
竹取物語の「世界の男、あてなるも、いやしきも」から、かぐや姫が五人の貴公子に無理難題を出すまで(第2章「貴公子たちの求婚」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。
解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)
この章を30秒で(あらすじと要点)
- あらすじ:世の男たちがかぐや姫に求婚して家のまわりをうろつくが、最後まで残ったのは五人の貴公子。翁に結婚をすすめられたかぐや姫は、「見たい物を見せてくれた人と結婚する」と言い、五人にこの世にない宝物を一つずつ求める。
- 文法の要点:二方面の敬語(あひたてまつりたまひね)、あめり・あなり(撥音便の無表記)、伝聞・推定のなり、ねの識別(完了ぬの命令形/打消ずの已然形)、な〜その禁止。
- テストの定番:「よばひ」の語源(呼ばふ+夜這ひ)、五人と難題の組み合わせ、「立てる」の「る」=存続の「り」。



この章で覚える文法(テストに出る順)
- 二方面の敬語:あひたてまつり(謙譲)たまひ(尊敬)ね
- あめり・あなり=「ある」の撥音便の無表記+めり・なり
- ねの識別:たまひね(完了の命令形)/おはしまさねば(打消の已然形)
- 立てるの「る」=存続の「り」、いはるるの「るる」=受身
- 語源ばなし「よばひ」とな〜その禁止
第1章までのあらすじと五人の貴公子
第1章で、竹取の翁は光る竹の中から小さな女の子を見つけ、三か月で美しい大人に育った娘は「なよ竹のかぐや姫」と名づけられました。この第2章では、そのうわさが世の中に広がり、たくさんの男たちが求婚にやって来ます。最後まであきらめなかったのが、石作の皇子・くらもちの皇子・右大臣阿倍御主人・大納言大伴御行・中納言石上麻呂足の五人です。皇子は天皇の子、右大臣・大納言・中納言は朝廷の高い位です。
阿倍御主人・大伴御行・石上麻呂は、飛鳥時代から奈良時代のはじめに実在した貴族の名前とよく似ています。くらもちの皇子のモデルを藤原不比等とする説もあります。
本文と現代語訳・文法(1文ずつ)
色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)
1
世界の男、あてなるも、いやしきも、「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな」と、音に聞きめでて惑ふ。
現代語訳世の中の男たちは、身分の高い者も低い者も、「なんとかしてこのかぐや姫を手に入れたいものだ、妻にしたいものだ」と、うわさに聞いて心ひかれ、夢中になっている。
- 「てしがな」は自分の願望(〜したいものだ)を表す終助詞。→願望の終助詞(ばや・てしがな・なむ)
- 「見る」は古文では結婚するの意味にもなる。→古文常識(通い婚・垣間見)
- 「あてなり」は身分が高い・上品だ。「音に聞く」はうわさに聞く。
2
そのあたりの垣にも、家のとにも、をる人だに、たはやすく見るまじきものを、夜は安きいも寝ず、闇の夜に出でても穴をくじり、ここかしこよりのぞき、垣間見、惑ひあへり。
現代語訳そのそばの垣根にも家の戸口にもいる人でさえ、たやすくは(かぐや姫を)見られないのに、(男たちは)夜も安心して眠らず、闇夜に出かけてまで垣根に穴をあけて、あちこちからのぞき、すき間から見ようと、みんなで夢中になっている。
- 「だに」は「〜さえ」(軽いものをあげて重いものを想像させる)。→副助詞「だに・すら・さへ」の違い
- 「まじき」は打消推量(〜できないだろう)。→助動詞「まじ」の意味(打消推量・打消意志・不可能)
- 「垣間見」は垣根のすき間からのぞき見ること。平安時代の男女の出会いの定番。
3
さる時よりなむ、「よばひ」とは言ひける。
現代語訳そのときから、(求婚することを)「よばひ」と言うようになった。
- 語源ばなし:「よばひ」はもともと「呼ばふ」(何度も呼びかける=求婚する)の名詞形。夜に女の家のまわりをうろつく男たちの姿に、「夜這ひ」を言いかけたシャレになっている。
- 「なむ」→結びは連体形「ける」。→係り結びの決まり(ぞ・なむ・や・か・こそ)


4
人の物ともせぬ所に惑ひありけども、何のしるしあるべくも見えず。家の人どもに物をだに言はむとて、言ひかくれども、ことともせず。あたりを離れぬ公達、夜を明かし日を暮らす人、多かり。
現代語訳人が相手にもしないような所まで、うろうろ歩きまわるけれど、何の効き目もありそうに見えない。せめて家の使用人たちに話だけでもしようと声をかけるけれど、相手にもされない。そばを離れない貴公子たちで、(そこで)夜を明かし日を暮らす人が多い。
- ここの「だに」は「せめて〜だけでも」(最小限の願い)。2段目の「だに」とちがう使い方。
- 「離れぬ」は未然形+ぬ=打消(離れない)。→「ぬ」の識別(完了と打消)
