この公式のポイント
- データが出る確率(密度)の積を最大にする
- 対数をとって微分(積が和になる)
- 正規分布の σ^2 は n で割る(不偏ではない)
- 一様分布などは微分では求まらない

うかるくん
最尤推定で、尤度の対数をとってから微分するのはなぜ?
![合格先生]()
合格先生
log は増加関数だから、最大になる場所は変わらない。しかも積が和になって、微分がぐっと楽になるんだ。
最尤推定の考え方と公式
データ x1,⋯,xn が得られたとき、「このデータが出る確率(密度)がいちばん大きくなるパラメータ」を推定値にするのが最尤(さいゆう)推定です。
最尤推定量
確率関数(または密度)f(x;θ) から独立に得たデータ x1,⋯,xn について
L(θ)=i=1∏nf(xi;θ)(尤度関数),ℓ(θ)=logL(θ)=i=1∑nlogf(xi;θ)L(θ) を最大にする θ^ が最尤推定量。多くの場合、尤度方程式 dθdℓ=0 を解いて求める。
代表的な結果
ベルヌーイ: p^=nk,ポアソン: λ^=xˉ,指数分布: λ^=xˉ1正規分布: μ^=xˉ,σ^2=n1i=1∑n(xi−xˉ)2
10回中7回表:尤度 L(p)=p7(1−p)3 は p=0.7 で最大
log は増加関数なので、L と ℓ=logL は同じ θ で最大になります。積が和になるので、対数をとってから微分するのが基本の手順です。
なぜその式になるのか(証明)
① ベルヌーイ(コイン):p^=nk
n 回中 k 回成功なら L(p)=pk(1−p)n−k、ℓ(p)=klogp+(n−k)log(1−p)(0<k<n とする)。
ℓ′(p)=pk−1−pn−k=p(1−p)k−np
p<nk で ℓ′>0、p>nk で ℓ′<0 なので、p=nk で最大です(増減表で確かめる)。直観どおり「成功した割合」が推定値になります。
② 正規分布:μ^=xˉ、σ^2=n1∑(xi−xˉ)2
v=σ2 とおくと
ℓ(μ,v)=−2nlog(2πv)−2v1i=1∑n(xi−μ)2
μ で偏微分して 0:v1∑(xi−μ)=0 より μ^=xˉ。どの v でも ∑(xi−μ)2 は μ=xˉ で最小なので、これが μ についての最大です。
次に μ=xˉ として v で微分して 0:−2vn+2v2S=0(S=∑(xi−xˉ)2)より v^=nS。v<nS で増加、v>nS で減少なので最大です。
正規分布の μ の最尤推定:各データでの密度の高さの積が最大になるのは μ=xˉ
③ σ^2 は不偏ではない
X1,⋯,Xn が独立で平均 μ、分散 σ2 のとき、∑(Xi−Xˉ)2=∑(Xi−μ)2−n(Xˉ−μ)2 と変形でき、E[(Xi−μ)2]=σ2、E[(Xˉ−μ)2]=V[Xˉ]=nσ2 なので
E[i=1∑n(Xi−Xˉ)2]=nσ2−σ2=(n−1)σ2
よって E[σ^2]=nn−1σ2 で、少し小さめに偏ります。偏りをなくしたのが不偏分散 s2=n−11∑(xi−xˉ)2 です。
大学院入試では
院試では「尤度関数を書く → 対数をとる → 微分して0 → 最大であることを確かめる」の4段を答案に書けるかが問われます。
大学院入試例題1(ポアソン分布)
ポアソン分布
Po(λ) から独立に得たデータ
x1,⋯,xn について、
λ の最尤推定量を求めなさい。また、データが
2, 0, 3, 1, 4 のときの推定値を求めなさい。
解き方
L(λ)=i=1∏ne−λxi!λxi、ℓ(λ)=−nλ+(∑xi)logλ−∑log(xi!)。
ℓ′(λ)=−n+λ∑xi=0 より λ=xˉ。ℓ′ は λ<xˉ で正、λ>xˉ で負なので最大(xˉ>0 のとき)。
データでは xˉ=52+0+3+1+4=2。
答え λ^=xˉ、推定値は 2
大学院入試例題2(指数分布)
指数分布(密度
λe−λx)から得たデータ
1.2, 0.8, 2.5, 1.5 について、
λ の最尤推定値を求めなさい。
解き方
ℓ(λ)=nlogλ−λ∑xi。ℓ′(λ)=λn−∑xi=0 より λ^=∑xin=xˉ1(ℓ′ は減少関数なのでここで最大)。
