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大学受験
恒等式とは
文字にどんな数を入れても成り立つ等式です。たとえば (x+1)2=x2+2x+1 は、x がどんな数でも成り立ちます。特定の値のときだけ成り立つ方程式とは区別します。
読み方:こうとうしき/英語:identity/習う学年:数学Ⅱ(式と証明)
![うかるくん]()
うかるくん
恒等式と方程式って、どっちも「=」の式ですよね。何がちがうんですか?
![合格先生]()
合格先生
方程式は特定の値のときだけ成り立つ。恒等式はどんな値でも成り立つ。(x+1)2=x2+2x+1 は、x に何を入れても両辺が等しいね。
この用語のポイント
- 恒等式 = 文字にどんな数を入れても成り立つ等式
- 方程式は特定の値のときだけ成り立つ。ここが一番のちがい
- 恒等式なら同じ次数の係数が等しい(係数比較法)
やさしく言うと
恒等式は、文字にどんな数を入れても成り立つ等式です。「恒」は「いつも」という意味で、「いつも等しい式」という名前です。身近な例で考えてみましょう。
- ダースと本数:「x ダースのえんぴつは 12x 本」は、x が 1 でも 5 でもいつも正しい言いかえです(恒等式のなかま)。一方、「12x=36」は x=3 のときだけ正しい式で、これは方程式です。
- 計算のくふう:99×101=(100−1)(100+1)=1002−1=9999 のように計算できるのは、(a−b)(a+b)=a2−b2 がどんな数でも成り立つからです。
- 面積の分け方:たて a、横 b+c の長方形は、2 つの長方形に分けると ab+ac。長さを何にしても a(b+c)=ab+ac です。
たとえば (x+1)2=x2+2x+1 は、x=0 なら 1=1、x=1 なら 4=4、x=−3 なら 4=4 と、どの数を入れても成り立ちます。左辺と右辺は、同じ式を別の形で書いただけだからです。
これに対して方程式は、特定の値のときだけ成り立つ等式です。グラフで見ると、ちがいがよくわかります。
方程式は両辺のグラフが交わる点だけで成り立ち、恒等式はグラフがぴったり重なるまとめると、恒等式は「式の言いかえ」、方程式は「条件」です。
恒等式の例と、恒等式ではないもの
○ 恒等式
- (x+1)2=x2+2x+1(展開の公式)
- (a+b)(a−b)=a2−b2(和と差の積)
- 2(x+3)=2x+6(分配法則)
- x2−5x+6=(x−2)(x−3)(因数分解)
- x(x+1)1=x1−x+11(分母が 0 にならない x すべてで成り立つ)
× 恒等式ではないもの
- 2x+1=7(x=3 のときだけ成り立つ。方程式)
- x2=4(x=±2 のときだけ)
- (x+1)2=x2+1(x=0 のときだけ成り立つ。方程式)
- x+1=x+2(どの x でも成り立たない。解のない方程式)
- x2≧0(どんな x でも正しいが、等式ではなく不等式)
展開の公式(乗法公式)や因数分解の公式は、どれも恒等式です。式の変形で「=」を使えるのは、変形の前と後が恒等式で結ばれているからです。恒等式という言葉は、高校の数学Ⅱ(式と証明)で習います。
図で見る
x にいろいろな数を入れて、両辺の値を表にしてみます。(x+1)2 と x2+2x+1 は全部の列で同じ値ですが、(x+1)2 と x2+1 が同じになるのは x=0 の列だけです。
恒等式は全部の値で等しく、方程式は特定の値(○)だけで等しい![うかるくん]()
うかるくん
表で 5 個確かめて全部同じなら、恒等式って言っていいんですか?
![合格先生]()
合格先生
いい質問だ。表はあくまで「確かめ」で、証明には式を変形して同じ形になることを示すんだ。ただし両辺が 2 次以下の式なら、ちがう 3 つの値で等しければ恒等式だと言える、という便利な性質もあるよ。
恒等式は、図形の面積でも見ることができます。1 辺 a+b の正方形を 4 つに分けると、どんな長さでも (a+b)2=a2+2ab+b2 になります。
正方形を4つに分けると、(a+b)²=a²+2ab+b² がいつも成り立つ恒等式の使い方:係数比較法と数値代入法
「どんな x でも成り立つ」ことを使うと、式の中のわからない数(a, b など)を決められます。
左辺を展開して、右辺と同じ次数の係数どうしを比べる- 係数比較法:両辺を整理して、同じ次数の項の係数が等しいとおきます。上の図では a+1=5、a=b から a=4、b=4 です。確かめると (x+1)(x+4)=x2+5x+4 で、正しく成り立ちます。
- 数値代入法:x に計算しやすい数を入れて式を作ります。x=−1 を入れると 0=1−5+b で b=4 です。この方法で出した値は、最後に本当に恒等式になるか確かめます。
係数比較法が使えるのは、「両辺が整式で恒等式なら、同じ次数の係数はすべて等しい」という性質があるからです。数値代入法は、かっこの中が 0 になる値を選ぶと計算が楽になります。
![ひらめいたうかるくん]()
うかるくん
「どんな x でも成り立つ」から、好きな数を入れていいし、係数どうしを比べてもいいんだ!