- 「言はむ」の「む」は意志(〜しよう)。「公達」は身分の高い家の若者。
5
おろかなる人は、「ようなきありきは、よしなかりけり」とて、来ずなりにけり。その中に、なほ言ひけるは、色好みといはるるかぎり五人、思ひやむ時なく、夜昼来けり。
現代語訳気持ちの浅い人は、「むだな出歩きはつまらないことだったなあ」と言って、来なくなってしまった。その中で、なおも言い寄り続けたのは、恋の道に熱心だと言われる者ばかり五人で、思いがやむ時もなく、夜も昼もやって来た。
- 「よしなかりけり」の「けり」は詠嘆(〜だなあ)。会話や和歌の中で、今気づいたことを言う。→「けり」の過去と詠嘆
- 「いはるる」は受身(言われる)。→「る・らる」の4つの意味(受身・尊敬・自発・可能)
- 「おろかなり」は「いいかげんだ・気持ちが浅い」。今の「ばか」とはちがう。
6
その名ども、石作の皇子、くらもちの皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂足、この人々なりけり。
現代語訳その名前は、石作の皇子、くらもちの皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂足、この人たちであった。
- 読み方:石作(いしつくり)の皇子、くらもち(車持)の皇子、阿倍御主人(あべのみうし)、大伴御行(おおとものみゆき)、石上麻呂足(いそのかみのまろたり)。
- 國民文庫本では「一人は〜、一人は〜」と一人ずつ名前をあげ、最後の人は「石上麿呂」と書かれています。このページは教科書で多い形にそろえました。
- 「なり」+「けり」で「〜であった」。→断定の助動詞「なり・たり」


7
世の中に多かる人をだに、少しもかたちよしと聞きては、見まほしうする人どもなりければ、かぐや姫を見まほしうて、物も食はず思ひつつ、かの家に行きて、たたずみありきけれど、かひあるべくもあらず。
現代語訳世の中にたくさんいる(ふつうの)女性でさえ、少しでも顔立ちがよいと聞けば会いたがる人たちだったので、かぐや姫に会いたくて、食事もとらずに思い続け、あの家に行って、立ちつくしたり歩きまわったりしたけれど、効き目がありそうにもない。
- 「まほしう」は願望「まほし」の連用形のウ音便(〜したい)。→願望の助動詞「まほし・たし」
- 「なりければ」は已然形+ば=確定条件(〜だったので)。→接続助詞「ば」の未然形+ばと已然形+ば
8
文を書きてやれども、返りごともせず。わび歌など書きてやれども、返しもせず。「かひなし」と思へども、霜月・師走の降り凍り、水無月の照りはたたくにも障らず来けり。
現代語訳手紙を書いて送っても、返事もしない。恋の苦しさを詠んだ歌などを書いて送っても、返歌もしない。「むだだ」と思うけれど、十一月・十二月の雪が降り氷が張る寒さにも、六月の日がかんかん照りつける暑さにも負けずにやって来た。
- 霜月=十一月、師走=十二月、水無月=六月(旧暦の月の名前)。→旧暦の月の名前(睦月〜師走)の覚え方
- 「わび歌」は恋の苦しさを訴える歌。「障らず」は「さまたげられず」。
9
この人々、ある時は竹取を呼び出でて、「娘を我にたべ」と伏し拝み、手をすりのたまへど、「おのがなさぬ子なれば、心にも従はずなむある」と言ひて、月日を過ぐす。
現代語訳この人たちは、ある時は竹取の翁を呼び出して、「娘をわたしにください」と伏して拝み、手をすり合わせて頼みなさるけれど、(翁は)「自分が生ませた子ではないので、思うようにもならないのです」と言って、月日を過ごす。
- 「たべ」は「たぶ(くださる)」の命令形で「ください」。皇子たちが翁に頭を下げている。
- 「のたまへど」の「のたまふ」は尊敬語(おっしゃる)。地の文なので作者から貴公子たちへの敬意。→敬意の方向(誰から誰へ)の見分け方
- 「なむ…ある」も係り結び(「ある」は連体形)。

出典:『竹取物語』絵巻 上巻(江戸時代前期の写本、国立国会図書館デジタルコレクション)
10
かかれば、この人々、家に帰りて物を思ひ、祈りをし、願を立て、思ひやめむとすれども、やむべくもあらず。「さりとも、つひに男あはせざらむやは」と思ひて、頼みをかけたり。あながちに心ざしを見えありく。
現代語訳こうなので、この人たちは、家に帰って物思いにふけり、神仏に祈り、願を立てて、(恋を)あきらめようとするけれど、あきらめられそうにもない。「そうはいっても、最後までだれとも結婚させないなんてことがあろうか(いつかは結婚させるはずだ)」と思って、期待をかけている。むりにでも熱意を見せて歩きまわる。
- 「〜ざらむやは」の「やは」は反語(〜だろうか、いや〜ない)。打消と反語で強い肯定になる。→係助詞「や・か」の疑問と反語
- 「あながちなり」は「むりやりだ・強引だ」。
11
