
この問題の答え
- この問題はフェルマーの最終定理(フェルマーの大定理)です。「3以上の n で xⁿ+yⁿ=zⁿ となる自然数 x, y, z の組はない」ことを示せ、という問題で、式は中学生でも読めます
- n=2 なら 3²+4²=5² のような答え(ピタゴラス数)が無数にあるのに、n が3以上だと1つもありません。17世紀に書かれてから約360年後、1995年にアンドリュー・ワイルズの証明が出版されて解決しました
- 「解けたら東大」は難しさのたとえです。東大の入試にこの問題が出たわけではありません

解けるかな?
解けたら東大!?シンプルだけど難しい数学の問題
2014年にこの記事で出したクイズは、次の1問でした。
3以上の自然数nについて
x^n + y^n = z^n
となる0でない自然数(x,y,z)の組は存在しないことを証明せよ
「x^n」は「x の n 乗」のことで、ふつうは xⁿ と書きます。問題文はたった3行で、使っている記号も中学校で習うものばかりです。それなのに、この問題は世界中の数学者が350年以上も挑んで解けなかった、数学の歴史でいちばん有名な難問のひとつです。名前をフェルマーの最終定理(フェルマーの大定理、証明される前はフェルマー予想)といいます。証明されたあとは「ワイルズの定理」「フェルマー・ワイルズの定理」と呼ばれることもあります。
題の「解けたら東大!?」は、「これが解けたら東大どころか、数学の歴史に名前が残る」という意味の、ちょっとしたたとえです。東京大学(東大)の入試にこの問題が出たわけではありません。この記事では、問題の意味を中学生にも分かるようにほどいて、「n=2 なら簡単なのに、なぜ n=3 からとたんに難しくなるのか」と、解決までの歴史を図で見ていきます。定理を短くまとめた記事と、入試で歯が立たない問題が出たときの部分点の取り方は、続きの記事「フェルマーの最終定理とは?(入試で部分点を取る方法)」に書いています。
フェルマーの最終定理の問題の意味をわかりやすく
「自然数」と「n乗」
自然数は 1, 2, 3, 4 … と数えるときの数です(この問題では0をふくめません)。分数や小数、マイナスの数は入りません。くわしくは数学用語辞典の「自然数と整数」を見てください。
n乗は同じ数を n 回かけることです。2³=2×2×2=8、3⁴=3×3×3×3=81 です。中学1年で「累乗」として習います。
「組が存在しない」ことを証明する難しさ
この問題は「答えを1つ見つけなさい」ではなく、「答えが1つもないことを証明しなさい」です。ここが難しいところです。
- 「ある」ことを示すなら、例を1つ見せれば終わりです。
- 「ない」ことを示すには、無限にある自然数の組を全部調べたのと同じだけの理由が必要です。
コンピューターで100万までの数を全部試して1つも見つからなくても、100万1以上のどこかにあるかもしれません。だから、試すだけでは証明になりません。逆に、1つでも答え(反例)が見つかれば、この主張はまちがいだったことになります。反例については「反例とは」、「〜ならば…」の形の文の考え方は「命題とは」にまとめています。
n=2 なら解ける:ピタゴラス数と三平方の定理
まず、条件の「3以上」を外して、n が小さいときを調べてみましょう。小さい場合を調べるのは、入試の難問でも使える大事な考え方です。
n=1 のとき
x+y=z です。1+2=3、2+5=7 …… と、答えはいくらでもあります。簡単すぎて問題になりません。
n=2 のとき:3²+4²=5²
x²+y²=z² です。中学3年で習う三平方の定理(ピタゴラスの定理)の式と同じ形です。直角三角形の直角をはさむ2辺を x, y、いちばん長い辺(斜辺)を z とすると、x²+y²=z² が成り立ちます。
9+16=25 なので、(x, y, z)=(3, 4, 5) は答えです。このように x²+y²=z² を満たす自然数の組をピタゴラス数(ピタゴラスの三つ組)といいます。三平方の定理の証明や使い方は、公式辞典の「三平方の定理」と、用語辞典の「三平方の定理(用語)」でくわしく説明しています。
