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大学受験
ひとことで言うと
下一段活用は、語尾がエ段だけで「け・け・ける・ける・けれ・けよ」と変わる動詞の活用で、古文では「蹴る」1語だけが属します。入試では、動詞「蹴る」と過去の助動詞「けり」の連体形「ける」の識別がよくねらわれます。
このページのポイント
- 下一段は「蹴る」1語(カ行下一段):け・け・ける・ける・けれ・けよ
- 上一段(見る:み・み・みる…)と鏡の関係。現代語の下一段(受ける)は古文では下二段
- 平安時代は下一段、中世以降は四段、現代語は五段。古くはワ行下二段「くう」とする説も
- 古文の「ける」はほとんどが過去「けり」の連体形。上が連用形かで見分ける
はじめて(やさしく)
下一段活用(しもいちだんかつよう)は、古文の動詞の9種類の活用のひとつです。古文で下一段活用をする動詞は、「蹴る(ける)」1語だけです。「蹴ず(けず)」「蹴て(けて)」「蹴る」「蹴るとき」「蹴れども」「蹴よ(けよ)」のように、どの形にも「け」の音が残ります。活用の種類の全体は、動詞の活用の種類と見分け方のページにまとめています。
「け」は五十音図のエ段の音です。まん中のウ段から見て、1つ下の段(エ段)だけを使うので「下一段」と呼びます。
うかるくん
えっ、1語だけ? それならすぐ覚えられるね!
合格先生
そう、下一段=蹴る。これだけで、活用の種類の問題は答えられるよ。
サクラちゃん
でも、現代語の「受ける」「食べる」も下一段って習ったよ?
合格先生
いい質問だね。それらは古文では下二段(受く・食ぶ)なんだ。それに、現代語の「蹴る」は「蹴らない・蹴って」と言うから、じつは五段。古文の「蹴る」とは形がちがうんだよ。
下一段は、上一段活用(見る・着る など)と鏡のような関係です。上一段はイ段の音1つ(み)、下一段はエ段の音1つ(け)を使い、どちらもその下に「る・れ・よ」がつきます。

うかるくん
上一段は「み・み・みる・みる・みれ・みよ」、下一段は「け・け・ける・ける・けれ・けよ」。「み」を「け」に変えるだけだ!
ここまでのまとめ
- 下一段活用の動詞は「蹴る」1語だけ(カ行下一段)
- 活用はけ・け・ける・ける・けれ・けよ
- 現代語の下一段(受ける・食べる)は、古文では下二段
わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の古典文法のお勉強で質問できます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
下一段活用の活用表
「蹴る」は1音の語なので、語幹と語尾の区別がありません。活用語尾は「e・e・eる・eる・eれ・eよ」で、行はカ行です。入試では「カ行下一段活用」と行まで答えます。
| 種類 | 例 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| カ行下一段 | 蹴る | (蹴) | け | け | ける | ける | けれ | けよ |
| マ行上一段 | 見る | (見) | み | み | みる | みる | みれ | みよ |
| カ行下二段 | 受く | 受 | け | け | く | くる | くれ | けよ |
表は横にスクロールできます。比べるために、上一段「見る」と下二段「受く」を並べました。未然形・連用形・命令形は、下一段「蹴る」と下二段「受く」で同じ「け・け・けよ」です。ちがうのは終止形・連体形・已然形(ける・ける・けれ/く・くる・くれ)です。
上一段・下一段・下二段のくらべ方
| 活用の種類 | 所属する語 | 語尾の段 | 「ず」をつけた形 | 終止形 |
|---|---|---|---|---|
| 上一段 | 干る・射る・着る・似る・見る・居る など約10語 | イ段だけ | 見ず(イ段) | 見る(〜iる) |
| 下一段 | 蹴る 1語 | エ段だけ | 蹴ず(エ段) | 蹴る(〜eる) |
| 下二段 | 受く・求む・捨つ・出づ など多数 | エ段とウ段 | 受けず(エ段) | 受く(ウ段) |
「ず」をつけるとエ段になる動詞は、ふつう下二段活用です。「蹴る」も「蹴ず」でエ段になりますが、暗記組なので先に除きます。手順は、①「蹴る」なら下一段、②それ以外で「ず」の直前がエ段なら下二段、です。
例文で確かめる(自作)
「蹴る」は古文の文章にあまり出てこない語なので、6つの活用形を自作の例文で確かめます。
童、鞠をけずして、ただ見てゐたり。
(自作)
現代語訳子どもは鞠を蹴らないで、ただ見て座っていた。
若き人々、庭に出でて鞠をけて遊ぶ。高くけよと言ふ。
(自作)
現代語訳若い人たちが庭に出て鞠を蹴って遊ぶ。「高く蹴れ」と言う。
蹴鞠(けまり)と「蹴る」
「蹴る」がいちばん活躍する場面は、蹴鞠(けまり。「しゅうきく」とも)です。平安時代の貴族の遊びで、数人が輪になり、鹿の革で作った鞠を地面に落とさないように蹴り上げて受け渡します。庭の四すみには桜・柳・楓・松の木を植えるのが正式とされました。勝ち負けを争うより、続けて蹴る回数や、美しい姿で蹴ることが大事にされたと説明されます。