これを見つけて、翁、かぐや姫に言ふやう、「我が子の仏、変化の人と申しながら、ここら大きさまで養ひたてまつる心ざしおろかならず。翁の申さむこと、聞きたまひてむや」と言へば、
現代語訳これを見て、翁がかぐや姫に言うことには、「わが子の仏さま、(あなたは)神仏が姿を変えて現れた人だとは申しながらも、こんなに大きくなるまでお育て申し上げたわたしの気持ちは、並たいていではありません。翁の申し上げることを、聞いてくださるでしょうか」と言うと、
- 翁がわが子に敬語を使っている。「申す・たてまつる」(謙譲)も「たまふ」(尊敬)も、翁からかぐや姫への敬意。→古文の敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)
- 「聞きたまひてむや」の「て」は強意の「つ」。「てむ・なむ」は「きっと〜」。→完了の助動詞「つ・ぬ」と強意
- 「変化の人」は神仏が仮に人の姿になった者。「おろかならず」=並たいていではない。

12
かぐや姫、「何ごとをか、のたまはむことを承らざらむ。変化の者にてはべりけむ身とも知らず、親とこそ思ひたてまつれ」と言へば、翁、「うれしくものたまふものかな」と言ふ。
現代語訳かぐや姫は「どんなことでも、おっしゃることをお聞きしないことがありましょうか(何でもお聞きします)。(自分が)神仏の化身だったという身の上とも知らず、(あなたを本当の)親とばかり思い申し上げております」と言うと、翁は「うれしいことをおっしゃるものだなあ」と言う。
- 「か…む」は反語の係り結び、「こそ…たてまつれ」は已然形で結ぶ係り結び。1つの会話に2種類そろっている。
- 「はべり」は丁寧語(〜ございます)。かぐや姫から翁への敬意。→「はべり・さぶらふ」の丁寧語と謙譲語
- 「けむ」は過去推量(〜だったのだろう)。→助動詞「けむ」の意味
13
「翁、年七十に余りぬ。今日とも明日とも知らず。この世の人は、男は女にあふことをす。女は男にあふことをす。その後なむ門も広くなりはべる。いかでかさることなくてはおはしまさむ」。
現代語訳「翁は年が七十を越えました。(命は)今日終わるか明日終わるかもわかりません。この世の人は、男は女と結婚し、女は男と結婚するものです。そうしてこそ一族も栄えるのです。どうして結婚しないままでいらっしゃれましょうか(いや、そうはいきません)」。
- 「あふ」は結婚する。「門広くなる」は一族が栄えること。
- 「いかでか〜む」は反語(どうして〜か、いや〜ない)。→助動詞「む」の6つの意味(推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲)
14
かぐや姫のいはく、「なんでふ、さることかしはべらむ」と言へば、「変化の人といふとも、女の身持ちたまへり。翁のあらむかぎりは、かうてもいますかりなむかし。この人々の年月を経て、かうのみいましつつのたまふことを思ひ定めて、一人一人にあひたてまつりたまひね」と言へば、
現代語訳かぐや姫が「どうしてそんなこと(結婚)をいたしましょうか」と言うと、(翁は)「神仏の化身といっても、女の身をお持ちです。翁が生きている間は、このままでもいらっしゃれるでしょうよ。(でも)この人たちが長い年月、こうして通っていらっしゃってはおっしゃることをよく考えて決めて、(そのうちの)お一人と結婚申し上げなさい」と言うと、
- 二方面の敬語:「あひたてまつりたまひね」の「たてまつり」(謙譲)は翁から結婚相手の貴公子への敬意、「たまひ」(尊敬)は翁からかぐや姫への敬意。→二方面への敬語(謙譲+尊敬)
- 「たまひね」の「ね」は完了「ぬ」の命令形(〜してしまいなさい)。打消「ず」の已然形「ね」と区別する。→「ね」の識別(完了ぬの命令形と打消ずの已然形)
- 「なんでふ」は「なにといふ」がつまった形で、「どうして」。


15
かぐや姫いはく、「よくもあらぬかたちを、深き心も知らで、あだ心つきなば、のち悔しきこともあるべきをと思ふばかりなり。世のかしこき人なりとも、深き心ざしを知らでは、あひがたしとなむ思ふ」と言ふ。
現代語訳かぐや姫が言うことには、「たいして美しくもない顔なのに、(相手の)深い気持ちも知らないで(結婚して)、(相手に)浮気心が起きたら、あとで悔しい思いをすることもあるだろうに、と思うだけです。世間で立派な人であっても、深い愛情を確かめないでは、結婚しにくいと思うのです」と言う。
- 「知らで」の「で」は打消の接続助詞(〜ないで)。→接続助詞「で・ば・ど・ども」
- 「つきなば」は完了「ぬ」の未然形+ば=仮定(〜してしまったら)。
- 「あだ心」は浮気な心。「なむ…思ふ」の「思ふ」は連体形(四段動詞は終止形と同じ形)。
16
翁いはく、「思ひのごとくものたまふかな。そもそもいかやうなる心ざしあらむ人にかあはむと思す。かばかり心ざしおろかならぬ人々にこそあめれ」。