ピタゴラス数は大昔から知られていて、古代メソポタミア(バビロニア)の粘土板「プリンプトン322」には、ピタゴラス数にあたる数が並んでいると考えられています。ピタゴラスよりずっと前のことです。
ピタゴラス数の作り方
ピタゴラス数は無数にあります。しかも、作り方の「公式」があります。m と n を、m の方が大きい自然数とすると、
(m²−n², 2mn, m²+n²)
は、いつもピタゴラス数になります。(m²−n²)²+(2mn)² を展開すると m⁴+2m²n²+n⁴=(m²+n²)² になるからです。高校の数学Ⅰの「式の展開」で確かめられます。
もっと簡単な作り方もあります。3以上の奇数 a を1つ選び、a² から1を引いて2でわった数と、a² に1をたして2でわった数を並べます。
| 奇数 a | (a²−1)÷2 | (a²+1)÷2 | 確かめ |
|---|---|---|---|
| 3 | 4 | 5 | 9+16=25 |
| 5 | 12 | 13 | 25+144=169 |
| 7 | 24 | 25 | 49+576=625 |
| 9 | 40 | 41 | 81+1600=1681 |
| 11 | 60 | 61 | 121+3600=3721 |
ほかに、3倍した (9, 12, 15) や10倍した (30, 40, 50) もピタゴラス数です。こうした「倍にしただけのもの」を除いて、3つの数が1以外の公約数を持たない組(原始ピタゴラス数)だけを数えても、いちばん大きい数が100未満のものだけで16組あります。
うかるくん
n=2 だとこんなにたくさん答えがあるのに、n=3 になると本当に1つもないんですか? さがせば見つかりそうな気がします。
合格先生
そう思うのが自然だ。でも、どれだけ大きい数まで調べても見つからない。しかも「見つからない」だけでは証明にならない。「絶対にない」理由を示すのに、人類は約360年かかったんだ。
うかるくん
360年! 江戸時代の初めから平成までですね…。
n=3 以上は解けない? 惜しい例を見てみよう
n=3:x³+y³=z³
n=3 は「立方体(さいころの形)の体積」の話になります。2つの立方体の体積をたして、ぴったり1つの立方体にできるか、という問題です。実際に計算すると、あと1だけずれる例が見つかります。
- 6³+8³=216+512=728。9³=729 にあと1たりません。
- 9³+10³=729+1000=1729。12³=1728 より1多くなります。
1729 は、1³+12³ と 9³+10³ の2通りで「2つの立方数の和」として書ける最小の数です。インドの数学者ラマヌジャンが、見舞いに来たイギリスの数学者ハーディにその性質をすぐ答えたという話で有名で、「タクシー数」とも呼ばれます。でも、どれだけ「惜しい」組があっても、ぴったりになる組はありません。
ちなみに、立方数を3つたすなら、3³+4³+5³=6³(27+64+125=216)のように、ぴったりになる例があります。この不思議な式は「プラトン数と216」で紹介しています。2つではダメで、3つならできる。数の世界は気まぐれです。
大きい n は小さい n にまかせられる
n は 3, 4, 5, 6 … と無限にありますが、実は全部を1つずつ調べる必要はありません。たとえば n=6 は、x⁶=(x²)³ と書きかえられます。もし x⁶+y⁶=z⁶ に答えがあれば、X=x², Y=y², Z=z² とおくと X³+Y³=Z³ の答えができてしまいます。だから「n=3 に答えがない」ことが言えれば、n=6, 9, 12 … にも答えはありません。
この考え方をつきつめると、n=4 と、3以上の素数(3, 5, 7, 11, 13 …)について示せば十分だと分かります。3以上の自然数はどれも、4 か奇数の素数のどれかでわり切れるからです(4でわり切れない偶数は2×奇数で、その奇数は奇数の素数でわり切れます。6=2×3 なら3)。素数の性質は用語辞典の「素数とは」へ。それでも素数は無限にあるので、これだけでは終わりません。ここから先が、本当の難しさでした。
