唇亡びて歯寒しの意味と由来|春秋左氏伝の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

唇亡びて歯寒しの意味と由来|春秋左氏伝の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

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唇亡びて歯寒しくちびるほろびてはさむし

ひとことで言うと

助け合う関係の一方がほろびると、もう一方も危うくなること。虢がほろびれば虞もほろびる、と宮之奇が虞公をいさめた話から。

読み方くちびるほろびてはさむし
意味互いに助け合っている関係の一方がほろびると、もう一方も危うくなること。
出典『春秋左氏伝』僖公五年(宮之奇の諫め)。『春秋穀梁伝』僖公二年にも「唇亡則歯寒」の形
お話晋が虢を討つために虞の道を借りようとしたとき、虞の宮之奇が「虢がほろびれば虞も続く」といさめたが、虞公は聞かず、晋は虢をほろぼした帰りに虞もほろぼした
似た言葉唇歯輔車・輔車相依る・一蓮托生
反対の言葉対岸の火事・高みの見物(反対の考え方)
漢文の句法仮定(〜ば)・禁止(不可)・反語(豈〜哉)

このページのポイント

  • 「唇亡びて歯寒し」は、助け合う関係の片方がほろびると、もう片方も危うくなること
  • 出典は『春秋左氏伝』。宝物に目がくらんで道を貸した虞公と、いさめた宮之奇の話を4こまのイラストで読めます
  • 原文には仮定・禁止・反語の句法が入っていて、「輔車」の2つの説も図で分かります

「唇亡びて歯寒し」の意味と読み方

「唇亡びて歯寒し」はくちびるほろびてはさむしと読みます。意味は「助け合っている2つのもののうち、片方がほろびると、もう片方も危うくなること」です。「唇滅びて歯寒し」と書かれることもあります。

唇(くちびる)は、ふだん歯の前をおおって守っています。もし唇がなくなれば、歯は冷たい風にじかにさらされて寒くなります。このように、ふだんは目立たなくても、実は相手に守られている関係をたとえた言葉です。中国の古い歴史書『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』で、小さな国の家来が王をいさめたときに使った言葉として有名です。

唇がなくなると、歯が寒い唇が歯を守る風が当たっても平気唇(くちびる)がある唇が亡びると…歯に冷たい風が直接唇がないブルッ助け合う2つの片方がほろびるともう片方も危うくなる
唇がなくなると、歯が寒い。片方がほろびると、もう片方も危うくなるたとえです
うかるくん

うかるくん

唇と歯って、助け合ってるんですか? ぜんぜん考えたことなかったです。

ミスターT先生

ミスターT先生

唇は歯の「よろい」みたいなものなんだ。ふだんはありがたみに気づかないけれど、なくなると困る。昔の中国では、となり合った小さな国どうしをこの関係にたとえたんだよ。「となりの国がほろびるのは、自分には関係ない」と思ったら大まちがい、というのがこの言葉の中心なんだ。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○取引先の会社がつぶれたら、部品を納めているわが社も危ない。まさに唇亡びて歯寒しだ。
  • ○となりの商店街がさびれると、こちらのお客も減ってしまう。唇亡びて歯寒しの関係だ。
  • ○守備の中心の選手が抜けると、ほかの選手の負担も増える。唇亡びて歯寒しで、チーム全体が崩れかねない。

どの例も、2つのものが支え合っていて、片方がだめになると、もう片方にも悪い影響が出る場面です。「仲がよい」というだけでなく、「片方がほろびると、もう片方も困る」という利害のつながりがあるときに使うのがポイントです。字の形は「唇」の読み方・書き順・部首、「歯」の読み方・書き順・部首で確かめておきましょう。

絵で読む「唇亡びて歯寒し」のお話

まずは話の流れを、4つの場面で見てみましょう。舞台は今から2600年以上前の中国、春秋時代です。登場するのは、北の大国晋(しん)、その南の小さな国虞(ぐ)、さらに南の小さな国虢(かく)の3つの国の人々です。

絵で読む「唇亡びて歯寒し」のお話(4こま)