現代語訳翁が言うことには、「(わたしの)思っていたとおりのことをおっしゃるなあ。いったいどのような愛情を持っている人と結婚しようとお思いなのか。(あの人たちは)これほど気持ちの深い人たちであるようですよ」。
- 「あめれ」は「あるめれ」→「あんめれ」→「あ(ん)めれ」。ラ変「あり」+推定「めり」の已然形(こその結び)。第1章の「なめり」と同じしくみ。→推定の助動詞「めり」となめり・あめり
- 「人々にこそ」の「に」は断定「なり」の連用形(〜で)。→「に」の識別7種類
- 國民文庫本は「あンめれ」と書くが、ここでは教科書の形「あめれ」にした。

17
かぐや姫のいはく、「なにばかりの深きをか見むと言はむ。いささかのことなり。人の心ざし等しかなり。いかでか中に劣りまさりは知らむ。五人の中に、ゆかしき物を見せたまへらむに、御心ざしまさりたりとて、仕うまつらむと、そのおはすらむ人々に申したまへ」と言ふ。「よきことなり」と承けつ。
現代語訳かぐや姫が言うことには、「どれほど深い愛情を見たいと言うのでしょう(大したことではありません)。ほんの少しのことです。(五人の)愛情は同じくらいであるようです。どうしてその中で優劣がわかりましょうか。五人の中で、わたしが見たいと思う物を見せてくださった方に、お気持ちがまさっているとして、お仕えしましょう、と、そこにいらっしゃる人たちに申し上げてください」と言う。(翁は)「よいことだ」と引き受けた。
- 「等しかなり」は「等しかるなり」→「等しかんなり」→「等しか(ん)なり」。撥音便の下の「なり」は推定(〜であるようだ)。→伝聞・推定の「なり」と断定の「なり」の見分け方
- 「申したまへ」は二方面:「申し」(謙譲)はかぐや姫から貴公子たちへ、「たまへ」(尊敬)はかぐや姫から翁への敬意。
- 「ゆかし」は「見たい・知りたい・聞きたい」。テストの定番。
18
日暮るるほど、例の集まりぬ。あるいは笛を吹き、あるいは歌をうたひ、あるいは唱歌をし、あるいはうそを吹き、扇を鳴らしなどするに、翁出でていはく、「かたじけなくも、きたなげなる所に、年月を経て物したまふこと、きはまりたるかしこまりを申す。
現代語訳日が暮れるころ、(五人は)いつものように集まった。ある人は笛を吹き、ある人は歌をうたい、ある人は楽譜を口ずさみ、ある人は口笛を吹き、扇を鳴らしたりしていると、翁が出てきて言うことには、「もったいなくも、このようなむさくるしい所に、長い年月通っていらっしゃることは、この上なく恐れ多いことと申し上げます。
- 「例の」は「いつものように」。「唱歌」(しょうが)は楽器の旋律を口でうたうこと、「うそ」は口笛。
- 「物す」は「行く・来る・いる」などの代わりに使う便利な動詞。ここは「通って来る」。
19
『翁の命、今日明日とも知らぬを、かくのたまふ君達にも、よく思ひ定めて仕うまつれ』と申せば、『深き御心を知らでは』となむ申す。さ申すもことわりなり。『いづれも劣りまさりおはしまさねば、ゆかしき物を見せたまへらむに、御心ざしのほどは見ゆべし。仕うまつらむことは、それになむ定むべき』と言ふ。これよきことなり。人の恨みもあるまじ」と言へば、五人の人々も「よきことなり」と言へば、翁入りて言ふ。
現代語訳『翁の命は今日か明日かもわからないのだから、このように(求婚の言葉を)おっしゃる貴公子たちと、よく考えて決めて結婚してお仕えしなさい』と申しますと、『深いお気持ちを知らないでは(結婚できません)』と申します。そう申すのももっともです。『どなたも優劣がおありにならないので、見たい物を見せてくださった方に、お気持ちの深さはわかるはずです。お仕えすることは、それによって決めましょう』と言います。これはよい方法です。だれの恨みも残らないでしょう」と言うと、五人の人たちも「よいことだ」と言うので、翁は(家の)中に入って(かぐや姫に)伝える。
- 「おはしまさねば」の「ね」は打消「ず」の已然形(〜ないので)。前の段の「たまひね」(完了の命令形)とくらべよう。→「ね」の識別
- 「まじ」は打消推量(〜ないだろう)。「ことわりなり」は「もっともだ」。


20
かぐや姫、石作の皇子には、「天竺に仏の御石の鉢といふ物あり。それを取りて賜へ」と言ふ。くらもちの皇子には、「東の海に蓬莱といふ山あなり。それに銀を根とし、金を茎とし、白き玉を実として立てる木あり。それ一枝折りて賜はらむ」と言ふ。今一人には、「唐土にある火鼠の皮衣を賜へ」。大伴の大納言には、「竜の首に五色に光る玉あり。それを取りて賜へ」。石上の中納言には、「燕の持たる子安の貝、一つ取りて賜へ」と言ふ。
現代語訳かぐや姫は、石作の皇子には「天竺(インド)に仏の御石の鉢という物があります。それを取ってきてください」と言う。くらもちの皇子には「東の海に蓬莱という山があるそうです。そこに銀を根とし、金を茎とし、白い玉を実として立っている木があります。その一枝を折っていただきましょう」と言う。もう一人(阿倍の右大臣)には「唐(中国)にある火ねずみの皮でできた着物をください」。大伴の大納言には「竜の首に五色に光る玉があります。それを取ってきてください」。石上の中納言には「燕が持っている子安貝を一つ取ってきてください」と言う。
