合格大作戦 数学用語辞典 › 確率・統計
大学受験大学院入試
仮説検定とは
ある仮説が正しいかどうかを、データから確率を使って判断する方法です。「ちがいはない」という仮説のもとで、データのようなことが起こる確率を求め、それが有意水準(たとえば 5%)より小さければ、仮説を棄却します。
うかるくん
コインを 20 回投げて表が 15 回。これって、たまたまですか? それともインチキコイン?
合格先生
「公正なコイン」と仮定して、表 15 回以上の確率を計算してみよう。約 2.1% だ。5% より小さいから「たまたまとは考えにくい」と判断する。これが仮説検定だよ。
この用語のポイント
- 主張したいことの反対を仮説(帰無仮説)にして、そのもとで確率を計算する
- 確率が有意水準より小さいなら仮説を棄却(〜といえる)
- 棄却されないときは「〜とはいえない」まで。「正しい」とは言えない
やさしく言うと
仮説検定は、「たまたま」で説明できるかどうかを、確率を使って判断する方法です。まず「ちがいはない」「かたよりはない」という仮説を立て、その仮説が正しいとしたら、手元のデータのようなことがどのくらいの確率で起こるかを計算します。その確率がとても小さければ、「仮説がおかしい」と判断します。
- コイン投げ:コインを 20 回投げて表が 15 回。公正なコインでも起こりうるけれど、確率は約 2%。「公正だとすると、めったにないことが起きた」と考えて、表が出やすいコインだと判断します。
- 新しい勉強法:新しい方法で点数が上がったとき、それが「たまたま」なのか「効果がある」のかを、データから判断します。
- お店のくじ:「当たり 2 割」のくじを 30 回引いて 1 回も当たらなかったら、「本当に 2 割?」と疑いたくなります。その「疑い」を確率で判断するのが仮説検定です。
まとめると、仮説のもとで「めったに起こらない」ことが起きたら、仮説を捨てるのが仮説検定です。

サクラちゃん
主張したいことの「反対」を仮説にするのがポイントなのね。
仮説検定の言葉
| 言葉 | 意味 | コインの例 |
|---|---|---|
| 帰無仮説(きむかせつ) | 確かめたい主張の反対の仮説。「ちがいはない」の形 | 「表の確率は (公正)」 |
| 対立仮説 | 本当に主張したいこと | 「表の確率は より大きい」 |
| 有意水準 | これより小さい確率なら「めったに起こらない」と考える基準 | 5%(0.05)や 1%(0.01) |
| 棄却(ききゃく) | 仮説を「正しくない」としてしりぞけること | 0.021 < 0.05 なので棄却 |
| 棄却域 | 仮説を棄却することになるデータの範囲 | 両側 5% なら |
「帰無仮説」は、「無に帰す(なかったことにする)ことを期待して立てる仮説」と説明されることがあります。主張したいことを直接証明するのではなく、反対の仮説を否定することで主張を支えるのです。
正しい結論・まちがった結論
○ 正しい結論
- 確率 0.021 < 0.05 →「仮説を棄却する。表が出やすいといえる」
- 確率 0.058 > 0.05 →「仮説は棄却されない。表が出やすいとはいえない」
- 有意水準は、データを見る前に決めておく
- 「表と裏の出やすさがちがうか」は両側、「表が出やすいか」は片側で考える
- 棄却しても、まれに判断をまちがえる可能性はある(その上限が有意水準)
× まちがった結論
- 確率 0.058 →「仮説は正しいと証明された」(そこまではいえない)
- 確率 0.021 →「仮説が正しい確率は 2.1%」(意味がちがう)
- データを見てから、都合のよい有意水準を選ぶ
- 片側か両側かを考えずに確率を計算する
- 棄却されたから、仮説はぜったいにまちがいだと言い切る
図で見る
「公正なコインを 20 回投げたら、表は何回出るか」の確率分布は、二項分布 です。表 15 回以上は、山のはしの、ほんの少しの部分です。
うかるくん
公正なコインでも 15 回出ることはありますよね。それなのに「公正でない」と決めていいんですか?
合格先生
いい質問だ。確かにありうるから、仮説検定の判断にはまちがいの可能性が残る。でも「5% より起こりにくいことが起きたら疑う」と前もって基準を決めておくことで、まちがえる確率を 5% 以下におさえているんだ。
数学Bでは、回数が多いときに正規分布で近似し、標準化した値 が棄却域に入るかどうかで判断します。両側検定で有意水準 5% なら、棄却域は です。
仮説検定の考え方は、背理法によく似ています。ただし、背理法は「矛盾」で確実に否定するのに対し、仮説検定は「めったに起こらない」という確率で否定します。
テスト・入試ではこう出る
高校の数学Ⅰ(データの分析)で、コイン投げの実験結果などを使って仮説検定の考え方を学びます。数学B(統計的な推測)では、二項分布や正規分布を使って、棄却域を求めて検定する方法を学びます。テストでは、確率を計算して有意水準とくらべる問題、標準化して棄却域に入るかを調べる問題、結論の書き方(「〜といえる」「〜とはいえない」)がよく問われます。
例題1(片側検定)
あるコインを 20 回投げたら、表が 15 回出ました。このコインは表が出やすいといえるかを、有意水準 5% で判断しなさい。
- 仮説:「このコインは公正で、表の出る確率は 」。(主張したいのは「表が出やすい」なので、その反対を仮説にする)
- 仮説が正しいとき、表の回数 は にしたがう。表が 15 回以上出る確率は
- なので、「公正なら、めったに起こらないことが起きた」と考え、仮説を棄却する。
答え 表が出やすいと判断してよい(有意水準 5% で、仮説は棄却される)
例題2(両側検定・正規分布)
あるコインを 100 回投げたら、表が 61 回出ました。表と裏の出やすさにちがいがあるといえるかを、有意水準 5% で判断しなさい。ただし、標準正規分布で とします。
- 仮説:「表の出る確率は 」。(「表と裏の出やすさにちがいがあるか」なので両側検定)
- 仮説が正しいとき、表の回数 は で、平均 50、標準偏差 。 が大きいので正規分布 で近似する。
- 標準化:
- 有意水準 5% の両側検定の棄却域は 。 なので、棄却域に入る。
答え 仮説は棄却され、表と裏の出やすさにちがいがあると判断する

