合格大作戦 数学用語辞典 › 集合と論理
大学受験
「すべて」と「ある」とは
「すべての について」は 1 つ残らず、「ある について」は少なくとも 1 つ、という意味です。否定すると入れかわり、「すべての で 」の否定は「ある で でない」になります。
うかるくん
「すべての で 」の否定って、「すべての で 」ですよね?
合格先生
惜しい! 正しくは「ある で 」。「すべて」を否定するには、成り立たないものが1 つあればいいんだ。
この用語のポイント
- 「すべて」= 1 つ残らず、「ある」= 少なくとも 1 つ
- 否定:「すべて〜」→「ある〜でない」、「ある〜」→「すべて〜でない」
- 「すべて」は反例 1 つで偽、「ある」は例 1 つで真
やさしく言うと
数学の命題には、「すべての〜について…」という形と、「ある〜について…」という形があります。「すべて」は1 つ残らず、「ある」は少なくとも 1 つという意味です。
- 宿題の提出:「すべての生徒が宿題を出した」は、1 人でも出していない人がいれば成り立ちません。だからその否定は「出していない生徒がいる」です。「全員が出していない」ではありません。
- くじ引き:「この箱には、当たりのくじがある」は、当たりが 1 本でも入っていれば正しい文です。2 本入っていても正しいままです。
- 電車の時刻:「どの電車も 8 時前に着く」の否定は「8 時前に着かない電車がある」。1 本おくれる電車があれば、もう「どの電車も」とは言えません。
まとめると、「すべて」の否定は「ある〜でない」、「ある」の否定は「すべて〜でない」です。この 2 つの言葉は、否定するとたがいに入れかわります。
「すべて」と「ある」の命題の例
○ 命題の例(真偽つき)
- すべての実数 について (真)
- すべての実数 について (偽。 が反例)
- ある実数 について (真。)
- ある自然数 について (偽。そんな自然数はない)
- すべての自然数 について は偶数(真)
- ある素数は偶数である(真。)
× よくあるまちがい
- 「すべての で 」の否定を「すべての で 」とする
- 「すべての で 」の否定を「ある で 」とする( がもれる。正しくは )
- 「ある で 」を「ただ 1 つの 」と読む( の 2 つでもよい)
- 「すべての で成り立つ」を、 で確かめただけで真とする
- 「ある で…」が偽なのを、例を 1 つ挙げて示そうとする
「すべて」の命題は、反例が 1 つあれば偽になります。「ある」の命題は、例が 1 つあれば真になります。この使い分けが、真偽を判断するときのいちばんの基本です。
図で見る
全体集合を 、条件 を満たすものの集合を とすると、2 つの命題は集合の言葉で言いかえられます。
「すべての で 」は、 が全体 と同じになること。「ある で 」は、 の中に要素が1 つ以上あること()です。こう見ると、「すべて」を示すには全部を調べる理由(証明)が、「ある」を示すには1 つの例が必要なことがよく分かります。
サクラちゃん
「すべて」の否定が「すべて〜でない」じゃないのは、なぜですか?
合格先生
「全員が出した」がまちがいになるのは、出していない人が 1 人でもいるときだよね。「全員が出していない」はそのうちのいちばん極端な場合にすぎない。否定は「もとの文が成り立たない場合を全部ふくむ」文にしないといけないんだ。
記号 ∀・∃ と、順番の大切さ
大学の数学などでは、「すべての」を記号 、「ある」を記号 で書きます。 は All の A を上下さかさにした形、 は Exist(存在する)の E を左右反対にした形だと説明されます。高校の教科書では、ふつう言葉で書きます。「すべて」の形の命題を全称命題、「ある」の形の命題を存在命題とよぶこともあります。
2 つを組み合わせるときは、順番で意味が変わります。
| 命題 | 意味 | 真偽 |
|---|---|---|
| すべての実数 に対して、ある実数 が | どんな にも、それより大きい が見つかる( など) | 真 |
| ある実数 が、すべての実数 に対して | どんな よりも大きい、1 つの がある(いちばん大きい数) | 偽 |
上は「 ごとに を選んでよい」、下は「先に を 1 つ決めて、どの にも勝つ」という意味です。下の があったとしても、 とおけば が成り立たないので、偽です。言葉の順番に注意して読みましょう。

うかるくん
「すべて」の否定は「ある〜でない」。後ろの条件もちゃんと否定しよう!