- 「あなり」は「あるなり」→「あんなり」→「あ(ん)なり」。伝聞(〜そうだ)。見たことのない遠い山のことなので伝聞。→伝聞・推定の「なり」
- 「立てる」の「る」は存続「り」(立っている)。受身の「る」ではない。エ段の音+る・れ=「り」と覚える。→完了・存続の助動詞「たり・り」
- 銀(しろがね)・金(こがね)。「賜ふ」は「くださる」(尊敬)、「賜はる」は「いただく」(謙譲)。
- 五つの難題:仏の御石の鉢(石作)・蓬莱の玉の枝(くらもち)・火鼠の皮衣(阿倍)・竜の首の玉(大伴)・燕の子安貝(石上)。第3章から一人ずつの失敗談が始まる。
- 「唐土」(もろこし)は中国。「火鼠の皮衣」は火に入れても燃えないとされた伝説の毛皮。

出典:『竹取物語』絵巻 上巻(江戸時代前期の写本、国立国会図書館デジタルコレクション)
21
翁、「難きことどもにこそあなれ。この国にある物にもあらず。かく難きことをば、いかに申さむ」と言ふ。かぐや姫、「何か難からむ」と言へば、翁、「とまれかくまれ申さむ」とて、出でて、「かくなむ。聞こゆるやうに見せたまへ」と言へば、
現代語訳翁は「難しいことばかりであるようだ。この国にある物でもない。こんな難しいことを、どう申し上げたらよいだろう」と言う。かぐや姫は「何が難しいことがありましょう」と言うので、翁は「とにかく申し上げよう」と言って、出ていって「このようなことです。(姫が)申し上げるとおりに見せてください」と言うと、
- 「こそ…あなれ」は伝聞「なり」の已然形で結ぶ係り結び。「かくなむ。」は下の「言ふ」などが省略された形(結びの省略)。→係り結びと結びの省略
- 「何か難からむ」は反語(何が難しいだろうか、難しくない)。「とまれかくまれ」は「ともかくも」。
22
皇子たち・上達部聞きて、「おいらかに、『あたりよりだにな歩きそ』とやはのたまはぬ」と言ひて、うんじて、皆帰りぬ。
現代語訳皇子や上達部たちはそれを聞いて、「(それなら)すなおに『このあたりを歩くことさえするな』と、どうしておっしゃらないのか」と言って、うんざりして、みな帰ってしまった。
- 「な〜そ」は禁止(〜するな)。「な」と「そ」で動詞をはさむ。→終助詞「そ」と「な〜そ」の禁止
- 「のたまはぬ」は未然形+ぬ=打消。「帰りぬ」は連用形+ぬ=完了。同じ段に2つの「ぬ」。→「ぬ」の識別
- 「おいらかなり」は「すなおだ・おだやかだ」、「うんず」は「うんざりする」。


五人の貴公子と難題を表で覚える

重要な古語(単語帳)
| 古語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| あてなり | あてなり | 身分が高い・上品だ |
| 見る | みる | 会う・結婚する |
| 垣間見 | かいまみ | すき間からのぞき見ること |
| よばひ | よばい | 求婚すること |
| おろかなり | おろかなり | いいかげんだ・並たいていだ |
| 公達 | きんだち | 身分の高い家の若者 |
| ゆかし | ゆかし | 見たい・知りたい |
| あながちなり | あながちなり | むりやりだ・強引だ |
| あだ心 | あだごころ | 浮気な心 |
| ことわり | ことわり | 道理・もっともなこと |
| かたじけなし | かたじけなし | もったいない・恐れ多い |
| とまれかくまれ | とまれかくまれ | ともかくも |
| おいらかなり | おいらかなり | すなおだ・おだやかだ |
| うんず | うんず | うんざりする |
テストに出る問題(答えは押すと開く)
問1 「さる時よりなむ、よばひとは言ひける」の「よばひ」の語源ばなしを説明しなさい。
「呼ばふ」(何度も呼ぶ=求婚する)の名詞形「よばひ」に、夜に女の家のまわりをうろつく「夜這ひ」を言いかけたシャレ。
問2 「あたりを離れぬ公達」の「ぬ」の文法的意味は?
打消の助動詞「ず」の連体形。「離れ」が未然形なので打消。
問3 「かばかり心ざしおろかならぬ人々にこそあめれ」の「あめれ」を文法的に説明しなさい。
ラ変動詞「あり」の連体形「ある」が撥音便「あん」になり「ん」が書かれない形「あ」+推定の助動詞「めり」の已然形(「こそ」の結び)。
問4 「一人一人にあひたてまつりたまひね」の敬語について、誰から誰への敬意か答えなさい。
「たてまつり」(謙譲)は翁から貴公子への敬意、「たまひ」(尊敬)は翁からかぐや姫への敬意(二方面の敬語)。
問5 「いづれも劣りまさりおはしまさねば」の「ね」と、「あひたてまつりたまひね」の「ね」の違いは?
