
この記事の結論
- 数学のICT教材(デジタル教材)とは、タブレットやパソコンで問題を選んでプリントを作る・採点する・弱点を分析するための教材です。先生が使う型と、生徒が自分で使う型があります。
- 大事なのは道具より使い方です。まちがえた問題の類題をくり返し解いて○に変えることが、数学の力につながります。
この記事は、2024年1月に「最短30秒でオリジナル教材を作成できる数学特化ICT教材「数学バンク」」として、先生向けの数学のサービスを紹介したものです。数学バンクは、その後サービスを終了しました。
そこで2026年10月に、題材を広げて書き直しました。「数学のICT教材とは何か」「塾や学校でどう使うか」「どう選ぶか」を図で説明し、受験生向けに「プリントの類題演習のしかた」も足しました。2024年当時の紹介は、短くまとめて残しています。
数学のICT教材とは|デジタル教材の2つのタイプ
ICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報通信技術」です。ICT教材は、タブレット・パソコンなどの情報機器を使う教材のことで、デジタル教材とも呼ばれます。
文部科学省の「GIGAスクール構想」で、小学校・中学校では1人1台の端末が整えられました。今の生徒は、生まれたときからスマートフォンやパソコンに囲まれて育っています。一方で、教える側には紙の問題集や手作りのプリントも多く残っています。この「すき間」を埋めるのが、数学のICT教材です。
先生が使う型:プリント作り・採点・分析
先生が、単元や難しさを選んで問題プリントを作る型です。採点の結果を記録して、どの問題をまちがえたかをまとめる機能もよくあります。生徒は紙のプリントで解くので、ふだんの授業とあまり変わりません。2024年に紹介した数学バンクは、こちらの型でした。
生徒が使う型:画面で解いて自動採点
生徒がタブレットで問題を解き、その場で正解・不正解が分かる型です。解説や動画で学び直せるものもあります。自分のペースで進められる反面、一人で続けるのが難しいという面もあります。元の記事でも、「多くの生徒は自分だけでは勉強を続けにくく、先生の手助けが必要だ」という考えが書かれていました。
どちらの型でも、数学の中身は同じです。今の高校数学は、学習指導要領で数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学A・数学B・数学Cに分かれています。単元の全体像は「数学まとめ」で、学年別・分野別に見られます。
数学バンクとは|2024年当時に紹介した数学特化ICT教材(今はサービス終了)
ここからは、2024年1月の元の記事で紹介した内容を、短くまとめて残します。今はサービスが終了しているので、使うことはできません。ICT教材がどんなことをめざしていたかの一例として読んでください。

先生をターゲットにしたICT教材
数学バンクは、学習塾や学校の数学の先生のために作られた、数学に特化したAI教育支援ツールでした。ほかの多くのICT教材が「生徒の自主学習」を支えるのに対し、数学バンクは先生の仕事を減らすことに焦点を当てていた点が、当時の大きな特徴でした。先生がプリント作りなどから解放され、目の前の生徒との生身のやり取りに集中できるようにする、というのがサービスのねらいでした。
主な機能(2024年当時)
- 教材作成:単元・問題のタイプ・難易度・問題数を選ぶと、最短30秒でオリジナルのプリントが作れる。
- 市販教材連携:市販の教材や教科書と連動していて、生徒が使っている教材に合わせた類題を最短2ステップで作れる。
- 正解率の表示:問題ごとに正解率が表示され、どんな問題が苦手かがデータで分かる。
- 誤答の分析:生徒の誤答を管理し、弱点をまとめた分析レポートを作れる。


導入した塾の先生の声(2024年当時の記事から)
元の記事では、数学バンクを使っていた塾の先生の声を紹介していました。要点は次のとおりです。
- 導入前の悩み:個別指導では生徒一人一人に合わせるため、講師ごとの指導力の差が出やすかった。経験の浅い講師が、いきなり難しい問題を出してしまい、生徒が小さな成功体験を積めないこともあった。
- 導入後の変化:講師が変わっても、生徒のレベルに合ったプリントを出せるようになった。授業準備の手間が省け、生徒の質問に答える時間や講師どうしで話す時間が増えた。
- 保護者面談:弱点を分析したレポートを使い、生徒の強みと弱みを客観的なデータで伝えられるようになった。
2026年の注:元の記事にあった、外部のブログのレビュー記事3本の紹介とリンクは外しました。数学バンクはサービスを終了しています。
数学 ICT教材の使い方|塾・学校での活用
サービスが終わっても、元の記事が取り上げた先生の悩みはなくなっていません。ICT教材は、その悩みを軽くするための道具です。

先生の悩み:授業準備に時間がかかる
元の記事では、塾の先生の一日がこう書かれていました。授業のほかに、授業準備・生徒の日報づくり・保護者面談がある。夏休みなどはコマが増え、授業と授業の間が10分ほどしかないこともある。その10分で前の授業の報告書を書き、次の授業の準備をする。とくにやる気のある若い講師ほど、生徒一人一人に合わせたオリジナル教材を作るのに時間がかかってしまう、というものです。
生徒の悩み:どこが分からないのか分からない
「数学が苦手」という生徒の多くは、どこまで分かっていて、どこからが分かっていないのかを自分でつかめていません。そこで先生が「何が分からないのか」を見つけ、苦手な単元の問題をくり返し解かせて定着させる必要があります。この「見つける」と「くり返す」の両方を手伝うのが、数学のICT教材です。
使い方の基本:サイクルを回す
図3のように、授業→小テスト→採点・記録→弱点を分析→類題プリント→もう一度テストの順に回します。ポイントは「弱点を見つけて終わり」にしないことです。見つけた弱点を、類題で○になるまでくり返すところまでがセットです。記録が残っていれば、保護者面談や志望校の相談のときにも、勘ではなくデータで話ができます。
「積分の計算がどうしても苦手」なら計算の類題だけを、「応用問題で実戦力をつけたい」なら難しめの問題だけを集める、というように、生徒ごとにちがうプリントを作れるのがデジタルの強みです。
うかるくん
ICT教材って、タブレットで勉強すれば自動で数学ができるようになる道具なんですか?
合格先生
そうではないんだ。ICT教材がしてくれるのは、問題を集める・採点する・まちがいを記録するところまで。
うかるくん
じゃあ、できるようになるのは……。
合格先生
きみがまちがえた問題を、自分の手で解き直すときだよ。道具は「どこを解き直せばいいか」を早く教えてくれるだけなんだ。
数学 ICT教材の選び方|5つのチェックポイント
ICT教材は、塾や学校が選ぶことが多いですが、家庭で使うものを選ぶこともあります。ここでは、特定の商品ではなく、どんな教材にも当てはまるチェックポイントを5つ挙げます(図4)。
1.今の教科書・問題集と合うか
高校数学は学習指導要領が変わり、今は数学Ⅰ〜Ⅲ・A〜Cです。古い課程のままの問題だと、範囲がずれることがあります。また、元の記事の数学バンクが「市販教材連携」を強みにしていたように、ふだん使っている教科書や問題集と合わせられるかは大事です。
2.単元・難易度を細かく選べるか
苦手な所だけをねらって練習できるかどうかです。「二次関数の最大・最小だけ」「数列の漸化式だけ」のように細かく選べると、類題演習がしやすくなります。用語や公式の意味で迷ったら「数学用語辞典」「算数・数学公式辞典」で確かめましょう。
3.紙に印刷して使えるか
入試の数学は、紙に式を書いて答案を作ります。とくに国公立大学の2次試験のような記述式では、途中の式の書き方も点数に関わります。画面でタップして答えるだけの練習では、この力はつきにくいです。答案の書き方は「京大数学の解き方・時間配分・答案の書き方」も参考になります。
4.記録と分析が見やすいか
どの問題をまちがえたか、何回目で解けたかが一目で分かることが大切です。分析の画面が細かすぎると、かえって見なくなります。
5.サービスが終わっても困らないか
数学バンクのように、ICT教材のサービスは終わることがあります。終わると、作ったプリントや記録が画面から見られなくなるおそれがあります。図5の3つの備えをしておくと安心です。
いちばん大事なのは3つ目の「軸は教科書と問題集」です。数学の参考書選びの軸は「青チャートと1対1対応の演習」、段階ごとの1冊は「京大数学の参考書ロードマップ」で紹介しています。デジタル教材は、その軸を助ける道具として使いましょう。

合格先生
ICT教材は「どこを解き直すか」を早く見つける道具。解き直すのは、いつだってきみの手と頭なんだ。
数学 プリントの類題演習のしかた|受験生向け
ここからは受験生向けです。塾や学校でプリントを配られたとき、ICT教材で作られたものでも、手作りのものでも、やり方しだいで力のつき方が大きく変わります。

手順1:まちがえた問題に×をつける
プリントを解いたら、まちがえた問題に×、正解でも迷った問題に△をつけます。△を作るのがコツです。正解しても迷った問題は、本番では落とすことがあります。
手順2:その日のうちに解き直す
解答を読んで「分かった」と思っても、それはまだ「読めた」だけです。解答を閉じて、白い紙に最初から書くのが解き直しの基本です。手が止まった所が、本当の弱点です。
手順3:次の日に類題を1〜2問
同じ問題をもう一度解くと、答えを覚えてしまっていることがあります。そこで、数字や設定を少し変えた類題を解きます。ICT教材で類題を出してもらえるならそれを使い、なければ問題集の同じ単元の例題・練習問題を使います。類題が解けて初めて、「解き方が身についた」と言えます。
手順4:3日後と1週間後にもう一度
人は、一度覚えたことも時間がたつと忘れます。3日後に何も見ずにもう一度、1週間後に最後の確認をします。4回とも解けたら×を○に変えます。途中で解けなければ、また「その日」からやり直します。
この「印をつけて回す」やり方は、「入試直前期の勉強法」でも図にしています。数学の勉強全体の流れは「数学の勉強法」、京大志望の人の数学の進め方は「京大 数学 勉強法」や「京大受験(理系・数学)おすすめ参考書・勉強法」にまとめています。
サクラちゃん
塾で配られたプリント、丸つけして終わりにしていました。×の問題は解答を読んで分かった気になって……。
合格先生
多くの人がそこで止まってしまうんだ。プリントは×がついてからが本番だよ。
サクラちゃん
その日に解き直して、次の日に類題、3日後と1週間後……ですね。
合格先生
そのとおり。×の問題だけをノートにまとめておくと、テスト前や入試の直前に見直す自分だけの問題集になるよ。
サクラちゃん
プリントの×を集めれば、自分専用の教材ができるんですね!
×の問題を集めた「自分だけの問題集」
×がついた問題は、ノートに切り貼りしたり書き写したりして1か所に集めましょう。弱点だけを集めた問題集は、市販のどの本よりも自分に合った教材になります。ノートの作り方は「東大合格生のノートはかならず美しい」、勉強の記録のつけ方は「勉強記録(勉強ログ)のつけ方」が参考になります。
共通テストの数学でも同じ
大学入学共通テスト(共通テスト、旧センター試験)の数学は、「数学Ⅰ,数学A」と「数学Ⅱ,数学B,数学C」です。マーク式でも、まちがえた問題を類題で○にしていくやり方は変わりません。共通テストに向けた学年別の計画は「共通テストの勉強法の全体像」をご覧ください。

サクラちゃん
プリントは「丸つけで終わり」じゃなくて「×から始まり」。×を○に変えた数だけ、数学が得意になるんですね!
まとめ|数学のICT教材は「解き直し」を助ける道具
- 数学のICT教材は、問題を集める・プリントを作る・採点する・弱点を分析するための道具。先生が使う型と生徒が使う型がある。
- 2024年に紹介した数学バンクは、先生向けに「最短30秒でオリジナル教材」「市販教材連携で類題を最短2ステップ」をめざしたサービスだった(今はサービス終了)。
- 選ぶときは、今の課程に合うか・細かく選べるか・紙で使えるか・記録が見やすいか・終わっても困らないかの5つを確かめる。
- 受験生は、プリントの×の問題をその日・次の日(類題)・3日後・1週間後の4回たたいて○に変える。
数学の勉強法をもっと読みたい人は、「数学の勉強法」の一覧もどうぞ。勉強の進め方で迷ったら、「受験の質問・相談」からご相談ください。受験生どうしの情報交換は、受験掲示板「100点BBS」の京都大学受験掲示板などでもできます。
よくある質問
数学のICT教材とは何ですか?
タブレットやパソコンを使って、数学の問題を選んでプリントを作ったり、採点したり、弱点を分析したりする教材です。デジタル教材とも呼ばれます。
数学バンクは今も使えますか?
使えません。2024年1月にこの記事で紹介した「数学バンク」は、その後サービスを終了しました。
数学のICT教材を選ぶときは何を見ればいいですか?
今の課程(数学Ⅰ〜Ⅲ・A〜C)や使っている教科書に合うか、単元や難易度を細かく選べるか、紙に印刷できるか、記録が見やすいか、サービスが終わっても困らないかを確かめましょう。
プリントでまちがえた問題はどう復習すればいいですか?
その日に解答を閉じて解き直し、次の日に類題を1〜2問、3日後と1週間後に何も見ずにもう一度解きます。全部解けたら×を○に変えます。
タブレットだけで数学の勉強をしてもいいですか?
入試の数学は紙に式を書いて答える力が必要なので、紙に書いて解く練習も欠かせません。デジタル教材は、どこを解き直すかを見つける道具として使うのがおすすめです。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「GIGAスクール構想」(1人1台端末の整備)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」(数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C)
- 大学入試センター「令和9年度大学入学共通テスト」の出題教科・科目(数学の科目名)
- 元の記事:大学受験合格大作戦「最短30秒でオリジナル教材を作成できる数学特化ICT教材「数学バンク」」(2024年1月15日)。写真は元の記事のもの。図は大学受験合格大作戦が作成
最終更新:2026年10月22日/作成:大学受験合格大作戦











