徒然草「平宣時朝臣(味噌)」原文と現代語訳(印刷用・A4)

 徒然草「平宣時朝臣(味噌)」の解説ページ(文法・問題つき)へ戻る

原文は教科書で広く読まれる形に整えたもの(本によって語句が少しちがいます)、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。

原文現代語訳
1平宣時朝臣、老いの後、昔語りに、平宣時朝臣が、年をとってから、昔話として(こう語った)、
2「最明寺入道、ある宵の間に呼ばるる事ありしに、『やがて』と申しながら、直垂のなくて、とかくせしほどに、「最明寺入道(北条時頼)に、ある晩、呼ばれることがあったときに、『すぐに(参ります)』と申し上げながら、(ちょうどよい)直垂がなくて、あれこれしていたうちに、
3また使ひ来たりて、『直垂などの候はぬにや。夜なれば異様なりとも、とく』とありしかば、また使いの者が来て、『直垂などがございませんのでしょうか。夜なのだから、変なかっこうでもかまわないから、早く』とのことだったので、
4なえたる直垂、うちうちのままにてまかりたりしに、銚子に土器取り添へて持て出でて、よれよれの直垂で、ふだん着のままで参上したところ、(時頼は)銚子に素焼きのさかずきを添えて持って出て来て、
5『この酒をひとりたうべんがさうざうしければ、申しつるなり。肴こそなけれ、人は静まりぬらん。さりぬべき物やあると、いづくまでも求めたまへ』とありしかば、『この酒をひとりで飲むのが物足りなくさびしいので、お呼びしたのだ。さかなはないが、家の者はもう寝静まってしまっているだろう。(さかなに)ちょうどよい物があるかと、どこまでもさがしてください』とのことだったので、
6紙燭さして、隅々を求めしほどに、台所の棚に、小土器に味噌の少しつきたるを見出でて、『これぞ求め得て候ふ』と申ししかば、紙燭をともして、すみずみまでさがしたところ、台所の棚に、小さな素焼きの皿に味噌が少しついているのを見つけて、『これを見つけてまいりました』と申し上げたところ、
7『事足りなん』とて、心よく数献に及びて、興に入られはべりき。(時頼は)『それで十分だろう』と言って、気持ちよく何杯も杯をかさねて、上きげんでいらっしゃいました。
8その世にはかくこそはべりしか」と申されき。あのころは、このよう(に質素なもの)でございました」と(宣時は)申された。