1晋が道を借りに来るこの璧と名馬を贈ります。虢を討つ道をお貸しくださいおお、すばらしい宝だ!荀息(晋)虞公
1大国の晋(しん)の使者・荀息が、宝物の璧(へき)と名馬を虞公に贈り、「虢(かく)を討ちたいので、虞の道を通らせてください」とたのみます。虞公は宝物に大喜び。
2宮之奇がいさめる虢がほろびれば虞も続く。唇亡びて歯寒しです!晋はわが一族。害するものか宮之奇虞公
2虞の家来の宮之奇は「虢がほろびれば、虞も続いてほろびます。唇亡びて歯寒しです」といさめます。しかし虞公は「晋はわが一族だ」と聞き入れません。
3晋が虢をほろぼす虞の道晋晋虢晋の軍虢の城
3晋の軍は虞の道を通って虢へ攻めこみ、虢をほろぼしてしまいました。
4虞もほろぼされる璧は元のまま。馬は少し年をとったなしまった…唇亡びて歯寒し
4晋の軍は帰り道に虞に泊まり、そのまま虞もほろぼします。宮之奇の言ったとおりになりました。(4こま目の荀息の言葉は『春秋穀梁伝』の形)

晋が虢を攻めるには、間にある虞の国を通らなければなりません。そこで晋の献公(けんこう)は、家来の荀息(じゅんそく)の考えで、「垂棘(すいきょく)の璧」という玉の宝物と、「屈産(くっさん)の乗」という名馬を虞公に贈り、道を借りました。宝物に目がくらんだ虞公は、虢が自分の国を守る「唇」だということに気づかなかったのです。

晋・虞・虢の位置(わかりやすくした図)晋(しん)北の大国。献公が治める虞(ぐ)小国。家来に宮之奇黄河虢(かく)小国。都は上陽①行き虞の道を通る②帰り虞もほろぼす※位置は大まかな模式図です
晋が虢を攻めるには、虞の道を通る必要がありました。虢は、虞にとって北の大国から身を守る「唇」でもありました
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

この話のこわいところは、虞公が「自分の国は関係ない」と思っていたことだ。虢がほろびれば、次は自分の番。宮之奇には、それがはっきり見えていたんだね。

4こま目の、荀息が「璧は元のままですが、馬は少し年をとりました」と言う場面は、『春秋左氏伝』ではなく、同じ出来事を書いた『春秋穀梁伝(しゅんじゅうこくりょうでん)』にある言葉です。贈った宝物が、虞をほろぼしたことで晋に戻ってきた、という皮肉な結末です。『韓非子』十過では、この言葉を言ったのは献公とされていて、本によって少しずつ形がちがいます。

「唇亡びて歯寒し」の原文・書き下し文・現代語訳

出典は『春秋左氏伝』の僖公(きこう)五年の記事です。晋がふたたび道を借りに来たとき、虞の家来の宮之奇(きゅうしき)が、虞公をいさめた言葉の中に出てきます。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールでくわしく説明しています。

白文(宮之奇の諫めの中心部分)虢、虞之表也。虢亡、虞必従之。晋不可啓、寇不可翫。一之謂甚、其可再乎。諺所謂「輔車相依、唇亡歯寒」者、其虞虢之謂也。

1文目:虢は虞の「表」

書き下し文虢かくは、虞ぐの表へうなり。

(『春秋左氏伝』僖公五年)

現代語訳虢は、虞にとって外側の守り(垣根)である。

ここがポイント「表(へう)」は「外側・おもて」。虢は虞の外側にあって、北の晋から虞を守る壁の役目をしている、という意味です。のちに出てくる「唇」と同じたとえです。

2文目:虢がほろびれば虞も続く

書き下し文虢かく亡ほろぶれば、虞ぐ必かならず之これに従したがはん。

(『春秋左氏伝』僖公五年)

現代語訳虢がほろびたら、虞も必ずそのあとに続く(ほろびる)だろう。

ここがポイント「亡ぶれば」は、「已然形+ば」ですが、ここでは「もし〜ならば」という仮定の気持ちで読みます。漢文の仮定の句法(如・若・苟・縦)のように仮定の字が無くても、送り仮名で仮定を表すことがあります。「之」はここでは「虢」を指す代名詞で、くわしくは「之」の読み方(の・これ・ゆく)へ。

