この公式のポイント
- 期待値はいつでも線形:E[aX+b]=aE[X]+b
- 分散はa2 倍、+b では変わらない
- 和の分散は独立なら足し算(一般には共分散が加わる)
- 密度の変換は分布関数を微分して dydx 倍

うかるくん
密度の変数変換で、どうして dydx をかけるの?
![合格先生]()
合格先生
分布関数 FY(y) を X で書いて y で微分するからだ。減少関数だと符号が変わるので、まとめて絶対値にするんだぞ。
期待値・分散の公式と変数変換の公式
確率変数 X から新しい確率変数 Y=g(X) を作ったとき、平均・分散・分布がどう変わるかをまとめます。院試の確率統計で、すべての計算の土台になる公式です。
期待値・分散(a, b は定数)
E[aX+b]=aE[X]+b,V[aX+b]=a2V[X]V[X]=E[X2]−(E[X])2E[X+Y]=E[X]+E[Y](いつでも)V[X+Y]=V[X]+V[Y]+2Cov(X,Y),Cov(X,Y)=E[XY]−E[X]E[Y]X, Y が独立なら E[XY]=E[X]E[Y]、Cov(X,Y)=0 で、V[X+Y]=V[X]+V[Y]。
確率密度の変数変換(1変数)
X の確率密度関数を fX(x)、g を単調で微分できる関数とし、Y=g(X)、x=g−1(y) とすると
fY(y)=fX(g−1(y))dydx
Y=2X+1:平均は 2E[X]+1、値の間隔が2倍になるので分散は 22=4 倍
なぜ成り立つのか(証明)
連続型(確率密度関数 f(x))で示します。離散型は積分を和にかえれば同じです。
① 期待値の線形性
E[aX+b]=∫(ax+b)f(x)dx=a∫xf(x)dx+b∫f(x)dx=aE[X]+b(∫f(x)dx=1 を使う)。
② 分散の公式
μ=E[X] とすると V[X]=E[(X−μ)2]=E[X2]−2μE[X]+μ2=E[X2]−μ2。
また aX+b の平均は aμ+b なので V[aX+b]=E[(aX+b−aμ−b)2]=a2E[(X−μ)2]=a2V[X]。+b は全体をずらすだけで、散らばりを変えません。
③ 和の分散
μX=E[X]、μY=E[Y] として V[X+Y]=E[{(X−μX)+(Y−μY)}2] を展開すると V[X]+V[Y]+2E[(X−μX)(Y−μY)]。最後の期待値が共分散で、展開すると E[XY]−μXμY です。独立なら同時密度が fX(x)fY(y) と積になるので E[XY]=∬xyfX(x)fY(y)dxdy=E[X]E[Y] となり、共分散は 0 です。
④ 密度の変数変換:分布関数を経由する
g が増加関数のとき、Y≤y⟺X≤g−1(y) なので
FY(y)=P(Y≤y)=P(X≤g−1(y))=FX(g−1(y))
y で微分すると(合成関数の微分)fY(y)=fX(g−1(y))dydx。g が減少関数なら Y≤y⟺X≥g−1(y) で FY(y)=1−FX(g−1(y)) となり、微分すると −dydx(これは正)がつきます。2つの場合をまとめたのが絶対値 dydx です。
直観的には、「x の幅 dx にある確率 fX(x)dx」が「y の幅 dy」に移るので、密度は dydx 倍になります。
例題1:X が一様分布のとき Y=X2 の密度は 1/(2y)。0 の近くに確率が集まる
大学院入試では
大学院入試例題1(一様分布の2乗)
X が区間
[0, 1] の一様分布にしたがうとき、
Y=X2 の確率密度関数を求めなさい。また
E[Y] を2通りで計算しなさい。
解き方
0≤x≤1 で y=x2 は増加関数、x=y、dydx=2y1。fX=1 なので fY(y)=2y1(0<y≤1)、それ以外は 0。
fY から:E[Y]=∫01y⋅2y1dy=∫012ydy=31。
X から直接:E[X2]=∫01x2dx=31。一致する。
答え fY(y)=2y1 (0<y≤1)、E[Y]=31
大学院入試例題2(一様分布から指数分布を作る)
X が区間
(0, 1) の一様分布にしたがうとき、
Y=−logX の確率密度関数を求めなさい。
解き方
y=−logx は減少関数で、y は 0<y<∞ を動く。x=e−y、dydx=−e−y。
fY(y)=fX(e−y)∣−e−y∣=1⋅e−y(y>0)。
これはパラメータ 1 の指数分布。一様乱数から指数分布の乱数を作る方法(逆関数法)の基本の形である。