源氏物語の「若菜上」の巻では、六条院の庭で蹴鞠が行われ、その日に柏木が、猫が引き上げた御簾のすきまから女三の宮の姿を見てしまいます。物語が大きく動く有名な場面です。また、中大兄皇子と中臣鎌足が出会ったのは蹴鞠の会だった、とよく語られますが、『日本書紀』の字は「打毬(だきゅう)」で、蹴鞠とは別の遊びだったとする説もあります。
京都には、蹴鞠の守り神をまつる白峯神宮があり、今ではサッカーなど球技の神社としても知られています。また京都の地名「蹴上(けあげ)」は、源義経(牛若丸)が奥州へ向かう途中、ここで武士の馬に水を蹴り上げられたという伝説から来たと言われます(地名の由来には諸説あります)。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「蹴る」の活用の歴史(諸説あり)
「蹴る」がはじめから下一段だったわけではない、と考えられています。『日本書紀』の古い読み方を示す注(訓注)に「蹴散」を「くゑはららかす」と読ませる例があることなどから、奈良時代ごろにはワ行下二段「くう(蹴う)」(くゑ・くゑ・くう・くうる・くうれ・くゑよ)だったとする説が広く知られています。その「くゑ」の音がつまって「け」になり、平安時代にはカ行下一段「ける」になった、という説明です。
ただし、もとの形をワ行とみるかどうか、途中にどんな形があったか、いつ下一段になったかについては、辞書や研究者によって説明が分かれます。その後、中世以降には「けらず・けりて」のようなラ行四段の形が広がり、現代語の五段「蹴る(蹴らない・蹴って)」につながりました。入試では「平安時代の文章では、下一段は蹴る1語」と答えれば十分です。
2. 「ける」の識別
入試で本当に大事なのは、「蹴る」そのものより「ける」という形の識別です。古文に出てくる「ける」の多くは、動詞「蹴る」ではなく、過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形です。「けり」の意味と接続は、読みもの「古文の助動詞一覧」でも確かめられます。
白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける
(百人一首37番・文屋朝康(白露に))
現代語訳白露に風がしきりに吹きつける秋の野は、糸を通してとめていない玉が散り乱れているのだなあ。

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
(百人一首35番・紀貫之(人はいさ))
現代語訳あなたは、さあ、心が変わったかどうかわからない。でも昔なじみのこの土地では、梅の花が昔のままの香りで美しく咲きにおっていることだなあ。
3つ目のパターンは、四段動詞の已然形の語尾「け」に、完了・存続の助動詞「り」の連体形「る」がついた形です。「り」はサ変の未然形と四段の已然形につきます(四段の命令形につくとする説明もあります)。百人一首でも「降れる白雪」(31番)・「わたせる橋」(6番)のように出てきます。「咲ける」「置ける」「書ける」は、咲け+ると分けます。
3. 「けれ」「けむ」も識別する
已然形「けれ」や、未然形「け」に「む」がついた「けむ」も、同じ音のほかの語とまぎれます。
| 形 | 動詞「蹴る」の場合 | まぎらわしい語 | 見分け方 |
|---|---|---|---|
| けれ | 已然形「蹴れども」(自作) | 過去「けり」の已然形(こそ〜けれ)/形容詞の已然形の語尾(悲しけれ) | 上が連用形なら「けり」。形容詞の一部なら「〜しけれ」 |
| けむ | 未然形+む「鞠をけむ」=蹴ろう(自作) | 過去推量の助動詞「けむ(けん)」 | 上が連用形なら過去推量「けむ」 |
| ける | 終止形・連体形「鞠をける」(自作) | 過去「けり」の連体形/四段已然形+「り」 | 上の語の形と、蹴る動作かどうか |
聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。
(徒然草・第五十二段(仁和寺にある法師))
現代語訳聞いていた以上に尊くていらっしゃった。それにしても、お参りしている人がみな山へ登っていったのは、何があったのだろうか、知りたかったけれど、神へお参りすることこそ本来の目的だと思って、山までは見なかった。
百人一首23番「月見れば千々に物こそ悲しけれ」の「けれ」は、形容詞「悲し」の已然形「悲しけれ」の一部です。「けれ」を見たら、動詞の語尾か、助動詞「けり」か、形容詞の一部かの3つを考えましょう。
4. 下一段には音便がない
「蹴る」の連用形「け」は、「て」がついても「蹴って」のような促音便になりません(平安時代の形は「蹴て」)。音便は四段・ナ変・ラ変などの連用形で起こるものです。中世以降に四段化した「蹴る」では「蹴って」の形も使われますが、これは平安時代の下一段の形ではありません。
サクラちゃん
「ける」が出てきたら、全部「蹴る」かと思ってた……。
合格先生
古文では、ほとんどが助動詞「けり」の連体形なんだ。まず上の語が連用形かどうかを見る。連用形なら「けり」、鞠や足を蹴る話なら「蹴る」。この順で考えれば、まちがえないよ。
ほかの暗記組(カ変「来」・サ変「す」・ナ変「死ぬ」・ラ変「あり」など)は、変格活用のページでまとめて扱います。
よくあるまちがい
まちがい1:「受ける」「食べる」を古文でも下一段にする
古文の下一段は「蹴る」1語だけ。現代語の下一段の多くは、古文では「受く・食ぶ」の下二段です。