前者は打消「ず」の已然形(未然形に接続)、後者は完了「ぬ」の命令形(連用形に接続)。
問6 「蓬莱といふ山あなり」の「なり」の意味は?
伝聞(〜そうだ)。「あるなり」の撥音便「あんなり」の「ん」が書かれない形。
問7 かぐや姫が五人に出した難題を、人物と組み合わせて答えなさい。
石作の皇子=仏の御石の鉢、くらもちの皇子=蓬莱の玉の枝、右大臣阿倍御主人=火鼠の皮衣、大納言大伴御行=竜の首の玉、中納言石上麻呂足=燕の子安貝。
問8 「あたりよりだにな歩きそ」を現代語訳しなさい。
「このあたりを歩くことさえするな。」「な〜そ」は禁止。

竹取物語「貴公子たちの求婚」原文(全文・通し)
1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。
世界の男、あてなるも、いやしきも、「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな」と、音に聞きめでて惑ふ。
そのあたりの垣にも、家のとにも、をる人だに、たはやすく見るまじきものを、夜は安きいも寝ず、闇の夜に出でても穴をくじり、ここかしこよりのぞき、垣間見、惑ひあへり。
さる時よりなむ、「よばひ」とは言ひける。
人の物ともせぬ所に惑ひありけども、何のしるしあるべくも見えず。家の人どもに物をだに言はむとて、言ひかくれども、ことともせず。あたりを離れぬ公達、夜を明かし日を暮らす人、多かり。
おろかなる人は、「ようなきありきは、よしなかりけり」とて、来ずなりにけり。その中に、なほ言ひけるは、色好みといはるるかぎり五人、思ひやむ時なく、夜昼来けり。
その名ども、石作の皇子、くらもちの皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂足、この人々なりけり。
世の中に多かる人をだに、少しもかたちよしと聞きては、見まほしうする人どもなりければ、かぐや姫を見まほしうて、物も食はず思ひつつ、かの家に行きて、たたずみありきけれど、かひあるべくもあらず。
文を書きてやれども、返りごともせず。わび歌など書きてやれども、返しもせず。「かひなし」と思へども、霜月・師走の降り凍り、水無月の照りはたたくにも障らず来けり。
この人々、ある時は竹取を呼び出でて、「娘を我にたべ」と伏し拝み、手をすりのたまへど、「おのがなさぬ子なれば、心にも従はずなむある」と言ひて、月日を過ぐす。
かかれば、この人々、家に帰りて物を思ひ、祈りをし、願を立て、思ひやめむとすれども、やむべくもあらず。「さりとも、つひに男あはせざらむやは」と思ひて、頼みをかけたり。あながちに心ざしを見えありく。
これを見つけて、翁、かぐや姫に言ふやう、「我が子の仏、変化の人と申しながら、ここら大きさまで養ひたてまつる心ざしおろかならず。翁の申さむこと、聞きたまひてむや」と言へば、
かぐや姫、「何ごとをか、のたまはむことを承らざらむ。変化の者にてはべりけむ身とも知らず、親とこそ思ひたてまつれ」と言へば、翁、「うれしくものたまふものかな」と言ふ。
「翁、年七十に余りぬ。今日とも明日とも知らず。この世の人は、男は女にあふことをす。女は男にあふことをす。その後なむ門も広くなりはべる。いかでかさることなくてはおはしまさむ」。
かぐや姫のいはく、「なんでふ、さることかしはべらむ」と言へば、「変化の人といふとも、女の身持ちたまへり。翁のあらむかぎりは、かうてもいますかりなむかし。この人々の年月を経て、かうのみいましつつのたまふことを思ひ定めて、一人一人にあひたてまつりたまひね」と言へば、
かぐや姫いはく、「よくもあらぬかたちを、深き心も知らで、あだ心つきなば、のち悔しきこともあるべきをと思ふばかりなり。世のかしこき人なりとも、深き心ざしを知らでは、あひがたしとなむ思ふ」と言ふ。
翁いはく、「思ひのごとくものたまふかな。そもそもいかやうなる心ざしあらむ人にかあはむと思す。かばかり心ざしおろかならぬ人々にこそあめれ」。
かぐや姫のいはく、「なにばかりの深きをか見むと言はむ。いささかのことなり。人の心ざし等しかなり。いかでか中に劣りまさりは知らむ。五人の中に、ゆかしき物を見せたまへらむに、御心ざしまさりたりとて、仕うまつらむと、そのおはすらむ人々に申したまへ」と言ふ。「よきことなり」と承けつ。
日暮るるほど、例の集まりぬ。あるいは笛を吹き、あるいは歌をうたひ、あるいは唱歌をし、あるいはうそを吹き、扇を鳴らしなどするに、翁出でていはく、「かたじけなくも、きたなげなる所に、年月を経て物したまふこと、きはまりたるかしこまりを申す。
『翁の命、今日明日とも知らぬを、かくのたまふ君達にも、よく思ひ定めて仕うまつれ』と申せば、『深き御心を知らでは』となむ申す。さ申すもことわりなり。『いづれも劣りまさりおはしまさねば、ゆかしき物を見せたまへらむに、御心ざしのほどは見ゆべし。仕うまつらむことは、それになむ定むべき』と言ふ。これよきことなり。人の恨みもあるまじ」と言へば、五人の人々も「よきことなり」と言へば、翁入りて言ふ。
