原文は教科書で広く読まれる形(三巻本系)に整えたもの(本によって語句が少しちがいます)、現代語訳は合格大作戦のオリジナルです。
| 原文 | 現代語訳 | |
|---|---|---|
| 1 | 草の花は、なでしこ。唐のはさらなり、大和のもいとめでたし。 | 草の花は、なでしこ(がよい)。唐なでしこは言うまでもなく、大和なでしこもとてもすばらしい。 |
| 2 | 女郎花。桔梗。朝顔。刈萱。菊。壺すみれ。 | おみなえし。ききょう。あさがお。かるかや。菊。つぼすみれ。 |
| 3 | 竜胆は、枝ざしなどもむつかしけれど、異花どものみな霜枯れたるに、いとはなやかなる色合ひにてさし出でたる、いとをかし。 | りんどうは、枝ぶりなどもうっとうしいけれど、ほかの花がみな霜で枯れてしまったころに、とても華やかな色合いで顔を出しているのは、たいへん趣がある。 |
| 4 | また、わざと取り立てて人めかすべくもあらぬさまなれど、かまつかの花らうたげなり。名ぞうたてげなる。 | また、わざわざ取り立てて一人前の扱いをするほどでもない様子だけれど、かまつかの花はかわいらしい。名前がいやな感じだ。 |
| 5 | 雁の来る花とぞ文字には書きたる。 | (漢字の)文字では「雁の来る花」と書いている。 |
| 6 | かにひの花、色は濃からねど、藤の花といとよく似て、春秋と咲くがをかしきなり。 | かにひの花は、色は濃くないけれど、藤の花ととてもよく似ていて、春と秋と(二度)咲くのがおもしろいのである。 |
| 7 | 萩、いと色深う、枝たをやかに咲きたるが、朝露に濡れてなよなよとひろごり伏したる、さ牡鹿のわきて立ち馴らすらむも、心ことなり。 | 萩は、とても色が濃く、枝がしなやかに咲いているのが、朝露にぬれてなよなよと広がって伏しているのは(よい)。牡鹿がとりわけ(萩のそばに)立ちならして寄ってくるというのも、格別だ。 |
| 8 | 八重山吹。 | 八重咲きの山吹。 |
| 9 | 夕顔は、花のかたちも朝顔に似て、言ひつづけたるに、いとをかしかりぬべき花の姿に、実のありさまこそ、いとくちをしけれ。 | 夕顔は、花の形も朝顔に似ていて、(朝顔・夕顔と)並べて言っているのに、きっととても趣があるにちがいない花の姿なのに、実のかっこうが、たいへん残念だ。 |
| 10 | などて、さはた生ひ出でけむ。ぬかづきなどいふもののやうにだにあれかし。されど、なほ夕顔といふ名ばかりはをかし。 | どうして、あんな(大きな実の)かっこうに生まれ出たのだろう。せめてほおずきなどというもののようであってくれればよいのに。けれど、やはり夕顔という名前だけは趣がある。 |
| 11 | しもつけの花。葦の花。 | しもつけの花。あしの花。 |
| 12 | これに薄を入れぬ、いみじうあやしと人言ふめり。秋の野のおしなべたるをかしさは、薄こそあれ。 | この中に薄を入れないのは、ひどくおかしいと人が言うようだ。秋の野原全体の趣は、薄こそがもっているのだ。 |
| 13 | 穂先の蘇枋にいと濃きが、朝霧に濡れてうちなびきたるは、さばかりの物やはある。 | 穂先が赤むらさき色でとても濃いのが、朝霧にぬれてなびいているのは、これほどのものがほかにあるだろうか、いやない。 |
| 14 | 秋の果てぞ、いと見どころなき。色々に乱れ咲きたりし花の、かたちもなく散りたるに、冬の末まで、頭のいと白くおほどれたるも知らず、昔思ひ出で顔に、風になびきてかひろぎ立てる、人にこそいみじう似たれ。 | (ただ)秋の終わりは、まったく見どころがない。いろいろな色に乱れ咲いていた花が、あとかたもなく散ってしまったのに、冬の終わりまで、頭がまっ白にぼさぼさになっているのも知らないで、昔を思い出しているような顔で、風になびいてゆらゆら立っているのは、人間にとてもよく似ている。 |
| 15 | よそふる心ありて、それをしもこそあはれと思ふべけれ。 | (人の身に)なぞらえる気持ちがあって、そういう姿をこそ、しみじみと心を動かされるものと思うべきなのだ。 |