まちがい2:「蹴る」を「蹴らず」「蹴って」と活用させる
平安時代の「蹴る」は下一段なので、蹴ず・蹴て・蹴よ。「蹴らず・蹴って・蹴れ」は中世以降や現代語の形です。
まちがい3:「散りける」「にほひける」の「ける」を動詞「蹴る」にする
連用形の下の「ける」は、過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ・なむ・や・か」の結びになっていることが多いです。
まちがい4:「蹴る」の行をラ行と答える
「け・け・ける」の語尾は「け」(カ行)が中心です。答えはカ行下一段活用。「る」は語尾の一部です。
練習問題
やさしい
- 古文で下一段活用をする動詞を答え、その活用を未然形から命令形まで順に書きなさい。
答えと解説を見る
蹴る(1語だけ)。活用はけ・け・ける・ける・けれ・けよ(カ行下一段活用)。
- 次の動詞のうち、古文で下一段活用のものを1つ選びなさい。
ア 受く イ 蹴る ウ 見る エ 食ぶ答えと解説を見る
イ。アの「受く」とエの「食ぶ」は下二段、ウの「見る」は上一段です。
ふつう
- 「鞠をけずして帰りぬ。」(自作)の「け」の、動詞の終止形・活用の種類(行も)・活用形を答えなさい。
答えと解説を見る
終止形は蹴る、カ行下一段活用、未然形(下の「ず」は未然形につく)。「鞠を蹴らないで帰ってしまった」と訳します。
- 「玉ぞ散りける」(百人一首37番)の「ける」の文法的な説明として正しいものを選びなさい。
ア 動詞「蹴る」の連体形 イ 過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形 ウ 完了の助動詞「り」の連体形答えと解説を見る
イ。上の「散り」がラ行四段の連用形で、「けり」は連用形につきます。係助詞「ぞ」の結びなので連体形「ける」です。
むずかしい
- 次の傍線部の「ける」を、動詞「蹴る」・助動詞「けり」・助動詞「り」の3つに分けなさい。
ア 庭に咲ける花 イ 鞠をける人 ウ 花ぞ昔の香ににほひける(自作・百人一首35番)答えと解説を見る
ア=四段「咲く」の已然形「咲け」の語尾+完了・存続「り」の連体形「る」(「咲いている花」)。イ=動詞「蹴る」の連体形(下の「人」にかかる)。ウ=過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形(上の「にほひ」は連用形、「ぞ」の結び)。
- 平安時代の「蹴る」と現代語の「蹴る」は、活用の種類がちがいます。それぞれの活用の種類を答え、未然形の形のちがいを例で示しなさい。
答えと解説を見る
平安時代はカ行下一段で未然形は「け」(蹴ず)。現代語は五段で未然形は「蹴ら」(蹴らない)。中世以降に四段化したと説明されます。さらに古くはワ行下二段「くう」だったとする説もあります。
関連ページ
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- 助動詞「き・けり」:過去・詠嘆の「けり」と「ける」
- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 徒然草 第百八十八段
兼好法師の文章を読む - 国語のまとめ
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よくある質問
下一段活用の動詞は何語ありますか?
古文では「蹴る」1語だけです。活用はカ行下一段で、け・け・ける・ける・けれ・けよと変わります。
下一段活用と下二段活用の違いは?
どちらも「ず」をつけるとエ段になりますが、下一段は終止形が「蹴る」(〜eる)、下二段は「受く」のようにウ段で終わり、連体形が「受くる」になります。
現代語の「蹴る」は何活用ですか?
五段活用です(蹴らない・蹴って)。古文の「蹴る」は下一段で、蹴ず・蹴てと活用します。中世以降に四段化したと説明されます。
「ける」が動詞の「蹴る」か助動詞の「けり」かはどう見分けますか?
上の語を見ます。連用形の下の「ける」は過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形です。鞠などを蹴る動作を表すときだけ動詞「蹴る」です。
「蹴る」は昔から下一段活用ですか?
平安時代の文章では下一段です。それより古くはワ行下二段「くう」だったとする説が広く知られていますが、くわしい経過は説が分かれます。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:百人一首(35・37番、ほか6・23・28・31・74番に言及)、徒然草(第五十二段)。「蹴る」の活用の例文は自作。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(下一段活用・「ける」の識別)にもとづいて作成。「蹴る」の活用の歴史、中大兄皇子の「打毬」、地名「蹴上」の由来は諸説あり
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 037」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)。蹴鞠の図は自作
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