3文目:晋に道を開いてはいけない

書き下し文晋しんは啓ひらくべからず、寇こうは翫もてあそぶべからず。

(『春秋左氏伝』僖公五年)

現代語訳晋に(道を)開いてやってはいけない。攻めてくる敵を軽く見てはいけない。

ここがポイント「不可〜(〜べからず)」は「〜してはいけない」という禁止の句法(勿・毋・無・莫・不可)に近い言い方です。「寇(こう)」は攻めてくる敵、「翫(もてあそ)ぶ」は「あなどる」。このあと「一之謂甚、其可再乎」(一度でもひどいのに、二度もしてよいものか)と続きます。

4文目:唇亡びて歯寒し

書き下し文諺ことわざに所謂いはゆる「輔ほ車しや相あひ依より、唇くちびる亡ほろびて歯は寒さむし」とは、其それ虞ぐ虢かくの謂いひなり。

(『春秋左氏伝』僖公五年)

現代語訳ことわざに言う「頬骨と歯ぐきは互いに頼り合い、唇がなくなれば歯が寒い」とは、まさに虞と虢のことを言うのだ。

ここがポイント「所謂(いはゆる)」は「世間で言う」。「〜者(とは)」は「〜というのは」と話題を示す言い方で、「者・所・所以」の読みと用法で練習できます。「其〜之謂也(其れ〜の謂ひなり)」は「まさに〜のことを言うのだ」と強く言い切る形。宮之奇は、これを自分の言葉ではなく「諺(ことわざ)」として持ち出しています。

5文目:虞公の返事

書き下し文公こう曰いはく、「晋しんは吾わが宗そうなり。豈あに我われを害がいせんや。」

(『春秋左氏伝』僖公五年)

現代語訳虞公が言うには、「晋はわたしの一族(同じ祖先の国)だ。どうしてわたしを害することがあろうか(いや、害するはずがない)。」

ここがポイント「豈(あ)に〜んや」は「どうして〜だろうか、いや〜ない」という反語の句法(豈・安・何・誰)の代表です。虞も晋も、周の王室と同じ「姫(き)」という姓の国で、虞公はそれを信じきっていました。
宮之奇の諫めで覚える句法4つ虢亡虢亡ぶればもし虢がほろびたら仮定不可啓啓くべからず道を開いてはいけない禁止豈害我哉豈に我を害せんやどうして害するだろうか反語〜之謂也〜の謂ひなり〜のことを言うのだ説明
宮之奇の言葉と虞公の返事には、仮定・禁止・反語・説明の言い方が入っています

原典(『春秋左氏伝』僖公五年)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)で見られる『春秋左氏伝』の本文では、宮之奇の言葉は次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。

『春秋左氏伝』僖公五年の本文晉侯復假道於虞以伐虢,宮之奇諫曰:「虢,虞之表也。虢亡,虞必從之。晉不可啟,寇不可翫。一之謂甚,其可再乎?諺所謂『輔車相依,脣亡齒寒』者,其虞虢之謂也!」
  • 「唇」が「脣」:原文は「脣」という字で書かれています。「唇」と同じ「くちびる」の字です。
  • 「假道(道を假る)」:「仮道(かどう)」は、軍隊が通るために他国の道を借りること。晋はこれで2度目でした。
  • 話の続き:宮之奇は、晋の献公が自分の一族の桓・荘の家の人々さえ殺したことを挙げ、「一族だから安心」とは言えないと説きます。虞公が「わたしは神をていねいにまつっているから、神が守ってくれる」と言うと、宮之奇は「鬼神は人を実に親しむに非ず、惟だ徳に是れ依る」(神は人そのものに親しむのではなく、徳のある人に寄りそう)と答えます。それでも虞公は聞き入れず、宮之奇は一族を連れて国を去りました。

宮之奇が国を去る

書き下し文宮きゆう之し奇き其その族ぞくを以もつて行ゆく。

(『春秋左氏伝』僖公五年)

