原文は教科書で広く読まれる形に整えたもの(本によって語句が少しちがいます)、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。
| 原文 | 現代語訳 | |
|---|---|---|
| 1 | 世に従はん人は、まづ機嫌を知るべし。 | 世の中の流れに合わせて生きていこうとする人は、まず物事の時機を知らなければならない。 |
| 2 | ついで悪しき事は、人の耳にも逆ひ、心にもたがひて、その事成らず。さやうの折節を心得べきなり。 | 順序(タイミング)の悪いことは、人の耳にもさからい、気持ちにも合わなくて、そのことはうまくいかない。そういう時機をよく心得なければならないのである。 |
| 3 | ただし、病を受け、子生み、死ぬる事のみ、機嫌をはからず、ついで悪しとてやむことなし。 | ただし、病気になること、子を産むこと、死ぬことだけは、時機を考えてはくれず、順序が悪いからといってやめになることはない。 |
| 4 | 生・住・異・滅の移り変はる、まことの大事は、猛き川のみなぎり流るるがごとし。しばしもとどこほらず、ただちに行ひゆくものなり。 | 生まれ、とどまり、変わり、滅びるという、移り変わっていく本当に大切なことは、勢いの強い川があふれんばかりに流れるようなものである。少しの間もとどまらず、まっすぐに進んでいくものである。 |
| 5 | されば、真俗につけて、必ず果たし遂げんと思はん事は、機嫌を言ふべからず。とかくの用意なく、足を踏みとどむまじきなり。 | だから、仏道のことでも世俗のことでも、必ずやりとげようと思うことは、時機を問題にしてはならない。あれこれと準備などせずに、足を止めてはならないのである。 |
| 6 | 春暮れてのち夏になり、夏果てて秋の来るにはあらず。春はやがて夏の気をもよほし、夏より既に秋は通ひ、秋はすなはち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ。 | 春が終わってから夏になり、夏が終わってから秋が来るのではない。春はそのまま夏の気配をきざし、夏のうちから早くも秋の気配は通い、秋はすぐに寒くなり、十月は小春のおだやかな天気で、草も青くなり、梅もつぼみをつけた。 |
| 7 | 木の葉の落つるも、まづ落ちて芽ぐむにはあらず。下よりきざしつはるに堪へずして落つるなり。 | 木の葉が落ちるのも、まず落ちてから芽が出るのではない。下から(新しい芽が)きざしてふくらんでくる力にこらえきれずに落ちるのである。 |
| 8 | 迎ふる気、下に設けたる故に、待ちとるついで甚だ速し。 | (次のものを)迎える気が、下にもう用意されているので、待ち受けて入れかわる順序は、とても速い。 |
| 9 | 生・老・病・死の移り来る事、またこれに過ぎたり。四季はなほ定まれるついであり。死期はついでを待たず。 | 生まれ、老い、病み、死ぬという移り変わりがやって来ることは、またこれ(四季の移り変わり)以上に速い。四季にはそれでも決まった順序がある。死ぬ時は順序を待たない。 |
| 10 | 死は前よりしも来たらず、かねて後ろに迫れり。 | 死は前からやって来るとはかぎらず、前もって背後にせまっている。 |
| 11 | 人皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来たる。沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるがごとし。 | 人はみな死があることを知っていて、(それを)待つ気持ちがそれほどさしせまっていないうちに、(死は)思いがけずやって来る。(それは)沖の干潟は遠くまで続いているのに、(足もとの)磯のほうから潮が満ちてくるようなものである。 |


