・J.K.・ガルブレイス)

じつは「J.K.ローリング」という名前そのものにも、ペンネームの工夫があります。本名は Joanne Rowling(ジョアン・ローリング)で、生まれたときのミドルネームはありません。

1997年に1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』(Harry Potter and the Philosopher’s Stone)を出すとき、出版社の人たちは「主な読者の男の子は、女性が書いた本を手に取らないかもしれない」と考え、名前を頭文字(イニシャル)にすることをすすめました。そこで、父方の祖母の名前 Kathleen(キャスリーン)から K を借りて「J.K.」としたのです。

そして2012年には、初めての大人向けの小説『The Casual Vacancy』を J.K.ローリングの名前で出しました。その翌年が、ガルブレイス名義の探偵小説です。

  • J.K. Rowling:本名の Joanne を頭文字にして、性別が分からないようにした名前
  • Robert Galbraith:名声から離れて、新人として評価されるための名前

同じ1人の作家が、目的に合わせて名前を使い分けていることが分かります。

うかるくん

うかるくん

えっ、「J.K.」も本当の名前じゃなかったんですか! ずっと本名だと思ってました。

合格先生

合格先生

姓の Rowling は本名だけど、J.K. は出版のときに考えた形なんだ。「男の子にも読んでもらえるように」という作戦だったんだよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

じゃあ、ロバート・ガルブレイスは「ハリー・ポッターの作者」という名前から離れるための作戦ですね。

合格先生

合格先生

そのとおり。名前を変える理由は人それぞれ。次は、その「別の名前」を表す英単語を整理していこう。入試の長文にもよく出るぞ。

pseudonym の関連語 一覧(pen name・alias・anonymous など)

「別の名前」「名前をかくす」を表す英単語を、まとめて一覧にしました。意味は一般的な英和辞典・英英辞典の記述によります。

英単語意味使い方・ひとこと
pseudonym偽名・ペンネームwrite under a pseudonym(ペンネームで書く)
pen nameペンネーム(作家の筆名)Robert Galbraith is her pen name.
nom de plumeペンネーム(やや気どった言い方)フランス語風だが、英語の中で使われる言い方
alias別名・通称/(副詞)別名はSmith, alias Simpson(スミス、別名シンプソン)
a.k.a.別名〜(also known as の略)Eric Blair, a.k.a. George Orwell
anonymous匿名の・作者不明のan anonymous letter(匿名の手紙)
anonymity匿名であることkeep one’s anonymity(匿名を守る)
pseudonymous偽名の・ペンネームで書かれたa pseudonymous author
incognitoお忍びで・身分をかくしてtravel incognito(お忍びで旅をする)
moniker名前・あだ名(くだけた言い方)ニュースや雑誌の英文によく出る
stage name芸名俳優・歌手の名前
byline記事の筆者名の行新聞・雑誌の記事の「〜記者」の部分
ghostwriterゴーストライター(代筆者)本人の名前で本を書く別の人
real name/true identity本名/本当の正体reveal one’s true identity(正体を明かす)
名前をどこまで出す?(3段階) 右へ行くほど名前をかくす 🙂 本名を出す real name 例:本名で書く 🎭 別の名前を出す pseudonym pen name・alias ❔ 名前を出さない anonymous 例:作者不明
図4 名前の出し方の3段階(real name・pseudonym・anonymous)

pseudonym と pen name と nom de plume

pen name は、作家が使う名前のこと。日本語の「ペンネーム」はここから来ています。pseudonym も「ペンネーム」と訳せますが、作家にかぎらず本名の代わりに使う名前全体に使える、少しかたい言葉です。ネットで本名をかくして使う名前も pseudonym と呼べます。

nom de plume は「羽根(ペン)の名前」という意味のフランス語風の言い方です。ただ、フランス語でふつうに使う言い方ではなく、英語の中で作られて広まった言い方だと説明されることがあります。英文で見かけたら「ペンネーム」と読めば大丈夫です。

alias と a.k.a.