テスト・入試ではこう出る
「すべて」と「ある」は、命題の否定を作る問題や、命題の真偽を判断する問題でよく出ます。大学入試では、「すべての について不等式が成り立つ条件」や「ある について成り立つ条件」を、グラフや最大・最小を使って求める問題が定番です。
例題1(否定を作る)
次の命題の否定を作り、もとの命題の真偽を答えなさい。(1) すべての実数 について (2) ある自然数 について
- (1) 「すべて」を「ある」に、「」を「」に変える。否定は「ある実数 について 」。もとの命題は真なので、否定は偽。
- (2) 「ある」を「すべて」に、「」を「」に変える。否定は「すべての自然数 について 」。 となる自然数はないので、もとの命題は偽、否定は真。
命題とその否定は、必ず一方が真で、もう一方が偽になります。真偽が逆になっているかで、否定が正しく作れたか確かめられます。
例題2(すべての x で成り立つ条件)
すべての実数 について が成り立つような、定数 の値の範囲を求めなさい。
- のグラフは下に凸の放物線。「すべての で 」は、グラフ全体が 軸より上にあることと同じ。
- それは、 軸と共有点をもたないこと。判別式 で 。
- よって 、。
答え 。平方完成して とし、「最小値 」と考えても同じ答えになります。「ある で 」が起こらない条件、と考えることもできます。
まちがえやすい点

合格先生
「すべて」の否定は「すべて〜でない」ではない!「ある〜でない」だよ。
- 「すべて」の否定を「すべて〜でない」にする:「すべての生徒が合格した」の否定は「すべての生徒が不合格」ではなく、「不合格の生徒がいる」です。
- 「ある」の否定を「ある〜でない」にする:「ある で 」の否定は「ある で 」ではなく、「すべての で 」です。
- 不等号の否定をまちがえる: の否定は ではなく です。 の否定は です。等号がどちらに入るかを必ず確かめます。
- 「ある」を「ただ 1 つ」と思う:数学の「ある」は「少なくとも 1 つ」です。当てはまるものが 2 つ以上あっても、「ある」の命題は真です。
- 「または」「かつ」を否定し忘れる:条件に「または」があれば、否定で「かつ」に変わります(ド・モルガンの法則)。
ミニ問題
問題1 「すべての生徒が 60 点以上だった」の否定を答えましょう。
答えと解き方を見る
「60 点未満の生徒がいた」(ある生徒は 60 点未満だった)です。「すべての生徒が 60 点未満だった」は否定ではありません。1 人でも 60 点未満の人がいれば、「全員 60 点以上」はくずれます。
問題2 「ある実数 について 」は真か偽か答えましょう。
答えと解き方を見る
偽です。実数 では なので、 となり、0 になることはありません。「ある」の命題が偽であることは、例ではなくすべての について成り立たないことを示して言います。(複素数まで広げると で成り立ちますが、この問題は実数の範囲です。)
問題3 実数 についての命題「すべての について、 または 」の否定を答え、もとの命題の真偽も答えましょう。
答えと解き方を見る
否定は「ある について、」です。
- 「すべて」を「ある」にする。
- 「 または 」の否定は、ド・モルガンの法則で「 かつ 」、つまり 。
のように を満たす があるので、否定は真。よってもとの命題は偽です。
関連する公式・用語
あわせて覚えたい用語
よくある質問
「すべて」の否定は何ですか?
「すべてのxについてp」の否定は「あるxについてpでない」です。成り立たないものが1つでもあれば、「すべて」はくずれるからです。
「ある」の否定は何ですか?
「あるxについてp」の否定は「すべてのxについてpでない」です。
数学の「ある」は1つだけという意味ですか?
いいえ。「少なくとも1つ」という意味です。当てはまるものが2つ以上あっても、「ある」の命題は真です。
x>0 の否定は x<0 ですか?
いいえ、x≦0 です。x=0 のときも x>0 は成り立たないので、否定に入れます。
∀ と ∃ は何の記号ですか?
∀ は「すべての」、∃ は「ある(存在する)」を表す記号です。∀ は All の A を、∃ は Exist の E をもとにした形と説明されます。
「すべて」の命題が真であることはどう示しますか?
例をいくつ挙げてもだめで、証明が必要です。反対に、偽であることは反例を1つ挙げれば示せます。
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編」数学Ⅰ(集合と命題)
最終更新:2026年10月13日/作成:大学受験合格大作戦