現代語訳宮之奇は、自分の一族を連れて(虞を)去った。

ここがポイント「以(もつ)て」は「〜を連れて・〜を使って」。「以」の読みと用法でくわしく説明しています。宮之奇はこのとき「虞は年末の祭り(臘)をむかえられないだろう」と予言し、そのとおり、その年の十二月に虞はほろびました。
サクラちゃん

サクラちゃん

「唇亡びて歯寒し」って、宮之奇さんが考えた言葉じゃないんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

いいところに目をつけたね。原文は「諺に所謂(いはゆる)」と言っているから、宮之奇の時代にはもう、ことわざとして知られていたことになる。宮之奇は、みんなが知っていることわざを使って、王に分かりやすく説明したんだ。だから「宮之奇が作った言葉」と書くのは正確ではないね。

出典『春秋左氏伝』と話の背景

『春秋左氏伝』(略して『左伝』)は、孔子の生まれた魯(ろ)の国の年代記『春秋』に、くわしい説明をつけた本です。作者は左丘明(さきゅうめい)と伝えられていますが、はっきりしたことは分かっていません。『春秋』の短い記事に、その背景となった出来事や人々の言葉をくわしく書き足しているので、「故事成語の宝庫」と言われます。「宋襄の仁(宋の襄公の故事)」や「病膏肓に入る(晋の景公の夢)」も、この本から生まれた言葉です。

「僖公五年」は、魯の僖公が位について5年目という意味で、紀元前655年にあたります。そのころの中国は、周の王の力が弱まり、大きな国が小さな国を次々と飲みこんでいく時代でした。北の晋は、献公(けんこう)の時代に、まわりの小さな国をつぎつぎにほろぼして大きくなりました。

話の流れ(年表)前658年(僖公二年)晋が璧と馬を贈って虞の道を借り、虞の軍とともに虢の下陽を落とす前655年(僖公五年)晋がふたたび道を借りに来る。宮之奇が「唇亡びて歯寒し」といさめるが、虞公は聞かない同じ年の冬(十二月)晋が虢をほろぼし、帰り道に虞に泊まって、虞もほろぼす
晋は、2度も虞の道を借りました。1度目で虢の下陽を落とし、2度目で虢と虞を両方ほろぼしています

「一度目」から始まっていた

実は、晋が虞の道を借りたのは2度目でした。僖公二年(紀元前658年)、荀息は献公に、垂棘の璧と屈産の馬を虞に贈って道を借りるよう進言します。献公が「あれはわたしの宝だ」としぶると、荀息は「虞から道を借りられれば、宝を外の倉に預けておくようなものです」と答えました。つまり、あとで虞をほろぼせば宝はもどってくる、という計算だったのです。このときも宮之奇はいさめましたが、聞き入れられませんでした。

3年後、晋はもう一度道を借りに来ます。宮之奇の「唇亡びて歯寒し」は、この2度目のときの言葉です。虞公は結局道を貸し、晋は虢の都・上陽を囲んで、冬の十二月に虢をほろぼしました。虢の君主は周の都へにげました。そして晋の軍は帰り道に虞に泊まり、そのまま虞を襲ってほろぼし、虞公を捕らえました。

本によって少しずつちがう

同じ出来事は、ほかの本にも書かれています。

  • 『春秋穀梁伝』僖公二年:宮之奇の言葉は「唇亡則歯寒(唇亡ぶれば則ち歯寒し)」の形です。宮之奇は妻子を連れて曹(そう)の国へにげたとされ、最後に荀息が馬を引き璧を持って「璧は則ち猶ほ是くのごときなり、而して馬の歯加はり長ぜり」(璧は元のまま、馬は年をとった)と言う場面があります。
  • 『韓非子』十過:宮之奇は「虞の虢有るは、車の輔有るがごとし」(虞にとっての虢は、車にとっての添え木のようなもの)といさめます。馬の年のことを言うのは、ここでは献公です。同じ十過には、別の話(趙の張孟談が韓・魏の君に語る場面)にも「臣聞く、唇亡びて歯寒し」という言葉が出てきます。