alias はラテン語の「別のときに・ほかの場合に」という意味の言葉から来ていて、「別名」を表します。名詞では「別名・通称」、副詞では「別名は〜」。法律の文書では「Smith, alias Simpson(スミス、別名シンプソン)」のように使われます。ニュースでは犯人が使っていた偽名に使われることが多く、少しあやしい感じがする言葉です。コンピュータの世界では「エイリアス」として、ファイルやコマンドの別名の意味でも使われます。

a.k.a. は also known as(〜としても知られる)の略です。音楽の世界のアーティスト名やスポーツ選手のあだ名など、くだけた英文でよく見ます。英単語の略語は「アルファベットの略称一覧」でもまとめています。

anonymous と anonymity

anonymous は「匿名の・作者不明の」。ギリシャ語の an-(〜がない)+ onyma(名前)から来た言葉で、文字どおり「名前がない」という意味です。pseudonym が「別の名前を出す」のに対し、anonymous は「名前を出さない」点がちがいます(図4)。

  • an anonymous letter:差出人の名前がない手紙
  • an anonymous donor:名前を明かさない寄付者
  • The author wishes to remain anonymous.:作者は匿名のままでいたいと望んでいる

名詞は anonymity(匿名であること)。「the anonymity of the Internet(インターネットの匿名性)」は、評論文の英語長文で何度も出てくる大事な表現です。

incognito と moniker

incognito は、イタリア語を通して入ったラテン語 incognitus(知られていない)から来た言葉で、「身分をかくして・お忍びで」という意味です。もとは王さまや有名人が正体をかくして出歩くような場面で使われました。今ではウェブブラウザの「シークレットモード(incognito mode)」の名前にも使われています。

moniker は「名前・あだ名」のくだけた言い方です。語源ははっきりしていません。新聞や雑誌の英文で「〜という呼び名」の意味でよく使われます。

stage name・byline・ghostwriter

俳優や歌手が使う名前は stage name(芸名)。新聞や雑誌の記事で「だれが書いたか」を示す行は byline(バイライン)です。ghostwriter は、本人の名前で出る本や文章を代わりに書く人のこと。ペンネームとは逆に、「書いた人の名前が表に出ない」しくみです。

パーツで覚える「名前をかくす」英単語 pseudoにせの + nym名前 pseudonym偽名・ペンネーム an〜がない + onym名前 anonymous匿名の in〜でない + cognito知られた incognitoお忍びで
図5 パーツで覚える:pseudonym・anonymous・incognito

このように語源のパーツで覚えると、初めて見る単語も意味が想像しやすくなります。-nym で終わる仲間(synonym・antonym・acronym など)は「pseudonym の意味と発音」の記事にまとめています。英単語を効率よく覚えるコツは「英単語の覚え方【基礎編1】」や「英単語のおすすめ学習法」も参考にしてください。

英米の作家のペンネーム 一覧(英語の長文に出る形)

英語の長文、とくに文学や歴史を題材にした文章では、作家のペンネームの話がよく出てきます。有名な例をまとめました。

ペンネーム本名ひとこと
George Eliot(ジョージ・エリオット)Mary Ann Evans19世紀イギリスの女性作家。男性の名前で発表
Currer・Ellis・Acton Bell(ベル三兄弟の名)シャーロット・エミリー・アン・ブロンテブロンテ姉妹が男性にも読める名前で発表
Lewis Carroll(ルイス・キャロル)Charles Dodgson(ドジソン)『不思議の国のアリス』の作者。本業は数学者
Mark Twain(マーク・トウェイン)Samuel Clemens『トム・ソーヤーの冒険』の作者
George Orwell(ジョージ・オーウェル)Eric Arthur Blair『1984年』『動物農場』の作者
O. Henry(O・ヘンリー)William Sydney Porter短編小説で有名なアメリカの作家
Mary Westmacott(メアリ・ウェストマコット)Agatha Christie推理小説とは別の恋愛小説6作に使った名前
Richard Bachman(リチャード・バックマン)Stephen King1人の作家の本が多く出すぎないように使った名前
Publius(パブリウス)ハミルトン・マディソン・ジェイアメリカ憲法を支持する論文集『ザ・フェデラリスト』の筆名
Robert Galbraith(ロバート・ガルブレイス)J.K. Rowlingこの記事の主役。探偵小説のシリーズ
作家がペンネームを使う4つの理由 👩 性別の思いこみをさける George Eliot・ブロンテ姉妹 🔀 ジャンルを分ける Mary Westmacott(クリスティ) 🆕 名声ぬきで評価される Robert Galbraith・Richard Bachman 🛡️ 自分や家族を守る George Orwell・Elena Ferrante
図6 作家がペンネームを使う4つの理由

