枕草子「虫は」原文と現代語訳(印刷用・A4)

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原文は教科書で広く読まれる形(三巻本系)に整えたもの(本によって語句が少しちがいます)、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。

原文現代語訳
1虫は、鈴虫。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひを虫。蛍。虫は、鈴虫(がよい)。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひお虫。蛍。
2蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれもおそろしき心あらむとて、親のあやしき衣ひき着せて、みのむしは、とてもしみじみとかわいそうだ。鬼が生んだので、親に似てこの子もおそろしい心を持っているだろうと思って、親が粗末な着物を着せて、
3「今、秋風吹かむをりぞ来むとする。待てよ。」と言ひおきて、逃げて去にけるも知らず、「もうすぐ、秋風が吹くころに迎えに来ようと思う。待っていなさいよ。」と言い残して、逃げて行ってしまったのも知らないで、
4風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ。」とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり。(みのむしは)秋風の音を聞いてわかって、八月ごろになると、「父よ、父よ」と心細そうに鳴く。たいへんかわいそうだ。
5額づき虫、またあはれなり。さる心地に道心おこして、つきありくらむよ。ぬかずき虫も、またしみじみと感心させられる。あんな(小さな虫の)心で仏を信じる心を起こして、(額を地につけて)おじぎをしてまわっているのだろうよ。
6思ひかけず、暗き所などにほとめきありきたるこそをかしけれ。思いがけず、暗い所などでことことと音をたてて動きまわっているのは、おもしろい。
7蠅こそにくきもののうちに入れつべく、愛敬なきものはあれ。蠅こそは、にくらしいものの中に入れてしまうのがよく、かわいげのないものである。
8人々しう、かたきなどにすべきもののおほきさにはあらねど、秋など、ただよろづの物にゐ、顔などに濡れ足してゐるなどよ。人の名につきたる、いとうとまし。一人前に、敵などにするほどの大きさではないけれど、秋などには、ただもうあらゆる物にとまり、顔などにぬれた足でとまったりするのだよ。人の名前に(蠅という字が)ついているのは、たいへんいやな感じだ。
9夏虫、いとをかしうらうたげなり。火近う取り寄せて物語など見るに、草子の上などに飛びありく、いとをかし。夏の虫は、とても趣があってかわいらしい。灯りを近くに引き寄せて物語などを読んでいると、本の上などを飛びまわるのは、とてもおもしろい。
10蟻は、いとにくけれど、軽びいみじうて、水の上などをただ歩みに歩みありくこそをかしけれ。蟻は、とてもにくらしいけれど、身軽さがたいしたもので、水の上などをどんどん歩きまわるのは、おもしろい。