答え fY(y)=e−y (y>0)(指数分布)
大学院入試例題3(独立な確率変数の1次結合)
X, Y は独立で、
E[X]=2、
V[X]=1、
E[Y]=3、
V[Y]=4 とする。
Z=3X−2Y+1 の平均と標準偏差を求めなさい。
解き方
E[Z]=3⋅2−2⋅3+1=1。
独立なので V[Z]=32V[X]+(−2)2V[Y]=9+16=25。係数は2乗するので、引き算でも分散は足し算になる。
答え 平均 1、標準偏差 5
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:「確率論」「確率統計」「数理統計学」の最初に学びます。高校の期待値・分散の公式を、連続型と2変数に広げたものです。
- 答案で示すべきこと:変数変換では、①g が単調な範囲 ②Y の値の範囲(定義域)③dydx の計算、を書きます。Y の範囲の書き忘れが多い減点ポイントです。
- 単調でないとき:Y=X2 で X が負の値もとるときは、x=±y の2つの枝の和 fY(y)=2yfX(y)+fX(−y) にします(練習問題2)。迷ったら分布関数 FY(y) から計算するのが確実です。
- 2変数のとき:(X, Y) から (U, V) への変換では、dydx の代わりにヤコビアンの絶対値をかけます。和 X+Y の分布(たたみこみ)もこの形で出せます。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
V[aX+b] は aV[X]+b ではない。分散は a2 倍で、b は消えるんだぞ。
- V[aX+b]=aV[X]+b とする:分散は a2 倍で、b は消えます。V[−X]=V[X] です。
- 独立でないのに V[X+Y]=V[X]+V[Y] とする:一般には 2Cov(X,Y) が加わります。期待値の和 E[X+Y]=E[X]+E[Y] は独立でなくても成り立ちます。
- dydx をかけ忘れる:fY(y)=fX(g−1(y)) だけでは、全体の積分が 1 になりません。
練習問題
![指さして説明するサクラちゃん]()
サクラちゃん
Y の値の範囲も忘れずに書こうね。
- 大学院入試 さいころを1回投げて出る目を X とする。E[X]、V[X] と、Y=2X+1 の平均・分散を求めなさい。
答えと解説を見る
E[X]=61+2+⋯+6=27、E[X2]=691 より V[X]=691−449=1235。E[Y]=2⋅27+1=8、V[Y]=4⋅1235=335 - 大学院入試 X が標準正規分布 N(0, 1) にしたがうとき、Y=X2 の確率密度関数を求めなさい。
答えと解説を見る
y>0 で FY(y)=P(−y≤X≤y)=FX(y)−FX(−y)。微分して fY(y)=2yfX(y)+fX(−y)=2πy1e−2y(y>0)。これは自由度 1 のカイ2乗分布 - 大学院入試 X が区間 [0, 2] の一様分布にしたがうとき、Y=3X+1 の確率密度関数と分散を求めなさい。
答えと解説を見る
x=3y−1、dydx=31、fX=21 より fY(y)=61(1≤y≤7)。V[X]=1222=31 なので V[Y]=9⋅31=3(区間 [1, 7] の一様分布の分散 1262=3 とも一致)
関連する公式
よくある質問
V[aX+b]=a²V[X] になるのはなぜですか?
aX+b の平均は aE[X]+b なので、平均からのずれは a(X−E[X]) になります。分散はずれの2乗の平均なので a² 倍になり、b は消えます。
確率密度の変数変換の公式はどうやって導きますか?
分布関数 F_Y(y)=P(g(X)≦y) を X の分布関数で書き、y で微分します。g が減少関数のときは符号が変わるので、まとめて |dx/dy| と書きます。
V[X+Y]=V[X]+V[Y] はいつ成り立ちますか?
共分散が0のとき、特に X と Y が独立なときに成り立ちます。一般には 2Cov(X,Y) が加わります。
Y=X² のように単調でない変換はどうしますか?
x=±√y の2つの枝の寄与を足します。分布関数 F_Y(y)=P(−√y≦X≦√y) から微分すると確実です。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