- 歌
- 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
- 意味
- (年老いて親しい友はみな亡くなってしまった今)いったい誰を、心を知り合う友としたらよいのだろうか。長生きで有名な高砂の松でさえ、昔からの友というわけではないのに。
- 作者
- 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
- 出典
- 『古今和歌集』雑上・909番
- 決まり字
- 「たれ」(2字決まり)

誰をかも 知る人にせむ 高砂の
松も昔の 友ならなくに
読みたれをかも しるひとにせん たかさごの
まつもむかしの ともならなくに
歴史的仮名遣いたれをかも しるひとにせむ たかさごの
まつもむかしの ともならなくに
年をとった私は、いったい誰を親しい友としたらよいのだろう。長生きの高砂の松でさえ、昔からの友ではないのだから——老いの孤独を詠んだ藤原興風の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 誰をかも | たれをかも | 「誰を〜だろうか」。「か」は疑問、「も」は詠嘆の係助詞です。 |
| 知る人 | しるひと | 自分のことをよく知ってくれる人、親しい友。 |
| 高砂 | たかさご | 今の兵庫県高砂市。松の名所です。 |
| 松 | まつ | 長寿の象徴。何百年も生きる松に、自分の老いを重ねています。 |
| 友ならなくに | ともならなくに | 「友ではないのに」。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 誰 | 代名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| か | 係助詞 | 疑問 |
| も | 係助詞 | 詠嘆 |
| 知る | 動詞・ラ行四段「知る」連体形 | |
| 人 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| せ | 動詞・サ変「す」未然形 | |
| む | 助動詞「む」連体形 | 推量・意志(係り結び) |
| 高砂 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 松 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| 昔 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 友 | 名詞 | |
| なら | 助動詞「なり」未然形 | 断定 |
| なく | 助動詞「ず」(ク語法) | 打消 |
| に | 接続助詞 | 逆接・詠嘆 |
表現技法・文法のポイント
「か」「も」を受けて「む」が連体形になっています。
松を、友になれるかもしれない相手として人のように見ています。
「知る人にせむ」で切れます。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』雑上に入っています。長生きした人の、友を次々に失った寂しさを詠んだ歌です。「長生きの象徴である松でさえ、昔からの友ではない」という言い方で、話し相手のいない孤独が深く伝わってきます。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
この歌は老いの寂しさを詠んでいますが、興風が何歳のときの歌なのかはわかりません。本当に年老いてから詠んだのか、それとも歌合などで「老人の気持ち」になりきって詠んだのか。想像すると、歌の重みが変わってきます。
興風は琴などの音楽にもすぐれていたと伝えられます。友を失った寂しさを、琴の音色に重ねていたのかもしれません。
作者:藤原興風
平安時代前期の歌人・役人、藤原興風(ふじわらのおきかぜ)です。身分は高くありませんでしたが、『古今和歌集』の時代の代表的な歌人の一人で、多くの歌合に参加しました。音楽にもすぐれていたと伝えられます。三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「たれ」まで読まれたら、取り札が決まります。「た」で始まる歌は6首あります。
覚え方:「たれ」と聞いたら「まつもむかしの」。誰(たれ)を待つ(まつ)、と覚えます。「た」で始まる歌は6首あるので、2字目の「れ」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 係り結び(か・も→む)
- 「なくに」の意味
- 高砂の松(長寿の象徴)
よくある質問
高砂はどこですか?
今の兵庫県高砂市です。松の名所として知られ、能の『高砂』の舞台でもあります。
なぜ松が出てくるのですか?
松は長生きの象徴だからです。年老いた自分と同じくらい長生きの松でさえ友ではない、と孤独を表しています。
「誰をかも」の「かも」は何ですか?
疑問の係助詞「か」と詠嘆の係助詞「も」です。文末の「む」が連体形で結んでいます。
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