女性作家が男性の名前を使った時代

19世紀のイギリスでは、女性が書いた小説は軽く見られがちでした。そこで Mary Ann Evans は George Eliot という男性の名前で小説を発表しました。『ジェーン・エア』で知られるシャーロット・ブロンテと、妹のエミリー、アンの3姉妹も、はじめは Currer・Ellis・Acton Bell という、男性とも女性ともとれる名前で作品を出しています。

J.K.ローリングが頭文字を使い、さらに男性名の Robert Galbraith を名乗ったことは、この流れの21世紀版ともいえます。英語の長文で「She published her novel under a male pseudonym.」のような文が出たら、なぜ男性名を使ったのか(偏見をさけるため)という筆者の主張を読みとりましょう。

ジャンルや出す本の数を分けるため

推理小説の女王アガサ・クリスティは、推理小説とは雰囲気のちがう恋愛小説を Mary Westmacott の名前で6作書きました。ホラー小説で有名なスティーヴン・キングは、Richard Bachman の名前で何作かの小説を出しています。当時の出版社は「同じ作家の本を1年に何冊も出しても、読者は買わない」と考えていた、と説明されています。

自分や家族、考えを守るため

George Orwell の本名は Eric Arthur Blair。家族にめいわくがかからないようにペンネームを使った、という説明があります。イタリアの作家 Elena Ferrante(エレナ・フェッランテ)は、ペンネームで正体を長く明かさない作家の例としてよく挙げられます。

アメリカの歴史では、憲法を支持するために書かれた論文集『ザ・フェデラリスト』(The Federalist Papers)が、ハミルトン・マディソン・ジェイの3人による Publius という1つの筆名で発表されました。古代ローマの共和政をつくった人物を思わせる名前です。個人ではなく「意見そのもの」で読んでもらうための名前だった、と考えると分かりやすいでしょう。

数学者のペンネーム:ルイス・キャロル

『不思議の国のアリス』の作者 Lewis Carroll の本名は Charles Dodgson(チャールズ・ドジソン)。オックスフォード大学で数学を教えていた人です。数学の本は本名で、物語はペンネームで、と使い分けていました。数学と英語の両方が好きな人には、「数学用語を英語で」の記事もおすすめです。

マーク・トウェイン(本名 Samuel Clemens)の名前の話は、「pseudonym の記事」の例文で紹介しています。

日本の作家のペンネーム(筆名・号)

日本語では、ペンネームのことを筆名(ひつめい)とも言います。俳人や画家の名前は号・雅号(がごう)、芸能人の名前は芸名、名前を出さないことは匿名(とくめい)です。国語の文学史に出てくる作家にも、本名とちがう名前の人がたくさんいます。

筆名本名ひとこと
夏目漱石(なつめ・そうせき)夏目金之助「漱石」は号。くわしくは pseudonym の記事で
森鷗外(もり・おうがい)森林太郎軍医としても働いた明治の文豪
二葉亭四迷(ふたばてい・しめい)長谷川辰之助「くたばって仕舞え」が由来とされる
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)平井太郎エドガー・アラン・ポーをもじった名前

二葉亭四迷の名前は、自分の作品の出し方に不満をもった本人が、自分に向かって「くたばって仕舞(め)え」と言ったことから来た、と本人の文章にあるとされます。江戸川乱歩は、アメリカの作家エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)の名前をもじったもので、英語の名前が日本のペンネームになった面白い例です。

読書感想文や課題図書で文学作品を読むときも、作者の本名と筆名に気づくと、作品の背景が見えてきます。読書と感想文については「課題図書と読書感想文の書き方」も読んでみてください。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

ペンネームの話は「なぜその名前を使ったのか」が大事! 英語の長文でも、理由(偏見をさけたい・評価を分けたい・身を守りたい)を読みとれば、筆者の言いたいことがつかめるぞ。

英語の長文でペンネームを読みとるコツ(大学入試)

長文で見分ける:どっちが本名? 本名 ペンネーム Eric Blair , better known as George Orwell George Orwell , the pen name of Eric Blair Mary Ann Evans wrote under the name George Eliot 色で確かめよう:緑=本名、オレンジ=ペンネーム
図7 長文で見分ける:どっちが本名?