分数式の恒等式と記号
x−1x2−1=x+1 は、x=1 では左辺の分母が 0 になって意味がありません。このように分数式では、式が意味をもつ範囲のすべての値で成り立つ等式を恒等式といいます。恒等式であることをはっきり示すために、「=」のかわりに「≡」を使う本もあります。
分数式の恒等式は、部分分数分解(1 つの分数をいくつかの分数の和に分けること)で使います。x(x+1)1=x1−x+11 は、数列の和の計算でよく出てきます。
テスト・入試ではこう出る
恒等式は数学Ⅱ(式と証明)で習い、係数を決める問題がよく出ます。また、「k の値にかかわらず」「どんな k に対しても」という問題文は、k についての恒等式を表す合図です。図形と方程式で「定点を通る直線」を求める問題などで使います。
例題1(係数を決める)
2x2−3x+1=a(x−1)2+b(x−1)+c が x についての恒等式となるように、定数 a,b,c の値を求めなさい。
- 右辺を展開・整理する:a(x2−2x+1)+b(x−1)+c=ax2+(−2a+b)x+(a−b+c)
- 左辺 2x2−3x+1 と係数を比べる:x2 の係数 a=2、x の係数 −2a+b=−3、定数項 a−b+c=1。
- 順に解くと、a=2、b=−3+4=1、c=1−2+1=0。
- (たしかめ)2(x−1)2+(x−1)=2x2−4x+2+x−1=2x2−3x+1。
答え a=2, b=1, c=0
例題2(k の値にかかわらず)
直線 (k+1)x+(k−1)y−2k=0 は、k の値にかかわらず定点を通ります。その点の座標を求めなさい。
- k について整理する:(k+1)x+(k−1)y−2k=k(x+y−2)+(x−y)。
- これがどんな k でも 0になる(k についての恒等式)ためには、k の係数も定数項も 0:x+y−2=0、x−y=0。
- 解くと x=1、y=1。
- (たしかめ)(k+1)+(k−1)−2k=0 で、どんな k でも成り立つ。
答え 点 (1, 1)
まちがえやすい点
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
1つの値で成り立っただけでは恒等式とはいえないよ! すべての値で成り立つかを見よう。
- 1つの値で成り立っただけで恒等式とする:(x+1)2=x2+1 は x=0 では成り立ちますが、x=1 では 4=2 です。恒等式は「すべての値」で成り立つ必要があります。
- 整理しないで係数を比べる:(x+1)(x+a) は先に x2+(a+1)x+a と展開・整理してから比べます。
- 数値代入法で確かめを忘れる:代入して出した値は「恒等式であるための必要条件」です。その値で本当に恒等式になるかを確かめます。
- 恒等式を方程式のように解いて「解なし」とする:2(x+3)=2x+6 を解こうとすると 0=0 になります。これは「解がない」のではなく、すべての x で成り立つということです。
- 分母が 0 になる値を代入する:分数式の恒等式で数値代入法を使うとき、分母が 0 になる x は入れられません。
ことばの由来
「恒」は、いつも変わらないという意味の漢字です(恒星・恒久・恒例など)。恒等式は「いつも等しい式」という意味です。英語では identity(アイデンティティ、「同一であること」)といいます。左辺と右辺が、見た目はちがっても同じものであることを表しています。
ミニ問題
問題1 次のうち、x についての恒等式はどれですか。(1) (x−2)2=x2−4x+4 (2) (x−2)2=x2−4 (3) x(x+1)−x2=x
答えと解き方を見る
(1) と (3) です。(1) は展開の公式そのもの。(3) は左辺を整理すると x2+x−x2=x で、右辺と同じ式です。(2) は x=2 のときだけ成り立つ方程式です(x=0 を入れると 4=−4)。
問題2 ax2+bx+3=2x2−5x+c が x についての恒等式になるように、a, b, c を求めましょう。
答えと解き方を見る
a=2, b=−5, c=3 です。両辺はすでに整理されているので、x2 の係数、x の係数、定数項をそれぞれ比べるだけです。
問題3 x2+1=a(x+1)2+b(x+1)+c が x についての恒等式になるように、a, b, c を求めましょう。
答えと解き方を見る
a=1, b=−2, c=2 です。
- 右辺を展開:ax2+(2a+b)x+(a+b+c)。
- 係数比較:a=1、2a+b=0、a+b+c=1。
- b=−2、c=1−1+2=2。
数値代入法なら、x=−1 を入れると 2=c がすぐ出ます。最後に (x+1)2−2(x+1)+2=x2+1 を確かめましょう。
関連する公式・用語
公式辞典で、くわしい証明と例題を見る
あわせて覚えたい用語
よくある質問
恒等式とは何ですか?
文字にどんな数を入れても成り立つ等式です。たとえば (x+1)²=x²+2x+1 は、xがどんな数でも成り立つので恒等式です。
恒等式と方程式のちがいは何ですか?
方程式は、文字が特定の値のときだけ成り立つ等式です。恒等式は、どんな値でも成り立つ等式です。2x+1=7は方程式、2(x+3)=2x+6は恒等式です。
係数比較法とは何ですか?
恒等式では両辺の同じ次数の項の係数が等しくなることを使って、式の中のわからない数を決める方法です。
数値代入法のあとに確かめが必要なのはなぜですか?
いくつかの値で成り立つことは、恒等式であるための必要条件にすぎないからです。求めた値で本当にすべてのxについて成り立つかを確かめます。
「kの値にかかわらず」とはどういう意味ですか?
kがどんな値でも成り立つ、つまりkについての恒等式という意味です。kについて整理し、kの係数と定数項をどちらも0とおいて解きます。
恒等式は何年生で習いますか?
高校の数学Ⅱの「式と証明」で習います。
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編」数学Ⅱ(いろいろな式:式と証明)
最終更新:2026年10月13日/作成:大学受験合格大作戦