原文は教科書で広く読まれる形(三巻本系)に整えたもの(本によって語句が少しちがいます)、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。
| 原文 | 現代語訳 | |
|---|---|---|
| 1 | うれしきもの。まだ見ぬ物語の一を見て、いみじうゆかしとのみ思ふが、残り見出でたる。さて、心劣りするやうもありかし。 | うれしいもの。まだ読んでいない物語の第一巻を読んで、とても続きが読みたいとばかり思っていたのが、残りの巻を見つけたとき。でも、(読んでみると)期待はずれのこともあるよね。 |
| 2 | 人の破り捨てたる文を継ぎて見るに、同じ続きをあまたくだり見続けたる。 | 人が破り捨てた手紙をつなぎ合わせて読むと、同じ続きの文が何行も読み続けられたとき。 |
| 3 | いかならむと思ふ夢を見て、恐ろしと胸つぶるるに、ことにもあらず合はせなどしたる、いとうれし。 | どうなるのだろうと思うような夢を見て、恐ろしいと胸がどきどきしているときに、(夢解きの人が)たいしたことでもないと夢の意味を解き明かしてくれたのは、とてもうれしい。 |
| 4 | よき人の御前に、人々あまたさぶらふをり、昔ありけることにもあれ、今聞こしめし、世に言ひけることにもあれ、語らせたまふを、我に御覧じ合はせてのたまはせ、言ひ聞かせたまへる、いとうれし。 | 身分の高い方の御前に、女房たちがたくさんお仕えしているとき、昔あったことであっても、最近お聞きになって世間でうわさになったことであっても、お話しになるのを、(その方が)わたしと目をお合わせになっておっしゃり、言い聞かせてくださったのは、とてもうれしい。 |
| 5 | 遠き所はさらなり、同じ都のうちながらも隔たりて、身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞きて、いかにいかにと、おぼつかなきことを嘆くに、おこたりたるよし、消息聞くも、いとうれし。 | 遠い所は言うまでもなく、同じ都の中でも離れて住んでいて、自分にとって大切に思う人が病気だと聞いて、どうだろう、どうだろうと、気がかりなことを嘆いていると、病気がよくなったということを、便りで聞くのも、とてもうれしい。 |
| 6 | 思ふ人の、人にほめられ、やむごとなき人などの、口惜しからぬ者におぼしのたまふ。 | 自分の大切な人が、人にほめられ、身分の高い人などが、(その人を)なかなかの者だとお思いになりおっしゃること。 |
| 7 | もののをり、もしは人と言ひかはしたる歌の聞こえて、打聞などに書き入れらるる。みづからのうへにはまだ知らぬことなれど、なほ思ひやるよ。 | 何かの行事のときの(歌)や、または人とやりとりした歌が評判になって、歌の書きとめ帳などに書き入れられること。自分の身にはまだ経験のないことだけれど、やはり(どんなにうれしいだろうと)想像するよ。 |
| 8 | いたううちとけぬ人の言ひたる古きことの、知らぬを聞き出でたるもうれし。後に物の中などにて見つけたるは、ただをかしう、「これにこそありけれ」と、かの言ひたりし人ぞをかしき。 | あまり親しくない人が言った古い歌や言葉で、知らないものを(その人から)聞いて知ったのもうれしい。あとで本の中などで見つけたときは、ただもうおもしろくて、「これのことだったのだなあ」と、あのとき言っていた人がすてきに思われる。 |
| 9 | 陸奥国紙、ただのも、よき得たる。 | 陸奥国紙や、ふつうの紙でも、よいものを手に入れたとき。 |
| 10 | はづかしき人の、歌の本末問ひたるに、ふとおぼえたる、我ながらうれし。常におぼえたることも、また人の問ふに、清う忘れてやみぬるをりぞ多かる。 | こちらが気おくれするほど立派な人が、和歌の上の句や下の句をたずねたときに、すぐに思い出せたのは、我ながらうれしい。いつも覚えていることでも、いざ人にたずねられると、すっかり忘れてそれきりになってしまうときが多いものだ。 |
| 11 | とみにて求むる物見出でたる。 | 急いでさがしている物を見つけたとき。 |
| 12 | 物合はせ、何くれといどむことに勝ちたる、いかでかうれしからざらむ。 | 物合わせや、あれこれと競い合うことに勝ったのは、どうしてうれしくないことがあろうか、いや、うれしい。 |
| 13 | また、いみじうわれはと思ひてしたり顔なる人、はかり得たる。女どちよりも、男はまさりてうれし。 | また、ひどく自分こそはと思って得意顔をしている人を、うまくだましてやったとき。女どうしよりも、男(をだました時)のほうがいっそううれしい。 |
| 14 | これが答へはかならずせむと思ふらむと、常に心づかひせらるるもをかしきに、いとつれなく、なにとも思ひたらぬさまにて、たゆめ過ぐすも、またをかし。 | (だまされた相手が)このしかえしはきっとしようと思っているだろうと、いつも自然と用心してしまうのもおもしろいが、(相手が)とても平気な顔で、何とも思っていない様子で、こちらを油断させて時を過ごすのも、またおもしろい。 |
| 15 | 憎き者のあしきめ見るも、罪や得らむと思ひながら、またうれし。 | にくらしい者がひどい目にあうのを見るのも、仏の罰を受けるだろうかと思いながら、やはりうれしい。 |
| 16 | もののをりに衣打たせにやりて、いかならむと思ふに、清らにて得たる。さし櫛すらせたるに、をかしげなるもまたうれし。またもあまたあるものを。 | 行事などのときに着物を(つやを出すために)打たせに出して、どうなるだろうと思っていると、きれいに仕上がって受け取ったとき。さし櫛をみがかせたところ、きれいに仕上がったのもまたうれしい。(うれしいことは)ほかにもたくさんあるのに。 |
| 17 | 日ごろ、月ごろしるきことありて、悩みわたるが、おこたりぬるもうれし。思ふ人のうへは、わが身よりもまさりてうれし。 | 何日も、何か月も、はっきりした病気の症状があって、ずっと苦しんでいたのが、治ったのもうれしい。大切に思う人のことは、自分のことよりもいっそううれしい。 |
| 18 | 御前に人々所もなくゐたるに、今のぼりたるは、すこし遠き柱もとなどにゐたるを、とく御覧じつけて、「こち」と仰せらるれば、道あけて、いと近う召し入れられたるこそうれしけれ。 | 中宮さまの御前に女房たちがすきまもなく座っているところに、今参上したばかりの(わたしは)、少し離れた柱のそばなどに座っていたのを、(中宮さまが)すぐにお見つけになって、「こちらへ」とおっしゃるので、(みんなが)道をあけて、とても近くにお呼び入れいただいたのは、本当にうれしい。 |