大学入試の英語長文では、作家や人物の名前が2つ出てきて「どっちが本名?」と迷うことがあります。次の形を覚えておくと、すぐに見分けられます。

英語の形意味本名はどっち?
A, better known as BA、B としてのほうがよく知られているA が本名、B が有名な名前
B, the pen name of AA のペンネームである BA が本名
A wrote under the name BA は B という名前で書いたA が本名
A, alias B/A a.k.a. BA、別名 BA がもとの名前のことが多い
whose real name was A本名は A だったA が本名
reveal one’s (true) identity正体を明かす「ばれた」場面で出る

例文で練習(和訳つき)

  • The novel was first published under the pseudonym Robert Galbraith.
    その小説は最初、ロバート・ガルブレイスというペンネームで出版された。
  • A newspaper revealed that the debut novelist was in fact J.K. Rowling.
    新聞は、その新人作家が実は J.K.ローリングだと明らかにした。
  • Eric Blair, better known as George Orwell, wrote Animal Farm.
    ジョージ・オーウェルの名でよく知られるエリック・ブレアは『動物農場』を書いた。
  • Some writers prefer to remain anonymous.
    名前を明かさないままでいたい作家もいる。
  • She hoped her book would be judged on its own merits.
    彼女は、自分の本が本そのものの価値で評価されることを願った。

最後の on its own merits(それ自体の価値で)は、ペンネームの話とセットで出やすい表現です。英文和訳では、「スードニム」のようにカタカナにせず、文に合わせて「ペンネーム」「偽名」「別名」と訳し分けましょう。和訳と英文解釈の練習のしかたは「ビジュアル英文解釈を使った英語勉強法」、京大のような和訳の多い試験の対策は「京大英語のおすすめ参考書」にまとめています。

サクラちゃん

サクラちゃん

長文に名前が2つ出てくると、どっちがだれだか分からなくなって、内容が頭に入らないんです…。

合格先生

合格先生

better known as、the pen name of、under the name のような「名前の関係を示すことば」に印をつけて読もう。本名とペンネームを図4・図7のように色分けしてメモすると、迷わなくなるよ。

うかるくん

うかるくん

anonymous と pseudonymous のちがいも、ちゃんと区別しないといけませんね。

合格先生

合格先生

そう! anonymous は「名前を出さない」、pseudonymous は「別の名前を出す」。この1点を押さえておけば、選択問題で引っかからないぞ。

ネットの名前(ハンドルネーム)と匿名性

今は、作家でなくても多くの人がハンドルネーム(ネットで使う名前)を使っています。英語では handle、screen name、username などと言い、本名をかくすという意味では pseudonym の一種です。

ネットの匿名性(anonymity)には、本名を出さずに意見を言える、身を守れるというよい面があります。一方で、名前が出ないからといって、だれかを傷つけることを書いてよいわけではありません。「匿名でも、書いたことの責任は自分にある」という考え方は、英語の評論文でもよく取り上げられるテーマです。英作文の練習として、自分の意見を英語で書いてみるのもよいでしょう。

英作文でカタカナ語をそのまま英語にすると、思わぬまちがいになることがあります。「ハンドルネーム」もそのままでは通じにくい言葉です。くわしくは「英作文で使ってはいけない和製英語」で確かめてください。

ニュースで英単語を覚える:受験生への使い方

元の記事でも書いたように、インパクトのあるニュースと一緒に覚えた単語は忘れにくいものです。pseudonym という少しむずかしい単語も、「ハリー・ポッターの作者が男性名で探偵小説を書いていた」という話と結びつければ、長く頭に残ります。