フェルマーの最終定理の歴史:約360年の挑戦
フェルマーの「余白」の書き込み(1637年ごろ)
ピエール・ド・フェルマーは17世紀フランスの法律家で、仕事のかたわら数学を研究しました。1637年ごろ、古代ギリシャの数学者ディオファントスの本『算術(アリスメティカ)』の余白に、この定理を書き、「私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」と書き添えたと伝えられています。フェルマーが1665年に亡くなったあと、息子が1670年に書き込みつきの本を出版して、この問題が世に知られました。
フェルマーが本当に一般の n の証明を持っていたのかは分かりません。今の数学者の多くは「持っていなかったのではないか」と考えています(諸説あります)。フェルマーが書き残した主張のうち、最後まで証明されずに残ったので「最終定理」と呼ばれるようになりました。
1つずつの n の証明(17〜19世紀)
| n | 証明した人 | 時代 |
|---|---|---|
| 4 | フェルマー自身(無限降下法という方法) | 17世紀 |
| 3 | オイラー(スイス出身) | 18世紀 |
| 5 | ディリクレとルジャンドル | 1825年ごろ |
| 7 | ラメ | 1839年 |
19世紀半ばには、ドイツのクンマーが「正則素数」と呼ばれる種類の素数について、まとめて証明しました。けれども、すべての n をまとめて示す方法は見つかりませんでした。
日本人の数学者が作った「橋」:谷山・志村予想
解決のカギは、意外にも日本から生まれました。1955年、日光で開かれた国際会議で、谷山豊(たにやま・ゆたか)が出した問題がもとになり、のちに志村五郎(しむら・ごろう)が形をととのえた予想が谷山・志村予想です。「楕円曲線」と「モジュラー形式」という、まったく別に見える2つの数学の分野が、実は裏でつながっている、という予想でした。
1984年ごろ、ドイツのフライが「フェルマーの最終定理に答えがあるなら、とても変わった楕円曲線が作れる」と気づきます。1986年には、アメリカのリベットが「その変わった曲線は、谷山・志村予想に反する」ことを証明しました。つまり、谷山・志村予想(の必要な部分)を証明すれば、フェルマーの最終定理も証明できることになったのです。なお1988年には、日本の数学者の宮岡洋一が証明に近づいたと報じられましたが、不備が見つかり、完全な証明にはなりませんでした。
ワイルズの証明(1993〜1995年)
イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズ(1953年生まれ)は、10歳のときに図書館の本でこの問題を知り、いつか解きたいと思っていたといいます。大人になってから何年もほぼ一人で研究を続け、1993年6月、ケンブリッジで証明を発表しました。
ところが、確かめる途中で証明に穴が見つかります。ワイルズはかつての教え子リチャード・テイラーの協力も得て、1994年9月に穴をうめる方法にたどりつき、修正した証明は1995年に数学の専門誌『アナルズ・オブ・マセマティクス』に出版されました。フェルマーの書き込みから約360年後のことです。ワイルズは2016年に、数学の大きな賞であるアーベル賞を受けています。
図7のように、ワイルズの証明は「もし答えがあったら」と仮定して、矛盾(つじつまが合わないこと)を導く形です。これを背理法といい、高校の数学Ⅰで「√2 が無理数であることの証明」などで習います。もちろん中身は大学の数学のさらに先の内容で、論文は100ページをこえます。

合格先生
問題は中学生でも読めるのに、証明には数学のいろいろな分野が必要だった。やさしく見える問題ほど深いことがある。これが数学のおもしろさだ。
入試に役立つ考え方:難問の前でやること
フェルマーの最終定理そのものは、高校生が入試で証明できる問題ではありません。でも、この問題をめぐる考え方は、東大や京都大学(京大)の2次試験の数学の難問にもそのまま使えます。