かぐや姫、石作の皇子には、「天竺に仏の御石の鉢といふ物あり。それを取りて賜へ」と言ふ。くらもちの皇子には、「東の海に蓬莱といふ山あなり。それに銀を根とし、金を茎とし、白き玉を実として立てる木あり。それ一枝折りて賜はらむ」と言ふ。今一人には、「唐土にある火鼠の皮衣を賜へ」。大伴の大納言には、「竜の首に五色に光る玉あり。それを取りて賜へ」。石上の中納言には、「燕の持たる子安の貝、一つ取りて賜へ」と言ふ。
翁、「難きことどもにこそあなれ。この国にある物にもあらず。かく難きことをば、いかに申さむ」と言ふ。かぐや姫、「何か難からむ」と言へば、翁、「とまれかくまれ申さむ」とて、出でて、「かくなむ。聞こゆるやうに見せたまへ」と言へば、
皇子たち・上達部聞きて、「おいらかに、『あたりよりだにな歩きそ』とやはのたまはぬ」と言ひて、うんじて、皆帰りぬ。
竹取物語「貴公子たちの求婚」現代語訳(全文・通し)
世の中の男たちは、身分の高い者も低い者も、「なんとかしてこのかぐや姫を手に入れたいものだ、妻にしたいものだ」と、うわさに聞いて心ひかれ、夢中になっている。
そのそばの垣根にも家の戸口にもいる人でさえ、たやすくは(かぐや姫を)見られないのに、(男たちは)夜も安心して眠らず、闇夜に出かけてまで垣根に穴をあけて、あちこちからのぞき、すき間から見ようと、みんなで夢中になっている。
そのときから、(求婚することを)「よばひ」と言うようになった。
人が相手にもしないような所まで、うろうろ歩きまわるけれど、何の効き目もありそうに見えない。せめて家の使用人たちに話だけでもしようと声をかけるけれど、相手にもされない。そばを離れない貴公子たちで、(そこで)夜を明かし日を暮らす人が多い。
気持ちの浅い人は、「むだな出歩きはつまらないことだったなあ」と言って、来なくなってしまった。その中で、なおも言い寄り続けたのは、恋の道に熱心だと言われる者ばかり五人で、思いがやむ時もなく、夜も昼もやって来た。
その名前は、石作の皇子、くらもちの皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂足、この人たちであった。
世の中にたくさんいる(ふつうの)女性でさえ、少しでも顔立ちがよいと聞けば会いたがる人たちだったので、かぐや姫に会いたくて、食事もとらずに思い続け、あの家に行って、立ちつくしたり歩きまわったりしたけれど、効き目がありそうにもない。
手紙を書いて送っても、返事もしない。恋の苦しさを詠んだ歌などを書いて送っても、返歌もしない。「むだだ」と思うけれど、十一月・十二月の雪が降り氷が張る寒さにも、六月の日がかんかん照りつける暑さにも負けずにやって来た。
この人たちは、ある時は竹取の翁を呼び出して、「娘をわたしにください」と伏して拝み、手をすり合わせて頼みなさるけれど、(翁は)「自分が生ませた子ではないので、思うようにもならないのです」と言って、月日を過ごす。
こうなので、この人たちは、家に帰って物思いにふけり、神仏に祈り、願を立てて、(恋を)あきらめようとするけれど、あきらめられそうにもない。「そうはいっても、最後までだれとも結婚させないなんてことがあろうか(いつかは結婚させるはずだ)」と思って、期待をかけている。むりにでも熱意を見せて歩きまわる。
これを見て、翁がかぐや姫に言うことには、「わが子の仏さま、(あなたは)神仏が姿を変えて現れた人だとは申しながらも、こんなに大きくなるまでお育て申し上げたわたしの気持ちは、並たいていではありません。翁の申し上げることを、聞いてくださるでしょうか」と言うと、
かぐや姫は「どんなことでも、おっしゃることをお聞きしないことがありましょうか(何でもお聞きします)。(自分が)神仏の化身だったという身の上とも知らず、(あなたを本当の)親とばかり思い申し上げております」と言うと、翁は「うれしいことをおっしゃるものだなあ」と言う。
「翁は年が七十を越えました。(命は)今日終わるか明日終わるかもわかりません。この世の人は、男は女と結婚し、女は男と結婚するものです。そうしてこそ一族も栄えるのです。どうして結婚しないままでいらっしゃれましょうか(いや、そうはいきません)」。
かぐや姫が「どうしてそんなこと(結婚)をいたしましょうか」と言うと、(翁は)「神仏の化身といっても、女の身をお持ちです。翁が生きている間は、このままでもいらっしゃれるでしょうよ。(でも)この人たちが長い年月、こうして通っていらっしゃってはおっしゃることをよく考えて決めて、(そのうちの)お一人と結婚申し上げなさい」と言うと、
かぐや姫が言うことには、「たいして美しくもない顔なのに、(相手の)深い気持ちも知らないで(結婚して)、(相手に)浮気心が起きたら、あとで悔しい思いをすることもあるだろうに、と思うだけです。世間で立派な人であっても、深い愛情を確かめないでは、結婚しにくいと思うのです」と言う。