どの本でも、「宝物に目がくらんで、自分を守ってくれていた国を見捨てた」という話の中心は同じです。兵法の「三十六計」には、この話から名づけられた「仮道伐虢(かどうばっかく)」(道を借りて虢を討つ)という計もあります。また「完璧(璧を完うして趙に帰る)」の話と同じように、ここでも璧(へき)という玉の宝物が、国と国のかけひきに使われています。

「輔車相依る」の「輔車」とは

宮之奇が引いたことわざの前半「輔車相依る(ほしゃあいよる)」は、「輔」と「車」が互いに頼り合う、という意味です。晋の杜預(とよ)の注では、輔は「ほお」、車は「歯ぐき(下あごの骨)」とされ、顔の中で支え合う部分と考えられています。いっぽう『韓非子』十過のように、輔を「車の添え木」、車を「車の本体」と読む説もあります。どちらの説でも「離れられない関係」という意味は変わりません。ここから生まれた四字熟語が「唇歯輔車(しんしほしゃ)の意味」です。

「輔車(ほしゃ)」の2つの説説1:顔の部分輔=ほお(ほお骨)車=歯ぐき・あごの骨説2:車の部分輔=車の添え木車=車の本体(『韓非子』)どちらの説でも「離れられない、支え合う関係」
「輔車」には、顔の部分とする説と、車の部分とする説があります(諸説あり)

「唇亡びて歯寒し」の使い方と例文・似た言葉

「唇亡びて歯寒し」は、一方がほろびる(だめになる)と、もう一方も危うくなる関係を言うときに使います。国どうし、会社どうし、地域どうし、チームの仲間どうしなど、利害でつながった2つのものに使うのがふつうです。文の中では「まさに唇亡びて歯寒しだ」「唇亡びて歯寒しの関係にある」のように使います。

  • ○小さな書店が次々と閉店し、本を届ける問屋の経営も苦しくなった。唇亡びて歯寒しである。
  • ○農家が減れば、地元の農機具店も立ちゆかない。両者は唇亡びて歯寒しの関係だ。
  • ○となりの国の経済が崩れると、輸出にたよるこの国も打撃を受ける。唇亡びて歯寒しとはこのことだ。
  • ○同じ商店街の店どうしは、ライバルでもあるが唇亡びて歯寒しの間がらでもある。
  • ×冬になって冷たい水を飲んだら、唇亡びて歯寒しだった。(本当に歯がしみる、という意味では使わない)
  • ×ライバル校が試合で負けたので、「唇亡びて歯寒しだ」と喜んだ。(相手の不幸を喜ぶ言葉ではない)
唇亡びて歯寒し似た言葉唇歯輔車輔車相依る一蓮托生持ちつ持たれつ運命共同体反対の考え方対岸の火事高みの見物他人事
似た言葉と、反対の考え方を表す言葉。「対岸の火事」は、まさに虞公の考え方です

似た言葉

  • 唇歯輔車(しんしほしゃ):唇と歯、輔と車のように、互いに助け合う密接な関係。この話から生まれた四字熟語です。
  • 輔車相依る(ほしゃあいよる):宮之奇が引いたことわざの前半。互いに頼り合って成り立つこと。
  • 一蓮托生(いちれんたくしょう):結果がどうなろうと、行動や運命を共にすること。もとは仏教の言葉です。
  • 持ちつ持たれつ・運命共同体:互いに助け合う関係、運命を共にする集まり。ふだんの言い方です。

反対の考え方を表す言葉

  • 対岸の火事(たいがんのかじ):自分には関係のない、よその災難。虞公は、虢の危機を「対岸の火事」と見てしまいました。
  • 高みの見物:自分は安全な所にいて、人の争いをながめていること。

英語では、文字どおりに訳して "When the lips are gone, the teeth feel the cold." のように説明されることがあります。意味の近い言い方には、"United we stand, divided we fall."(団結すれば立ち、分かれれば倒れる)があります。

受験勉強への生かし方

受験勉強の科目や分野も、実は「唇と歯」の関係でつながっています。たとえば英語では、単語力がくずれると、長文読解も英作文もリスニングも一度に苦しくなります。数学の計算力が弱いと、物理や化学の問題でもつまずきます。漢文の句法があやふやだと、古文の助動詞の意味まで混乱することがあります。「この単元は配点が小さいから、放っておいても大丈夫」と思うのは、虞公と同じ考え方かもしれません。