- 小さい場合を調べる:n=1, 2 を調べて、n=3 との違いに気づく。入試の整数問題でも、まず小さい数を代入してみるのが第一歩です。
- 書きかえて減らす:「n=6 は n=3 にまかせられる」のように、調べる場合を減らす。場合分けを整理する力です。
- 「ない」を示すなら背理法:「あると仮定すると矛盾する」形で証明する。整数問題の定番です。
- あきらめずに方針を書く:解き切れなくても、考えた道すじは答案に書く。部分点のくわしい話は「フェルマーの最終定理とは?」と「京大数学の解き方・時間配分・答案の書き方」へ。
整数の性質は、大学入試の数学でよく出る分野です。京大で整数の問題がどれくらい出ているかは「京大 理系数学の出題分析」「京大 文系数学の出題分析」で年度ごとに見られます。東大の入試の全体像(科類・配点・日程)は「東大合格大作戦」にまとめました。数学の勉強の進め方は「青チャートと1対1」も参考にしてください。
サクラちゃん
大学の先の数学が必要なら、私が考えてもムダですよね…。
合格先生
そんなことはない。n=2 と n=3 をくらべたり、惜しい例をさがしたりするのは、立派な数学の練習だ。ワイルズも10歳でこの問題にあこがれたところから始まったんだよ。
サクラちゃん
6³+8³ があと1たりないの、ちょっと感動しました。ほかの惜しい例もさがしてみます!
もっと知りたい人へ:おすすめの本
解決までの人間ドラマを読むなら、サイモン・シン『フェルマーの最終定理』(青木薫 訳)がおすすめです。ピタゴラスからワイルズまでの流れが、数式が苦手な人にも読める物語になっています。

うかるくん
「解けたら東大!?」どころか、解けたら歴史に残る問題だったんだ! でも 3²+4²=5² から始まる話なら、ぼくにも分かる!
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数学の公式は「算数・数学公式辞典」、言葉の意味は「数学用語辞典」、全体の地図は「数学まとめ」から探せます。この記事に出てくる公式では、「三平方の定理」と「円の面積と円周の長さの公式」もどうぞ。数学の質問は「受験の質問・相談」で受け付けています。
よくある質問
「解けたら東大」の問題は何という定理ですか?
フェルマーの最終定理(フェルマーの大定理)です。3以上の自然数nについて、xⁿ+yⁿ=zⁿを満たす自然数x, y, zの組は存在しない、という定理です。
この問題は東大の入試に出たのですか?
出ていません。「解けたら東大」は難しさのたとえです。1995年にワイルズの証明が出版されるまで、約360年だれも証明できませんでした。
n=2のときに答えはありますか?
あります。3²+4²=5²や5²+12²=13²のように、x²+y²=z²を満たす自然数の組(ピタゴラス数)は無数にあります。
ピタゴラス数の作り方は?
m>nの自然数m, nについて、(m²−n², 2mn, m²+n²)はピタゴラス数になります。m=2, n=1なら(3, 4, 5)です。
フェルマーの最終定理を証明したのはだれですか?
イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズです。1993年に発表し、穴を直した証明が1995年に出版されました。谷山・志村予想の研究が土台になっています。
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出典・参考
- Wikipedia(英語版)「Fermat's Last Theorem」「Andrew Wiles」、(日本語版)「フェルマーの最終定理」(書き込みの年・各 n の証明・谷山・志村予想・フライとリベット・ワイルズの発表と出版・宮岡洋一の件・アーベル賞)
- サイモン・シン『フェルマーの最終定理』(青木薫 訳、新潮社)
- ピタゴラス数・n=3 の例(728・729・1729・1728)・原始ピタゴラス数の個数は検算済みです
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦











