枕草子「野分のまたの日こそ」原文と現代語訳(印刷用・A4)

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原文は教科書で広く読まれる形(三巻本系)に整えたもの(本によって語句が少しちがいます)、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。

原文現代語訳
1野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。台風の吹いた次の日は、たいそうしみじみとして趣がある。
2立蔀、透垣などの乱れたるに、前栽どもいと心苦しげなり。立蔀や透垣などが(倒れて)乱れているところに、庭の植えこみの草木がとても痛々しいようすだ。
3大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、萩・女郎花などの上に、よろぼひ這ひ伏せる、いと思はずなり。大きな木々も倒れ、枝などが吹き折られているのが、萩や女郎花などの上に、よろけるように横倒しになっているのは、まったく思いもよらない(光景だ)。
4格子の壺などに、木の葉をことさらにしたらむやうに、こまごまと吹き入れたるこそ、荒かりつる風のしわざとはおぼえね。格子の一つ一つのます目などに、木の葉をわざわざ(一枚ずつ)入れたかのように、細かく吹き入れてあるのは、あの荒々しかった風のしわざとは思われない。
5いと濃き衣のうはぐもりたるに、黄朽葉の織物、薄物などの小袿着て、まことしうきよげなる人の、夜は風のさわぎに寝られざりければ、久しう寝起きたるままに、母屋よりすこしゐざり出でたる、とても濃い色の着物の、つやが少しくもっているものに、黄朽葉色の織物や薄い絹の小袿を重ねて着て、本当にきれいな女の人が、夜は風の騒がしさで眠れなかったので、遅くまで寝ていて起きたそのままの姿で、母屋から少しひざで進み出てきたところ、
6髪は風に吹きまよはされて、すこしうちふくだみたるが、肩にかかれるほど、まことにめでたし。髪は風に吹き乱されて、少しふくらんでいるのが、肩にかかっているようすは、本当にすばらしい。
7ものあはれなるけしきに見出だして、「むべ山風を」など言ひたるも、心あらむと見ゆるに、(その人が)しみじみとしたようすで外をながめて、「むべ山風を」などと(古歌を)口ずさんでいるのも、情趣を解する人なのだろうと見えるが、
8十七、八ばかりにやあらむ、ちひさうはあらねど、わざと大人とは見えぬが、生絹の単衣のいみじうほころび絶え、花もかへり濡れなどしたる薄色の宿直物を着て、十七、八歳くらいであろうか、小さくはないけれど、とりたてて大人とは見えない少女が、生絹の単衣のひどくほころびて糸が切れたものや、色もあせて(夜露に)濡れたりしている薄紫色の夜着を着て、
9髪、色に、こまごまとうるはしう、末も尾花のやうにて、丈ばかりなりければ、衣の裾にかくれて、袴のそばそばより見ゆるに、髪はつやつやとして、一本一本までこまやかで美しく、毛先もすすきの穂のようにふさふさしていて、背丈ほどの長さだったので、着物の裾にかくれて、袴のわきのあちこちから見えているが、
10童べ、若き人々の、根ごめに吹き折られたる、ここかしこに取り集め、起こし立てなどするを、うらやましげに押し張りて、簾に添ひたる後ろでもをかし。女の童や若い女房たちが、根こそぎ吹き倒された草木を、あちこちで拾い集めたり、起こして立て直したりしているのを、(自分も庭に出たいと)うらやましそうに(簾を)押し広げて、簾にぴったり寄りそっている後ろ姿も趣がある。