苦手な分野を1つ見捨てると、それに支えられていた得意な分野まで寒くなる――。教科のバランスをとった計画の立て方は共通テストの勉強法(高1・高2・高3の計画と教科のバランス)で、教科ごとの勉強の進め方は大学受験の勉強法まとめ(目的別の記事一覧)で紹介しています。友達どうしで教え合う関係も、片方が崩れるともう片方も苦しくなる「唇と歯」です。勉強仲間との上手なつきあい方は受験の格言「予備校や塾で友達を作るな」の意味と勉強仲間とのつきあい方も参考にしてください。

「唇亡びて歯寒し」のよくあるまちがい

  • 「歯亡びて唇寒し」と逆にする:守っているのは唇、守られているのは歯です。「唇が亡びて、歯が寒い」の順番で覚えましょう。
  • 「物言えば唇寒し秋の風」と混ぜる:松尾芭蕉の句「物言へば唇寒し秋の風」は、「よけいなことを言うと、あとで後悔する」という意味で、まったく別の言葉です。「唇寒し」の部分が似ているので、意味の取りちがえに注意しましょう。
  • 宮之奇が作った言葉だと思う:原文は「諺に所謂」と言っていて、宮之奇の時代にすでにことわざとして知られていました。
  • 「仲がよい」だけの意味で使う:この言葉は「片方がほろびると、もう片方も危うい」という、危機への警告です。ただ仲がよいことを言うなら「水魚の交わり」「管鮑の交わり(管仲と鮑叔)」などを使います。
  • 「唇」の字を「辰」や「振」と書く:「唇」は「辰」の下に「口」です。「唇」の読み方・書き順・部首で書き順を確かめましょう。
うかるくん

うかるくん

「物言えば唇寒し」と、どっちがどっちか分からなくなりそうです…。

ミスターT先生

ミスターT先生

「唇亡びて歯寒し」は国の話、「物言えば唇寒し」は口の話、と覚えよう。前者は「唇がなくなって歯が寒い」、後者は「しゃべったあと唇が寒い」。寒いのがどこかで見分けられるよ。

入試ではこう出る

「唇亡びて歯寒し」は、高校受験・大学受験で出てくる故事成語です。

  • 高校受験:故事成語の意味を選ぶ問題、「似た意味の四字熟語(唇歯輔車)」を選ぶ問題。漢文の資料として「唇亡歯寒」の書き下しを問われることもあります。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:『左伝』や『十八史略』などの春秋時代の文章で、宮之奇の諫めの場面が出ることがあります。「豈害我哉」の反語、「其虞虢之謂也」の訳、「虢亡、虞必従之」の意味(なぜ虞もほろびるのか)がよく問われます。評論文では、国際関係や地域の経済の「相互依存」を説明する例えとして出てくることもあります。
  • 中学受験:ことわざ・故事成語の問題集にのっていることはありますが、出る語としては多くありません。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「なぜ虞もほろびるのか」を説明する問題は、「虢は虞の外側の守りなので、虢がほろびると虞は大国の晋に直接さらされるから」と、「守り」の役目まで書くのがコツですね!

練習問題

やさしい

  1. 「唇亡びて歯寒し」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 口は災いのもとであること イ 助け合う関係の一方がほろびると、もう一方も危うくなること ウ 寒い日は口を閉じているほうがよいこと エ 仲のよい友達どうしのこと
    答えと解説を見るイ。アは「物言えば唇寒し」に近い意味です。エは「仲がよい」だけで、「片方がほろびると危うい」という中心の意味が入っていません。
  2. 「唇亡びて歯寒し」とほぼ同じ意味の四字熟語を選びましょう。
    ア 唇歯輔車 イ 四面楚歌 ウ 呉越同舟 エ 五里霧中
    答えと解説を見るア(しんしほしゃ)。唇と歯、輔と車のように、互いに助け合う関係を言います。