∑xi=6.0、xˉ=1.5 より λ^=1.51=32。
答え λ^=32
大学院入試例題3(正規分布の平均と分散)
正規分布
N(μ, σ2) から得たデータ
2, 3, 5, 6, 9 について、
μ, σ2 の最尤推定値と、不偏分散を求めなさい。
解き方
μ^=xˉ=525=5。
偏差は −3, −2, 0, 1, 4 で、2乗の和は 9+4+0+1+16=30。
σ^2=530=6、不偏分散 s2=430=7.5。
答え μ^=5、σ^2=6(不偏分散は 7.5)
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:「数理統計学」「統計学」の点推定で学びます。機械学習でも、ロジスティック回帰などのパラメータを決める基本の考え方として出てきます。
- 答案で示すべきこと:①尤度関数 L(θ) ②対数尤度 ℓ(θ) ③尤度方程式とその解 ④それが最大であること(増減か2階微分の符号)。④を書き忘れる答案が多いです。
- よくある出題の形:ポアソン・指数・正規・幾何分布の最尤推定量/不偏性の判定(E[θ^]=θ か)/一様分布 U(0, θ) のように微分では求まらない場合(練習問題1)/信頼区間・検定との組み合わせ。
- 性質(証明は略):適当な条件のもとで、最尤推定量は n→∞ で真の値に近づき(一致性)、分布は正規分布に近づくことが大学の授業で示されます。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
何でも微分して0とするな。一様分布 U(0, θ) では微分が0の点はなく、最大のデータが推定値だぞ。
- 何でも微分して0とする:一様分布 U(0, θ) の尤度は θ≥maxxi で θ−n(減少)なので、微分が0になる点はなく、θ^=maxxi です。
- σ^2 を不偏分散と思う:最尤推定量は n で割り、不偏分散は n−1 で割ります。E[σ^2]=nn−1σ2 です。
- 尤度を足し算で書く:独立なデータの尤度は密度の積です。和になるのは対数をとったあとです。
練習問題
![ひらめいたうかるくん]()
- 大学院入試 一様分布 U(0, θ)(密度 θ1、0≤x≤θ)から得たデータ 3.1, 0.4, 2.2, 4.7 について、θ の最尤推定値を求めなさい。
答えと解説を見る
L(θ)=θ−4(θ≥ すべてのデータ)、それ以外は 0。θ−4 は減少関数なので、できるだけ小さい θ、つまり最大のデータで最大。答え θ^=4.7 - 大学院入試 ある試行を20回行ったところ6回成功した。成功確率 p の最尤推定値を求めなさい。
答えと解説を見る
ℓ(p)=6logp+14log(1−p)、ℓ′(p)=p6−1−p14=0 より p=206。答え p^=0.3 - 大学院入試 幾何分布 P(X=k)=(1−p)k−1p(k=1,2,⋯)から得たデータ 3, 1, 4, 2 について、p の最尤推定値を求めなさい。
答えと解説を見る
ℓ(p)=(∑ki−n)log(1−p)+nlogp、ℓ′=0 より p^=∑kin=kˉ1。kˉ=2.5 なので答え p^=0.4
関連する公式
よくある質問
最尤推定とは?
得られたデータが出る確率(密度)の積である尤度関数を考え、それを最大にするパラメータの値を推定値とする方法です。
なぜ対数をとるのですか?
logは増加関数なので最大になる場所は変わりません。積が和になって微分しやすくなるからです。
正規分布の分散の最尤推定量と不偏分散の違いは?
最尤推定量は偏差の2乗和をnで割り、不偏分散はn−1で割ります。最尤推定量の期待値は(n−1)σ²/nで、少し小さめに偏ります。
尤度方程式が使えないのはどんなときですか?
一様分布U(0,θ)のように、尤度が範囲の端で最大になるときです。この場合は最大のデータが最尤推定量になります。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