翁が言うことには、「(わたしの)思っていたとおりのことをおっしゃるなあ。いったいどのような愛情を持っている人と結婚しようとお思いなのか。(あの人たちは)これほど気持ちの深い人たちであるようですよ」。
かぐや姫が言うことには、「どれほど深い愛情を見たいと言うのでしょう(大したことではありません)。ほんの少しのことです。(五人の)愛情は同じくらいであるようです。どうしてその中で優劣がわかりましょうか。五人の中で、わたしが見たいと思う物を見せてくださった方に、お気持ちがまさっているとして、お仕えしましょう、と、そこにいらっしゃる人たちに申し上げてください」と言う。(翁は)「よいことだ」と引き受けた。
日が暮れるころ、(五人は)いつものように集まった。ある人は笛を吹き、ある人は歌をうたい、ある人は楽譜を口ずさみ、ある人は口笛を吹き、扇を鳴らしたりしていると、翁が出てきて言うことには、「もったいなくも、このようなむさくるしい所に、長い年月通っていらっしゃることは、この上なく恐れ多いことと申し上げます。
『翁の命は今日か明日かもわからないのだから、このように(求婚の言葉を)おっしゃる貴公子たちと、よく考えて決めて結婚してお仕えしなさい』と申しますと、『深いお気持ちを知らないでは(結婚できません)』と申します。そう申すのももっともです。『どなたも優劣がおありにならないので、見たい物を見せてくださった方に、お気持ちの深さはわかるはずです。お仕えすることは、それによって決めましょう』と言います。これはよい方法です。だれの恨みも残らないでしょう」と言うと、五人の人たちも「よいことだ」と言うので、翁は(家の)中に入って(かぐや姫に)伝える。
かぐや姫は、石作の皇子には「天竺(インド)に仏の御石の鉢という物があります。それを取ってきてください」と言う。くらもちの皇子には「東の海に蓬莱という山があるそうです。そこに銀を根とし、金を茎とし、白い玉を実として立っている木があります。その一枝を折っていただきましょう」と言う。もう一人(阿倍の右大臣)には「唐(中国)にある火ねずみの皮でできた着物をください」。大伴の大納言には「竜の首に五色に光る玉があります。それを取ってきてください」。石上の中納言には「燕が持っている子安貝を一つ取ってきてください」と言う。
翁は「難しいことばかりであるようだ。この国にある物でもない。こんな難しいことを、どう申し上げたらよいだろう」と言う。かぐや姫は「何が難しいことがありましょう」と言うので、翁は「とにかく申し上げよう」と言って、出ていって「このようなことです。(姫が)申し上げるとおりに見せてください」と言うと、
皇子や上達部たちはそれを聞いて、「(それなら)すなおに『このあたりを歩くことさえするな』と、どうしておっしゃらないのか」と言って、うんざりして、みな帰ってしまった。
竹取物語「貴公子たちの求婚」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)
よくある質問(竹取物語の基本)
竹取物語の作者は誰?
作者はわかっていません(未詳)。漢文や仏教の知識がある男性の知識人と考えられています。
竹取物語はいつの作品?
平安時代のはじめ、9世紀後半〜10世紀前半ごろに成立したとされます。
竹取物語の冒頭(書き出し)は?
「今は昔、竹取の翁といふものありけり。」です。現代語訳は「今ではもう昔のことだが、竹取の翁という者がいたそうだ。」です。
なぜ日本最古の物語と言われるの?
『源氏物語』の絵合の巻で「物語の出で来はじめの祖」(物語が生まれた最初の祖先)と呼ばれているからです。
竹取物語 全文の目次
- 竹取物語「なよ竹のかぐや姫」の原文・現代語訳
- 貴公子たちの求婚(このページ)
- 竹取物語「仏の御石の鉢」の原文・現代語訳
- 竹取物語「蓬莱の玉の枝」の原文・現代語訳
- 竹取物語「火鼠の皮衣」の原文・現代語訳
- 竹取物語「竜の首の玉」の原文・現代語訳
- 竹取物語「燕の子安貝」の原文・現代語訳
- 竹取物語「帝の求婚」の原文・現代語訳
- 竹取物語「かぐや姫の昇天」の原文・現代語訳
- 竹取物語「ふじの山」の原文・現代語訳

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本文は『竹取物語』(國民文庫本、明治末刊)をもとに、教科書で広く読まれる形に合わせ、新字体・現代の送り仮名に直しました。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は、国立国会図書館デジタルコレクションの『竹取物語』絵巻(江戸時代前期)など、著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。