  1. ニュースで出会う:気になった英単語は、どんな話で出たかもいっしょにメモする
  2. 辞書で確かめる:意味・発音・語源を電子辞書などで確かめる(電子辞書と紙の辞書の使い分け)
  3. 仲間の単語を集める:pseudonym なら pen name・alias・anonymous のように、意味の近い語をまとめる
  4. 例文で使う:短い例文を音読して、使い方ごと覚える

単語の意味のちがいを整理する練習は「liberty と freedom の違い」や「commute の意味」、「単複同形の英単語まとめ」でもできます。同じように、ニュースや歴史に出る英単語は「propaganda(プロパガンダ)の意味」、身の回りの実用英単語は「temper と tempered glass」でも紹介しています。

大学入試で必要な語彙をどう増やすかは「東大の英単語」や「難関大学の英単語帳」、英語の勉強の全体像は「英語の勉強法まとめ」を見てください。

ひらめいたうかるくん

うかるくん

pseudonym は「ハリー・ポッターの作者のもう1つの名前」でバッチリ覚えた! anonymous は「名前なし」、alias は「別名」。仲間でまとめると忘れないね。

まとめ:pseudonym とペンネームの文化

  • J.K.ローリングは2013年、Robert Galbraith の名前で探偵小説『The Cuckoo’s Calling』を出し、同じ年の7月に正体が報じられた
  • その後も同じ名前でコーモラン・ストライクのシリーズが続き、2025年までに8作が出ている
  • 「J.K.」も、本名 Joanne を頭文字にした工夫された名前
  • pseudonym=偽名・ペンネーム、pen name=作家の筆名、alias=別名、anonymous=匿名の
  • ペンネームの理由は、性別の思いこみをさける・ジャンルを分ける・名声ぬきで評価される・身を守る、など
  • 長文では better known as/the pen name of/under the name で本名とペンネームを見分ける

よくある質問

ロバート・ガルブレイスとはだれですか?

ハリー・ポッターの作者J.K.ローリングが、大人向けの探偵小説を書くときに使っているペンネームです。2013年に1作目が出て、同じ年の7月に正体が報じられました。

ロバート・ガルブレイスの小説のシリーズ名は?

私立探偵コーモラン・ストライクのシリーズです。1作目は The Cuckoo’s Calling(日本語の題『カッコウの呼び声』)で、2025年までに8作が出ています。

J.K.ローリングの本名は?

Joanne Rowling(ジョアン・ローリング)です。J.K.のKは父方の祖母の名前Kathleenから取ったもので、生まれたときのミドルネームではありません。

pseudonymとanonymousの違いは?

pseudonymは本名の代わりに別の名前を出すこと(偽名・ペンネーム)、anonymousは名前をまったく出さないこと(匿名の)です。

aliasとa.k.a.の意味は?

aliasは「別名・通称」、a.k.a.はalso known asの略で「別名〜」という意味です。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 2013年7月16日の元の記事(大学受験合格大作戦)と写真
  • The Cuckoo’s Calling の出版(2013年4月)・正体の報道(The Sunday Times、2013年7月)・法律事務所からの情報もれと寄付・BBCのドラマ「Strike」:英語版ウィキペディア「The Cuckoo’s Calling」「Cormoran Strike」の記述と当時の報道(The Boston Globe ほか、2013年7月14日)
  • Robert Galbraith の名前の由来(ロバート・F・ケネディ、Ella Galbraith):2013年7月の報道(Christian Science Monitor・Mental Floss ほか)
  • J.K.ローリングの本名・頭文字の由来・作品の出版年:英語版ウィキペディア「J. K. Rowling」
  • 英米の作家のペンネーム(George Eliot・ブロンテ姉妹・O. Henry・Stephen King・Publius・Elena Ferrante・nom de plume):英語版ウィキペディア「Pen name」。George Orwell・Mary Westmacott:英語版ウィキペディアとアガサ・クリスティ公式サイト
  • 二葉亭四迷の筆名の由来:文京区「文京ゆかりの文人 二葉亭四迷」。江戸川乱歩の本名と筆名の由来:一般的な文学事典の記述
  • alias・anonymous・incognito・moniker の意味と語源:Wiktionary と一般的な英和・英英辞典

最終更新:2026年10月23日/作成:大学受験合格大作戦

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