ふつう

  1. 「虢亡、虞必従之。」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る虢亡ぶれば、虞必ず之に従はん。訳:虢がほろびたら、虞も必ずあとに続いて(ほろびて)しまうだろう。
  2. 虞公が宮之奇の諫めを聞き入れなかった理由を、原文の言葉をもとに説明しましょう。
    答えと解説を見る「晋は吾が宗なり(晋はわたしの一族だ)」と考え、同じ一族の晋が自分を害するはずがないと信じていたから。(さらに、神をていねいにまつっているから守られる、とも考えていました。)

むずかしい

  1. 「豈害我哉」の句法の名前を答え、現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る反語。訳:どうしてわたしを害することがあろうか、いや、害するはずがない。
  2. 宮之奇が虢を「虞之表(虞の表)」と言い、「唇」にたとえたのはなぜですか。地理の関係をふまえて説明しましょう。
    答えと解説を見る虢は、北の大国・晋と虞の間で晋の進出をさえぎる位置にあり、虞を外側から守る役目をしていたから。虢がなくなれば、虞は晋に直接さらされてしまう、ということを、歯を守る唇にたとえたのです。

「唇亡びて歯寒し」とあわせて覚えたい関連ページ

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よくある質問

唇亡びて歯寒しとはどういう意味ですか?

唇亡びて歯寒しとは、互いに助け合っている関係の一方がほろびると、もう一方も危うくなるという意味です。唇がなくなると歯が冷たい風にさらされることから、守ってくれていた相手を失う危険をたとえています。

唇亡びて歯寒しの読み方は何ですか?

「くちびるほろびてはさむし」と読みます。「唇滅びて歯寒し」と書くこともあり、もとの漢文では「唇亡歯寒(原文の字は脣亡齒寒)」です。

唇亡びて歯寒しの由来・出典は何ですか?

出典は『春秋左氏伝』僖公五年です。晋が虢を攻めるために虞の道を借りようとしたとき、虞の家来の宮之奇が「虢がほろびれば虞も続く」といさめた言葉の中に、ことわざとして出てきます。虞公は聞き入れず、虢も虞も晋にほろぼされました。

唇亡びて歯寒しの書き下し文はどうなりますか?

「諺に所謂『輔車相依り、唇亡びて歯寒し』とは、其れ虞虢の謂ひなり」です。「ことわざに言う『頬骨と歯ぐきは頼り合い、唇がなくなると歯が寒い』とは、まさに虞と虢のことだ」という意味になります。

唇亡びて歯寒しの例文を教えてください。

「取引先がつぶれたら、部品を納めるわが社も危ない。まさに唇亡びて歯寒しだ」のように使います。会社・地域・国・チームなど、利害でつながった2つのものの関係に使うのがふつうです。

唇亡びて歯寒しはビジネスでも使えますか?

はい、ビジネスでもよく使われます。取引先や同じ業界の会社、地域の店どうしなど、相手がだめになると自分も困る関係を説明するときにぴったりです。相手の不幸を喜ぶ意味では使いません。

唇亡びて歯寒しに似た言葉・反対の言葉は何ですか?

似た言葉は唇歯輔車・輔車相依る・一蓮托生・持ちつ持たれつなどです。反対の考え方を表す言葉には、自分には関係ないと考える「対岸の火事」「高みの見物」があります。

唇亡びて歯寒しは英語で何と言いますか?

決まった英語のことわざはありませんが、"When the lips are gone, the teeth feel the cold." のように訳して説明します。意味の近い言い方に "United we stand, divided we fall." があります。

「輔車相依る」の輔車とは何ですか?

晋の杜預の注では、輔は「ほお」、車は「歯ぐき(下あごの骨)」とされます。『韓非子』のように、輔を車の添え木、車を車体とする説もあり、どちらでも「離れられない関係」という意味になります。

唇亡びて歯寒しは入試でどう出ますか?

高校受験では意味や似た四字熟語(唇歯輔車)を選ぶ問題が中心です。大学受験では宮之奇の諫めの漢文が出て、「豈害我哉」の反語や「虢がほろびると虞もほろびる理由」がよく問われます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 原文:『春秋左氏伝』僖公二年・五年(維基文庫の本文で確認)
  • 『春秋穀梁伝』僖公二年・『韓非子』十過(維基文庫の本文で確認)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(教科書で多い読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