うかるくん
結論は「〜といえる」か「〜とはいえない」。「正しいと証明された」とは書かない!
まちがえやすい点

合格先生
棄却されなくても「仮説は正しい」とは言えない。「〜とはいえない」と書こう!
- 「棄却されない」を「仮説が正しい」とする:棄却されないときは「ちがいがあるとはいえない」までです。データが少ないと、本当のちがいを見のがすこともあります。
- 有意水準を「仮説が正しい確率」と思う:有意水準は、仮説が正しいのにまちがって棄却してしまう確率の上限です。計算した 0.021 も「仮説のもとで、こんなデータが出る確率」で、「仮説が正しい確率」ではありません。
- 片側と両側を区別しない:「表が出やすいか」なら片側、「出やすさがちがうか」なら両側です。例題1のデータを両側で考えると、確率は約 になります。
- 仮説を主張したいことのほうにする:仮説(帰無仮説)は「ちがいはない」「公正」のような、否定したいほうです。
- データを見てから有意水準を決める:結果に合わせて基準を動かすと、判断の意味がなくなります。基準は前もって決めます。
ことばの由来
仮説は「仮に立てた説」、検定は「調べて決める」という意味の漢字の組み合わせです。英語では hypothesis testing(ハイポセシス・テスティング)といいます。「帰無仮説」は英語の null hypothesis(null は「ゼロ・無効」の意味)を訳した言葉です。
ミニ問題
問題1 仮説検定で仮説が棄却されなかったとき、「仮説は正しいと証明された」といってよいですか。
答えと解き方を見る
いえません。「仮説が正しくないとはいえない(ちがいがあるとはいえない)」までしかいえません。データが少ないために、本当はちがいがあっても見つけられなかった、という場合もあるからです。
問題2 あるコインを 10 回投げたら、10 回とも表でした。「このコインは公正」という仮説は、有意水準 5% で棄却されますか(表が出やすいかを調べる片側検定)。
答えと解き方を見る
棄却されます。公正なら 10 回とも表になる確率は で、 よりずっと小さいからです。「表が出やすいコイン」と判断します。
問題3 あるコインを 20 回投げたら、表が 14 回出ました。表が 14 回以上出る確率は、公正なコインなら約 0.058 です。有意水準 5% で、表が出やすいといえますか。
答えと解き方を見る
いえません。 なので、仮説「公正」は棄却されません。「表が出やすいとはいえない」と結論します。15 回なら約 0.021 で棄却されたので、1 回のちがいで判断が分かれる、ということも分かります。
関連する公式・用語
公式辞典で、くわしい証明と例題を見る
あわせて覚えたい用語
よくある質問
仮説検定とは何ですか?
ある仮説が正しいかどうかを、データから確率を使って判断する方法です。仮説のもとでデータのようなことが起こる確率が小さければ、仮説を棄却します。
帰無仮説とは何ですか?
確かめたい主張の反対にあたる、「ちがいはない」「かたよりはない」という仮説です。これを否定できるかどうかを調べます。
有意水準とは何ですか?
これより小さい確率なら「めったに起こらない」と考える基準です。5%や1%がよく使われ、データを見る前に決めておきます。
仮説が棄却されなかったら、仮説は正しいのですか?
正しいとまではいえません。「ちがいがあるとはいえない」という結論になります。
片側検定と両側検定のちがいは?
「大きいか」のように一方向だけを調べるのが片側検定、「ちがうか」のように両方向を調べるのが両側検定です。両側では棄却域を両はしに分けます。
仮説検定は何年生で習いますか?
高校の数学Ⅰ(データの分析)で考え方を学び、数学B(統計的な推測)で二項分布や正規分布を使った検定を学びます。
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編」数学Ⅰ(データの分析)・数学B(統計的な推測)
最終更新:2026年10月13日/作成:大学受験合格大作戦


