原文は國民文庫本をもとに教科書の形に整えたもの、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。
| 原文 | 現代語訳 | |
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| 1 | その後、翁・嫗、血の涙を流して惑へど、かひなし。あの書き置きし文を読みて聞かせけれど、「何せむにか命も惜しからむ。誰がためにか。何事も用もなし」とて、薬も食はず、やがて起きもあがらず、病み臥せり。 | その後、翁と嫗は、血の涙を流して悲しみに取り乱すけれど、どうしようもない。(かぐや姫が)書き残していった手紙を読んで聞かせたけれど、「何のために命が惜しいだろうか(惜しくない)。だれのために(生きるのか)。何もかも、もうむだだ」と言って、薬も飲まず、そのまま起き上がりもしないで、病気になって寝込んでいる。 |
| 2 | 中将、人々引き具して帰り参りて、かぐや姫を、え戦ひとめずなりぬること、こまごまと奏す。薬の壺に御文添へて参らす。 | 中将は、兵士たちを引き連れて宮中に帰って、かぐや姫を戦って引きとめることができなかったことを、くわしく帝に申し上げる。(かぐや姫が帝に残した不死の)薬の壺に、お手紙を添えて差し上げる。 |
| 3 | 広げて御覧じて、いといたくあはれがらせたまひて、物も聞こしめさず、御遊びなどもなかりけり。 | (帝は手紙を)広げてご覧になって、たいそう深く悲しまれて、お食事も召し上がらず、管弦の遊びなどもなかった。 |
| 4 | 大臣・上達部を召して、「いづれの山か天に近き」と問はせたまふに、ある人奏す、「駿河の国にある山なむ、この都も近く、天も近くはべる」と奏す。 | (帝は)大臣や上達部をお呼びになって、「どの山が天に近いか」とお尋ねになると、ある人が申し上げるには、「駿河の国にある山が、この都からも近く、天にも近うございます」と申し上げる。 |
| 5 | これを聞かせたまひて、 逢ふことも涙に浮かぶ我が身には死なぬ薬も何にかはせむ | (帝は)これをお聞きになって、(歌を詠む。) 「(かぐや姫に)二度と会うこともないので、涙の中に浮かんでいるようなわたしにとって、死なない薬も何の役に立とうか(立ちはしない)」 |
| 6 | かの奉る不死の薬の壺に、御文具して、御使ひに賜はす。勅使には、調の岩笠といふ人を召して、駿河の国にあなる山の頂に持て着くべきよし仰せたまふ。 | あの(かぐや姫が)差し上げた不死の薬の壺に、お手紙を添えて、お使いにお与えになる。勅使には、調の岩笠という人をお呼びになって、駿河の国にあるという山の頂上に持って行くようにとお命じになる。 |
| 7 | 峰にてすべきやう教へさせたまふ。御文、不死の薬の壺並べて、火をつけて燃やすべきよし仰せたまふ。 | 峰ですべきことをお教えになる。お手紙と不死の薬の壺を並べて、火をつけて燃やすようにとお命じになる。 |
| 8 | そのよし承りて、士どもあまた具して山へ登りけるよりなむ、その山を「ふじの山」とは名づけける。その煙、いまだ雲の中へ立ち昇るとぞ、言ひ伝へたる。 | そのご命令をお受けして、兵士たちをたくさん連れて山へ登ったことから、その山を「ふじの山(富士の山)」と名づけた。その煙は、今もまだ雲の中へ立ちのぼっていると、言い伝えている。 |


